「私、学校退学する。」
柚葉はいきなりそう言った。
「またいきなり、なんで?」
千冬はそう言って首をかしげた。
「だって、もう三ツ谷と会えないんだもん…。」
理由が乙女。
「でも、柚葉って三ツ谷くんと同い年だよね?」
俺がそう聞くと、柚葉は「うん」と小さく答えた。
「じゃあ、卒業まで一緒じゃないんすか?まだドラケンくんが見つかったって報告こっちに無いし…。」
千冬が机に頬杖をついて聞いた。
「そうじゃなくて…三ツ谷も行方不明になったの!!!」
玄…どこまでしやがる。
「本気で探す?」
俺はここに居るみんなに聞いた。
すると、マコトが「俺らはな。」と答えた。
その言葉にマコトは続ける。
「お前は今、俺らの元総長と限られた時間を過ごしてんだ。そっちの時間を優先してくれ。」
確かに、と山岸が呟いた。
「だな。タケミっち、マイキーくんのほうは頼んだぞ。」
そう言うと、アッくんは少し強気に笑って見せた。
全く…。
「当たり前だ。」
俺もそう強気に答えた。
その時。ポケットに入れていた携帯が鳴り始めた。
「ごめん、電話。」
俺はそう短く断りを入れると、急いで部屋から出た。
俺はあの部屋から少し離れた廊下で電話に出た。
すると、向こうから聞こえた声はココでもなく、マイキーでもなく、カクちゃんでもない、誰かの甲高い声だった。
『あなたのお仲間は預かりました。では、声を少しだけ聞かせましょう。』
そう言うと、声が変わる。
『おいドブ!聞こえるか!』
…まさかの春千夜。
「うん。聞こえてる。」
『いいか、今ここにはな、幹部全員が収容されてるんだ!早く助けに来やがれ!』
『はーい時間切れ。』
…案の定、情報は何もなし。
『じゃあね~。』
そう言って、電話は一方的に切られた。
しかし、焦ることなど何もない。
「…甘いな。」
そう言って、部屋へと戻った。
俺は一連の説明をすると、みんなに「手助け頼めるか?」と聞いた。
すると、みんな乗り気なようで、NOの声は聞こえなかった。
「じゃあ、パソコン室借りるから。邪魔すんなよ!?」
柚葉はそう言うと、部屋を出て行った。
「じゃあ、俺は近くの空き家とか監禁されやすい場所調べる。」
山岸がそう言うと、「俺も!」とタクヤが地図に向かった。
何気にこの二人、地理に強いのだ。
「じゃあ、俺らはいつも通り情報収集か。」
マコトはそう言うとアッくんと顔を見合って笑った。
山岸が「頼む!」と地図に向かいながら言う。
千冬が「俺らは特攻準備だな。」と俺の瞳を覗いて笑った。
「あと5分ありゃもう出動できるっしょ。」
その顔には「余裕」と書いてあった。
「じゃあ、俺は、周りの雑魚どもを片しとくな。」
千冬がそういう。
指示場の柚葉の声からカウントダウンが聞こえる。
『じゃあ、3…2…1…』
「GO。」
俺らは二人でそう合図すると、敵地内に入っていった。
さすが千冬。武器なんかに頼らずとも、十分に強い力を発揮していた。
俺も大事にはしたくないため、気絶で済ます。
俺は時々こちらに向かう敵の手下どもを吹き飛ばしながら、先へと向かった。
俺は鉄でできた重いドアを押し開ける。
そこには予想的中、全員が囚われていた。
しかし、みんな傷だらけだ。
俺はその部屋のみんなを解放すると、事の発端を聞こうとした。
しかし、蘭に遮られる。
「竜胆が!竜胆が別部屋に連れてかれて!」
蘭はひどく焦っていたし、なんだかみんなも落ち着いていない。
「…マイキーも、鶴蝶も、ココもその別部屋にいる。」
春千夜がこちらを正確に捉えて言った。
「…行くぞ。」
俺はそう言って、事前に情報入手済みの別部屋へと向かった。
~マイキーside~
足枷も、手錠もされて、何の抵抗もできない。
そんな状況下で、俺らはただ、殴られるしかなかった。
ココは当然として、竜胆はとうに気絶してるし、鶴蝶だってそう長くは持たない。
俺も血を吐いて踏ん張っているくらいだ。
そんな時に、そいつは俺の口を手で塞いで、腹を殴った。
吐ききれない血が胃にどんどん入っていく。
猛烈な吐き気に頭がくらくらした。
俺の意識も飛びそうなとき、俺の正面の扉が開いた。
「お前ら…。」
鶴蝶がそう呟く。
「誰、俺の弟に手ぇ出したやつ。」
「ボスに手ぇ出したやつは女でも殺す。」
「…。」
そして、最後にタケミっちが言う。
「…清掃開始。」
そう言うと、各々散って一方的にタコ殴りにし始めた。
その間に、千冬がみんなを解放していく。
「遅れてすいません。」
そう言って、俺の拘束具も外してくれた。
みんなはどうやら「清掃」が完了したようで、顔も服も血まみれになって白の特攻服に目立っていた(タケミっち以外。)
「兄ちゃん!」
「竜胆!」
竜胆は目が覚めたようで、兄貴にそう言って互いに抱きあった。
「立てる?」
「お前はほんとすげぇよ…。」
「言われるほどじゃないよ。」
鶴蝶とタケミっちはそう会話を交わす。
俺は春千夜に立つのを手伝ってもらい、望月にココをおぶってもらった。
斑目は暇そうにしていたが、何かタケミっちに耳打ちすると、そそくさと帰っていった。
…俺のやっとの休日は、そうして消えた。
~第二部 三天戦争 完~
マイキー殺害まで あと 19日
「休日…ですか…。」
『うん。買い物とか付き合って。』
「唐突に言われてもなぁ…。」
「…ま、いいですよ。」
~次回より 第三部 休日編 開始 ――。~