テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第51話 〚同じ班なのに、近づけない朝〛
――真壁恒一視点――
同じ班だ。
同じ修学旅行。
同じ集合場所。
同じ予定表。
——なのに。
(……なんでだよ)
真壁恒一は、
バスの前で立ち尽くしていた。
澪は、
確かにそこにいる。
友達に囲まれて、
少し緊張した顔で、
でもちゃんと笑っている。
(俺、同じ班だよな)
(部屋も、同じだよな)
頭では分かっている。
なのに、
足が一歩も前に出ない。
出そうとすると、
何かに押し戻される感覚があった。
——壁。
目に見えない、
でも確実にある距離。
(昨日まで、
こんなじゃなかったはずなのに)
真壁は、
無意識に澪の名前を呼びかけそうになって、
やめた。
(……やめといた方がいい)
理由は、分からない。
ただ、
空気がそう言っている。
その時、
視界の端に海翔が入った。
澪から、
少しだけ離れた場所。
でも、
澪を“囲む配置”の一部。
(……あいつ)
海翔は、
何もしていない。
澪に触れていないし、
話しかけてもいない。
なのに。
(邪魔、だ)
——そう感じてしまった。
(俺の方が、
同じ班なのに)
(俺の方が、
好きなのに)
胸の奥が、
じわっと熱くなる。
でも。
海翔と目が合った瞬間、
その熱は一気に冷えた。
(……見られてる)
睨まれているわけじゃない。
威圧されてもいない。
ただ、
“把握されている”感じ。
(近づくな、って顔だ)
真壁は、
思わず視線を逸らした。
その間に、
澪はバスの列へ進んでいく。
(……待てよ)
声を出そうとした。
でも、
喉が詰まった。
(なんで、声出ないんだよ)
周りを見ると、
クラスメイトたちが
自然に距離を取っているのが分かる。
自分だけ、
少し浮いている。
(……俺、
何か間違えたか?)
答えは出ない。
ただ、
「同じ班」という事実だけが、
逆に重くのしかかる。
(受け入れられたと思ったのに)
(一緒に行動すると思ったのに)
バスのドアが開いた。
澪が乗り込む。
その後ろに、えま、海翔。
真壁は、
最後まで動けなかった。
席に着いても、
澪は前の方。
真壁は後ろ。
——視界に入るのに、
届かない。
(……近づけない)
それを、
誰のせいにもできない。
初めて。
真壁恒一は、
はっきりと感じていた。
——同じ班なのに、
自分は“外側”にいる。
その事実が、
胸の奥で
じわじわと、
形を持ち始めていた。