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続き
アルはみるみる成長していった。成長とともに俺の胸を吸う、という行為はなくなっていった。アルは驚異的なスピードで成長し、大国【アメリカ】となっていった。そして、雨が降り頻る日、【アメリカ】は俺の庭から出ていった。引き止めようとしても引き止めることはできなかった。前まではアルの誕生した日が【アメリカ】の誕生した日になる事を認識すると何だか苦しい気分になる。アルが俺に懐いてる、とずっと思っていたが…俺の方が、アルに軽く依存していたということに気付いてしまった。
アルと再会したのは連合国の会議の時だった。『アル』と話しかけたかったが、一瞬怯んだ。もうアルは大国【アメリカ】なのだ。俺の庭から出ていった時から、もう後戻りなど出来ないのだ。「"アメリカ"今日の会議のことなんだが」アメリカが少し驚きと哀しみを含んだ表情をした。「なにか気に食わないとこでもあるのかい?"イギリス"」先にそう呼んだのは俺の方なのに心做しか寂しさを感じてしまった。会議の内容は予め決めておいたはずなのに…アメリカは自由気ままに会議を仕切っていた。アイツが仕切る会議は資料が渡されているはずなのに資料とは違った話になっていることが多い。ていうか、98%はそうなっている。会議が終わった後、会議室から出て家へ帰ろうとしていたとき後ろから声をかけられた。
「アーサー」
そう呼ぶのは1人しかいない。アル……アメリカしかいない。「何だアメリカ」「俺に用でもあるのか?」下唇をきゅ、っと噛み、アメリカはこちらを見ていた。「…何で頑なに、昔みたいに名前で呼んでくれないんだい?」「…お前は昔と違って大国になったんだ。弁えるのは当然の事だ 」昔教えてやっただろ、忘れたのかと少し愚痴を零しながらそう伝えた。「じゃあアーサーは俺を"くに"として見てるんだ」「…は?当たり前だろ、今も昔も"くに"としてみてるぞ…?お前なに当たり前なこと言ってんだ?」「俺はアーサーのことは"くに
"としては見てなかった」「……え?」俺を、国として…見てない?何を言ってるんだ…?俺はもう未熟な国になったって事か?嘘だろ……?「今も昔も──」アメリカがなにか言おうとしていたがこの先はもう聞きたくなかった。「それ以上は言うな!お前の気持ちは分かったよ…!…やっぱ世界1は考えることは違うもんなんだな」と言い残して帰ろうとした。けれどもアメリカが俺の袖を引っ張り帰そうとしなかった。「最後まで聞いてくれよ!」「ッ嫌だ…離せ、よ…!国として未熟だって言いたいんだろ!ッわか、ってるんだよ…!」「アーサー…泣いてるのかい?」「うるッせぇ…泣いてなんかねぇよバカ!」「じゃあこっち向いて欲しいんだぞ」アメリカによってぐるっ、と無理やり顔を向けさせられる。「…ほら、泣いてるじゃないか」「…泣いてなんかねぇ…よ!離ッせ…! 」「ヤダね」そう言われたあと顔をがし、っと掴まれ固定された。昔のアルとは想像もつかないほど力が強くなっていた。「何してんだよッ…早く離せッ!!」とムキになっていてもアメリカには通じなかった。でもこういうところは何だか昔のアルを思い出す。「…そういう割には抵抗していないじゃないか」「んな”ッ!んなわけねーだろ!このバカ!べ、別に…お前が大きくなっても、変わんねーな、って思って…るわけじゃ、 」「…やっぱり君は、昔の俺が好きなんだね」「そりゃそうだな、昔はもっと聞きわけがーー」良かった、と言おうとしたら唇が何かによって塞がれた。目の前にはアメリカの顔があった。俺たちは、キスをしていた。唇には互いの熱が混じりあって、とても温かった。
"…俺はずっと君のこと、『くに』なんかじゃなくて、『人』としか見てなかったよ"