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その夜、俺たちは言葉少なにテレビを見ていた。
陽翔の手は、まだ俺の手を軽く包んでいる。
指先が触れているだけなのに、熱い。どきどきする。うるさいくらいに心臓が鳴っているのに、陽翔は落ち着いて見える。
「ねえ……陽翔、さっきの……本気だった?」
沈黙を破ったのは、俺だった。
陽翔は、こくんと小さく頷いた。
「……本気。ずっと、透のこと気になってた。でも、友達っていう関係が居心地よくて……壊したくなかった」
その言葉が、胸の奥にしみこんでいく。
「……俺も、だよ」
「そっか……」
ふたりして照れくさそうに笑う。
ソファの上で肩が触れ合う。呼吸が近い。距離も、想いも、もう後戻りできないところまで来てる気がした。
「……陽翔」
俺が名前を呼んだ瞬間、陽翔がそっと顔を寄せてきた。
一瞬、目が合って、少し緊張した。
「……っ、///」
俺は思わず息を飲んだ。陽翔は、額をくっつけるように近づいてくる。
「嫌なら、やめる」
「……やめないで」
ようやく言えた、その言葉に、陽翔の腕が俺の腰をそっと引き寄せた。
ふたりの呼吸が重なる。肌が触れる。
ああ、これが——“恋人”ってやつか。
***
夜遅く、陽翔が淹れてくれたカモミールティーを飲みながら、俺はふと思った。
「これから……どうなるんだろう、俺たち」
「さあ。でも、ひとつだけ言えることはある」
陽翔は笑って、俺の髪を優しく撫でる。
「透が隣にいる未来しか、俺にはもう考えられない」
***
不安はある。言葉にできない想いも、まだある。
でもそれでも、
— —この手を、離さなければいい。
このシェアハウスは、もう“ふたりの家”だ。