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角のある男の姿が見えなくなった後、 少女は一人きりになった。
それは彼女が望んだ結末。
もう誰も傷つけたくないし、 誰にも傷つけられたくない……。
そんな願いを抱いてしまった瞬間、 少女の心は砕け散ってしまったのだ。……少女が求めていたのは 一体、何だったのだろうか……? そして私は、 その答えを知っているような気がする……。……私の妄想は、 彼女のそれとは少し違う。
私の場合は、
「妄想」という言葉自体なのだ。
だから、それが失われれば 同時に全てを失うことになる。
それでも構わない。……それでいい。
それが、私が選んだ生き方なのだから。…………そういえば、あいつにも似たようなことが あったような気がするな……。
まぁいい……
私にとっては些末なことに過ぎない。
どうせ忘れてしまうくらいの些細な出来事だしな。まぁ、気になるなら探せばいい。
箱の中にあったはずのものをね。
妄想の残骸を辿れば見つかるかもしれないぜ。
それが君の求める答えなのかまでは知らないけどね。
お嬢さん、君はまだ生きているよ。
まだ間に合うはずだ。
そろそろ起きなさい。
目を覚ます前に……
もう一度だけ聞いておくが……
君は本当にそれでいいのかね? それは、いつか見た光景に似ている。
夕暮れに染まった街角で、 少女がひとり泣いているのだ。
声を押し殺しながら静かに泣く少女は、 まるで小さな迷子のようだった。
通り過ぎていった日々……
思い出せない過去……
忘れたくない想い出たち……。
記憶の断片すら残さず、 ただ泡のように溶けてゆく……。
「ああ……、そっか……」
少女の言葉が、静かに響く。
「わたしって、結局そういう存在なんだよね」
まるで他人事のような口ぶりだったが、 それは、彼女の心の声でもあった。
彼女が手を差し出すと、 白い光に包まれた小さな結晶が現れた。
それをそのまま差し出されると、 男は黙ったまま受け取った。
その瞬間、少女の姿が掻き消えるように消えた。
男が手元を見ると、そこには結晶があった。
少女が残した最後の幻想……
それが形を変えたものだろうか。
それとも、本当に少女自身が、そのからっぽの箱だったのか……?……まぁ、どうでもいいことか……。
妄想に憑かれた男は 妄執に取り憑かれていただけなのだから。……それにしても、 この男の精神力は大したものだよ。
これほどまでに強固な妄想を創り上げながら、 なおも自らを否定し続けるとはね。
これこそが、妄想という呪いの力なのか……?……あるいは、 妄想という名の救いの形……
なのかもしれんな。
哀しみを、憎しみを糧にして成長する力。
それはまさに、呪いそのものじゃないか。
それが妄想の本質だというならば、やはり私は、 それを否定せざるを得まいよ。
この妄想だけは認める訳にはいかない。
たとえどんな理由があるにせよ、人の命を奪うことなど許されはしないのだ。
この私ですら、例外ではない