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隆也と協力体制を結んでから時は過ぎ、予定していた不倫旅行の前日となった。
「お帰りなさい」
帰ってきた夫を出迎えた。一生帰ってこなくていいのに、と思いながらもにこやかな笑顔を見せる美晴。そんな妻の顔を見て、開口一発幹雄は言った。
「明日から出張になったから、荷物の用意をしてくれ」
おもしろいくらいにアプリの言う通りになった。全て筋書き通りだ。計画通りとも知らずに…。笑いそうになってしまうのを堪えるのが大変だ。
「はい。いつも大変ですね。用意は任せてください」
かいがいしく夫の世話を焼く妻を演じ、フル充電をした小型の盗聴器を仕込んだ。本当なら旅行日当日にこっそり仕込みたいのだが、うまくできない可能性もあるので準備の最中に荷物の底へと仕込んだ。最悪、一日目の夜の音声を入手できればそれでいい。恐らく二人は性行為に及ぶだろう。変態プレイも聞かせてくれたら最高だ。その時の音声を入手したい。
あとは先回りして旅館に二人で入っていくシーン、食事をしたり部屋に入っていく姿を撮影もできればやりたい。
美晴も準備を行った。尾行は初めての経験だから、うまくやらなきゃと高鳴る胸を押さえた。
翌日。
「幹雄さん、行ってらっしゃい。気を付けて」
「ああ。明日の帰りは遅くなるけど、美晴の手料理が食べたいな」
「もちろんです。美味しいものを用意して待っていますね。いつも私のためにお仕事をがんばって下さって、本当にありがとうございます」
丁寧に美晴は夫を送り出した。旅行を言い出した当日の出張だったからか、いつもより甘い言葉を述べて夫はこずえの下へ出かけて行った。
美晴自身も変装し、用意していたリュックを背負って出発する。
(喜んでいられるのも今のうちだから!)
時刻を確認し、彼らが乗るつもりの列車に美晴も乗り込んだ。
果たして、うまく証拠を押さえることができるのだろうか――