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「有夏、有夏……最後にもう1つだけ」
「んだよっ……」
「俺のこと好き? あっ……もう分かった」
幾ヶ瀬の表情が瞬時に解ける。
「今、一番……有夏のナカ、ギュッってした……」
1ミリの隙間もないくらい強く幾ヶ瀬は有夏を抱きしめた。
「……ごめんね、有夏」
「なに、が?」
幾ヶ瀬の様子が少しおかしいことに気付いて、有夏が身じろぎする。
「俺、今のでイッちゃった」
「早っ!」
内側を硬いモノで擦ってほしいと待っていた身体は、まだ熱いままだというのに。
その中で幾ヶ瀬のモノは、十分満足したかのように力を失っていった。
「うそ……早すぎる……」
有夏が腰を浮かせると、それはズルズルと滑り落ちる。
「ごめん、有夏」
「ごめんじゃねぇよ! 早ぇんだよ!」
人をあれだけ煽っておいて、だ。
「早い早い言い過ぎだって。傷つくってば」
「だって、早いから!」
「だからごめんってば。でも俺、嬉しいよ。俺のこと好きって聞いたとき、ふふっ、1番キツくなって……うふふっ」
「ウフフじゃねぇよ」
少し乙女な部分が出てきたようだ。
これはいつもの幾ヶ瀬だ。
「ごめんって言ってるでしょ。おわびに口でしてあげるから。有夏も存分にイッちゃってよ?」
「いらねぇよ」
その行為というより、言い方にムカついたのだろう。
有夏は顔をしかめる。
「口動かすなら、てめぇが作った料理を平らげろ」
「ええっ、これは有夏のために作ったんだから……」
「うるせっ! 有夏、もう寝る!」
ベッドに這い上がって布団をかぶってしまった。
取り残された幾ヶ瀬はしばらくニヤニヤしていたが、ようやく目の前の大量の料理に気付いたようだ。
「え、どうするの。こんなに沢山……」
顔を覗き込んでも有夏は堅く目を閉じてしまっている。
「有夏ぁ……」
眠っていないのは分かるが、ここは下手に刺激しない方が良さそうだと判断した幾ヶ瀬、とりあえず箸をとる。
「え、俺が食べるの? 一人で? ホントに?」
渋々といった体で、彼はひとまず炒め物を片付けた。
次の料理に行く前に箸を放り出し、腹をさする。
背後で聞こえる寝息に耳を遊ばせて、幾ヶ瀬もベッドによりかかって目を閉じた。
「有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない」完
15「記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派」につづく
↑来週更新予定です↑