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◇計算違い
大抵の男たちは最初の誘いは勿論のこと、二度目の誘いにだって自らチャンスが
あればとばかりにノリノリでホイホイ乗ってくるのが定番だ。
そこには多少の金がかかっても、ただのマッサージ料金でアロママッサージ付の
本番ありきという付加価値が付いているのだ。
物販で例えるならば、ノベルティが付いているのと同じになる。
しかも、密室でマッサージをしているだけなのだから、妻たちから風俗に
行ったとかで咎められるリスクも少ない。
密室にいるふたりが口を噤んでいれば、推測の域を出ず言い逃れが容易い。
マッサージサロンを初めてまだ日は浅いが、大体の顧客たちは鼻の下を伸ばし
有難がる。
それなのに圭子の旦那ときたら、本来柔和でやさし気な男の癖して、私からの
甘い誘いに毅然とした態度で乗ってきやしない。
だから、つい普段なら使わないようなエゲツない物言いになってしまった。
そして焦りから、半額にしてあげるから来いと情けない言葉を続けてしまった。
それにしても、そこまで私に言わせておきながら彼はあくまでも毅然とした
態度を崩さず『遠慮させてもらいます』と言い放った。
よほど圭子のことが怖いのか、もしくはそれほどまでに圭子との今の暮らしが
大切なのか。
そう自分で無意味な自問自答するも……だが、そんなこと二択を問わずとも
後者であることは明白で淳子自身分かっている。
分かっているが認めたくない気持ちが敢えて二択というものを絞り出したに
過ぎない。
余りに自分に靡こうとしない相手に焦れて、あの日のことを圭子に言ってやる
などと脅したものの、この時の淳子は、そこまでしようとは考えていなかった。
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