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黒ヤミ悪夢

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黒ヤミ悪夢

20 - 第20話月明かり

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2022年08月10日

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食べてもいないのに味のする食べ物なんてあるだろうか? この少女は一体何を見ていたのだ? 空虚な心を埋めるため、 自ら望んで孤独になったのか? 誰も知らないところで、ひっそりと息を引き取った少女……。

誰にも知られずに逝った最期の姿が、 まるで私自身であるかのように感じられて……。

そして私は、 自らの手で彼女の魂を砕いた……。

その行為が、彼女にとって救いになると信じて……。

「ねぇ、君はどんな死に方がしたい?」

少女は少し考えて答えた。

「お腹いっぱい」

その一言だけで十分だった。

満ち足りた表情を浮かべながら、 眠りにつく彼女を見届けてから 私は、その場を離れた。

まだ夜中だったが、眠れる気がしなかった。

寝床を出て、夜の街へ出る。

夜空に浮かぶ月だけが私の味方のような気になって、思わず笑ってしまう。

私にとって、月に照らされて輝く夜の街は、楽園そのものなのだ。

どこへ行くあてもなく彷徨いながら、 ふと思い立って、路地裏にある小さなバーに入ってみた。

薄暗い店内に、 カウンター席だけがポツンとあるバー。

その奥でグラスを磨いている店主らしき人物。

この店は……

おそらく、そういう場所なんだろ? まぁ、お前さんのような客ばかりではないがね。

お得意様もいるし、常連の顔ぶれにも飽きずに済むよ。……それで、あんたが求めているのは、 どういう答えだい? 私にとって、それは……

私の願望……

つまり欲望そのものなのだと思う。

私が求めるのは、ただ一つだけ……。……ああ、それこそが私の望む全てであり、 私の存在する理由でもあるのだ。

妄想の揺らぎ……

求めていたもの……

そして、これから先への願い……。

誰かのためにではなく、 ただ自分自身のためだけに……。

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