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リビングの大きなソファは、
シェアハウスの中でも一番人気の場所。
みんなでテレビを見たり、うたた寝したり、
のんびりするには最高のポジション。
だけど今日は…
「……ちょっと、ラウ。どいて」
「えー、やだ。俺、先に座ってたもん」
ソファの真ん中でくつろぐラウールが、
にやにや笑ってこっちを見る。
その余裕の顔に、ちょっとムッとする。
「私、そこで本読みたいの」
「じゃあ隣どうぞ」
「……狭いでしょ」
「いいじゃん。密着しても」
「ラウ!」
「冗談、冗談〜」
そう言いながらも全然どく気配がない。
仕方なく、ため息をついて隣に腰を下ろすと…
「ねぇ〇〇ちゃん、香水変えた?」
「え?」
「なんか、前より甘い匂いする」
突然の近距離。
気づけば、彼の顔がすぐ横にあって、
心臓がどくんと鳴った。
「……ラウ、近い」
「え、そう? 俺、ただ嗅いだだけ」
「“嗅いだだけ”って言うな!」
思わずツッコむと、彼が声を上げて笑う。
その笑顔が眩しくて、ムカつくのに、なぜか顔が熱い。
「ほんと年上ってさ、照れるとすぐ怒るよね」
「照れてないし!」
「はいはい、かわい〜」
わざとらしく頭をぽんぽんと叩かれて、
反射的にクッションを投げつけた。
でもそのクッションをキャッチしたラウールが、
にやっと笑って言う。
「じゃ、今夜はここ、俺の隣が〇〇ちゃんの席ね」
「誰が決めたのよ」
「俺」
「……生意気」
「知ってる」
ソファの背もたれに身を預けながら、
ラウールが満足げに笑う。
その横顔を見ていると、
なんだか負けた気がして悔しいのに……
不思議と、隣は居心地が悪くなかった。