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「どうしたの、その子」
「拾った」
美希は自分の机の上で顔を洗うニャオハを、少し離れて見つめていた。
「拾ったって…ボールに入れたんじゃないの?」
「ううん、まだ」
「…どうして?」
「何となく」
拾いはしたがまだボールには入れず、学校まで連れてきた雪乃。
「可愛いでしょ?」
「ニャオ」
欠伸をしながら前の席の椅子に座っていた雪乃の膝の上に乗るニャオハ。
「…すっかり懐いてるのね」
「うん。どこに行ってもついてくるよ」
ポケモンが苦手な美希は「へぇ」と興味なさそうに相槌を打つ。
「捨てられてたの?」
「分からない。でも凄く弱ってた」
膝の上のニャオハを抱きかかえていると、
「それ、草凪さんのニャオハ?」
「可愛いね」
クラスメイトの男子が寄ってきた。
「そうだけど…」
「そうなんだ。俺猫好きだからめっちゃ羨ましいわ」
「男の子?女の子?」
「女の子です…」
「何で敬語?クラスメイトなんだからタメでいいよ。そういえば草凪さんてお兄さんいるよね?」
「はい…」
「やっぱそうだ。凄いね、あの秀才の妹なんだ」
「草凪先輩だろ?すげーよな、カッコいいし」
…突然質問攻めされ気圧される雪乃。
美希は自分の席に座りそんな雪乃を可哀想な目で見る。
最近こんな事ばかりだ。
めちゃくちゃ人から話しかけられるようになった。
クラスメイトもそうだが、他のクラスの人からも。
そして2年や3年の先輩からも。
…目立っちゃいけないのに。
「そうだ草凪さん、今日の放課後カラオケ行かない?他の連中もいるんだけどさ、立花さんも一緒にどう?」
雪乃は困ったように美希を見る。
「悪いけど予定があるの。この子も」
「そうなの?じゃあ別の日でも…」
そう言いながらニャオハに手を伸ばした男子。
「シャーーッ!!!」
ニャオハは毛を逆立たせ思い切り威嚇した。
「うお!?」
「ニャオハ!」
驚いて仰反る男子と慌てて名前を呼ぶ雪乃。
「しつこい男は嫌われるわよ」
「あ、あはは、オッケオッケ、じゃあまた今度ね!」
そう言って気まずそうに男子たちは去っていった。
「…ありがとう美希、ニャオハも。でも威嚇しちゃダメだよ」
「ニャオ?」
「ああいう時はスパッと断りなさい。うだうだしてると連れてかれるわよ」
「でも、友達の誘いとか断っていいの…?」
「馬鹿ね。あれは友達とは言わないのよ」
あ、そうなんだ。難しいな。
雪乃はうーんと唸る。
「あの件以降モテモテね、あんた」
「モテモテ…?確かに凄い話しかけられるけど、何でか分からなくて…」
「そりゃ、人間隙を見せたら寄ってくるものよ」
「隙…?」
「あんな大声で自分の弱点叫んで、取り乱してる隙だらけの人間気にならないわけないでしょ。しかもクールで誰とも馴れ合わないと思われてた人間がよ。ギャップってやつよギャップ」
「ギャップ…」
とにかくギャップは人間の心に刺さるんだ、ということを力説され、学んだ。
ギャップには気をつけよう。