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『海狼の牙』から派遣された二百名の増援を得た『暁』は、速やかに彼らの衣食住を確保して防衛計画へ組み込むべく協議を重ねていた。

また、『オータムリゾート』のリースリットから個人的に送られた莫大な資金はこれらの計画を加速させることになる。

「いや、個人的なんて額じゃねぇだろこれ」

リースリットから送られた星金貨の詰まった袋を見て、ルイスは苦笑いを浮かべる。

「名目では、娘であるレイミが世話になっているお礼だそうですよ?星金貨百枚ですね」

「いやいや、額がおかしい」

日本円で言えば百億円をポンと出してきた事になる。

「『オータムリゾート』の資金力が如何に凄いかを垣間見れましたね。しかもこれ、お義姉様の個人的なお金みたいですし」

「うちも稼いでるけど、流石のシャーリィもこれは無理だろ?」

「無理ですね。頑張って星金貨十枚でしょうか。まだまだ稼がないといけません」

「今でも充分なんじゃないのか?」

「ガズウット男爵の件もあり、貴族社会との関わりも増えるでしょう。貴族社会と言うものは、とにかくお金が掛かるんです」

ため息混じりにぼやくシャーリィ。伯爵令嬢として社交界などに参加し、積極的に貴族の付き合いを学んでいた彼女は、貴族達の間で動く莫大な資金をよく知っていた。

「マジか。まだ足りないってことか」

「そうです。更なる事業拡大を図らねば」

その日の正午、周辺を警戒していたリナが館に戻ってきた。

「動きがありましたか?リナさん」

「はい、代表。敵の|斥候《せっこう》と思わしき人物が『黄昏』周辺で相次いで目撃されています。対処について判断を仰ぐために参りました」

シェルドハーフェン西部に大規模な野営地を設営して戦力を集めている『血塗られた戦旗』であったが、ただじっとしているわけではなくリューガの指示により少数の団員による偵察活動が行われていた。

そして彼らは『ラドン平原』に広く分散して警戒に当たっているリナ達『猟兵』の警戒網に接触した形となった。

「現在の対応は?」

「気付かれないよう細心の注意を払いながら監視しています」

「ではリナさん、指示を簡潔に。敵に情報を渡してはいけません。殲滅してください」

「宜しいのですか?かえって彼らを慎重にさせてしまうかもしれません」

「それで良いのです。リューガを慎重にさせればさせるほど、彼らの総攻撃を促す結果となるのですから」

「分かりました。速やかに排除します!」

退室するリナを見送って、シャーリィは室内に残る女性に視線を向ける。

「マナミアさん、噂を追加してください。偵察に出された者達はリューガと反りが合わなかったから、始末されたのだとね」

「あらあら、主様も辛辣ね?リューガに同情してしまいそうだわ」

マナミアは自身の配下である工作員達を次々と『血塗られた戦旗』の野営地に潜り込ませ、様々な噂を流していた。

陣頭指揮を取るために、マナミア自身も『黄昏』へ戻っている。

「怖いのは、敵が兵力にものを言わせて多方面から攻撃してくることです。残念ながら、今の私達に東西南北全てをカバーする戦力はありません。攻撃正面を一ヶ所に絞らせる必要があります」

マナミアの工作員達が噂を流す傍ら、ラメル指揮下の情報部は偽情報を流していた。

すなわち、『暁』は多方面からの攻撃を警戒してただでさえ少ない戦力を更に分散配置していると。

もちろん『血塗られた戦旗』による一点集中攻撃を誘発するためである。

「敵は脆弱なのに被害が出るのは、リューガが自分にとって邪魔連中を始末させているから。疑心暗鬼になるわねぇ?」

マナミアは愉しそうに笑みを浮かべる。時間が経てば経つだけ、そして被害が増える度に不信感が増していくのだ。

「本当なら、こんな小細工をせずに正面から叩き潰したいのですが。謀略は色々と気を遣います」

ため息混じりに呟くシャーリィ。様々な手を打ってはいるが、確実に成功する保証など無い。

周りの環境を弄っているが、最終的な決定はリューガが行う以上、最悪を想定した備えも行わねばならず、心労も絶えない。

「時期が悪かったとしか言い様がないわね。三者連合、スタンピードわ更に獣人族との戦い。連戦続きなら仕方無いわ」

そんなシャーリィを励ますマナミア。三者連合の一件に関わっていた身として少なからず責任を感じているのだ。

「この戦いが終わったら、休養日を設けましょう。レイミの言う海水浴なるものを試してみたいので」

「かっ、海水浴?海で泳ぐの?正気?」

海には強力な魔物が生息しており、漁すら沿岸部のみ。海で泳ぐなど正気の沙汰ではない。

「対策を講じれば可能な筈です。これだけ頑張ったんですから、皆さんにはお金以外の労いもしないといけませんからね」

「そう……楽しみにしているわ」

決意を新たにするシャーリィを見て、マナミアも困ったような笑みを浮かべる。

その日の夕刻、四人の男からなる傭兵チームが『黄昏』近郊に接近して町と周囲に張り巡らされた陣地を観察していた。

「こりゃまるで要塞だな。見ろよ、塹壕に空堀、鉄条網まであるぞ」

「銃も山ほどあるんだろうな。あれを突破するのは厳しいぞ?」

「かといって、街道には機関銃が据えられてるみたいだな。街道以外から攻めるしかないか」

「一番手にだけは成りたくないな。頼むぜ?リーダー」

「あんなのを見て、一番乗りなんて夢見る馬鹿は居ねぇよ。ちゃんと最後尾に……」

それが彼の最後の言葉となった。突如飛来した矢がリーダーの男の左側頭部に突き刺さり、右側頭部まで貫通して彼の命を刈り取る。

「リーダー!?」

「畜生!?何処から!?」

「げっ!?」

更に飛来した矢がもう一人の眉間を貫く。残る二人は慌てて身構えるが、夕陽に照らされた周囲には豊かな草原が広がるだけでなにも見えなかった。

「畜生!何処から撃ってきやがった!?」

「落ち着け!背中合わせだ!」

二人は背中合わせとなり周囲を警戒する。だが、それこそが誤った対応であった。

鮮やかな水色の髪を持つエルフ、リナの右腕であるリサはドルマン手製の手槍を持って大きく振りかぶり、常人を凌駕する力で投擲。

放たれた槍は二人の体を文字通り貫き、串刺しとなった二人は目を見開き、自分の体を貫いた槍を見ながら絶命した。

「さっすがリサ!馬鹿力ね!」

「それ誉めてるの?ほら、次に行くわよ!」

仲間からの賛辞にジト目で返したリサは、馬に跨がり次の獲物を探すために移動を始めた。

リナ達『猟兵』には機動力を重視するため特に脚の速い馬が用意されていた。

『黄昏』に作られた専用の牧場で管理され、『大樹』な影響下にある牧草を食べたからか体力、スピード共に並みの馬を凌駕する。

そんな馬を駆る彼女達は『ラドン平原』を縦横無尽に移動し、『血塗られた戦旗』の派遣する斥候部隊と小競り合いを繰り広げることとなる。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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