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朝、カーテンの隙間から差し込む光が、
眠気を刺激する。
「……〇〇、まだ寝てんの?」
ドアの向こうから聞こえるのは、聞き慣れた声。
小さい頃からずっと隣の家に住んでいる、渡辺翔太。
「……翔太、うるさい」
「うるさいって。あと5分とか言って、
結局30分寝るくせに」
呆れたように笑いながら部屋に入ってくる。
制服のネクタイを片手で整えるその仕草が、
昔よりもずっと大人っぽく見えた。
「……ねぇ、いつまで起こしに来てくれるの?」
「は? 何急に」
「だって、もう高校生だし。恥ずかしいでしょ」
そう言うと、翔太は少しだけ眉を下げて笑う。
「じゃあ、今日で最後にしよっか」
っえ?
思わず顔を上げると、
彼の瞳が真っ直ぐこっちを見てた。
どこか、からかうようで、でも優しい。
「……それ、本気で言ってる?」
「どうだろ。
“最後”って言ったら、
ちょっと寂しそうな顔すると思って」
軽く笑いながら、私の頭をぽん、と撫でた。
「……バカ」
「はいはい、バカで結構」
そう言いながら私のリュックを肩にかけて、
「ほら、早く行くぞ。遅刻する」
いつもと同じ朝のはずなのに。
背中を並べて歩く距離が、なんだか少し近く感じる。
「なぁ、〇〇」
「ん?」
「起こしに来るのやめるって言ったけど……」
少し間を置いて、彼が小さく笑う。
「隣にいんの、やっぱ落ち着くわ」
風が少しだけ冷たくて。
でも胸の奥が、ほんのりあたたかくなった。