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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第120話 〚言わない、という異変〛
― 海翔視点 ―
澪は、
何も言わなかった。
それが、
一番おかしい。
授業中。
姿勢はいつも通り。
ノートも取ってる。
でも、
指が止まる瞬間が
増えた。
視線が、
少しだけ遅れる。
(……今)
俺は、
何も聞かない。
聞かないのも、
守りだ。
昼休み。
澪は
誰かと話している。
笑っている。
でも。
笑い終わったあと、
ほんの一瞬。
息を、
深く吸う。
(胸か)
確信はない。
でも、
勘が鳴る。
――前にも、
同じことがあった。
“何も起きていないのに、
起きる前の顔をする時。”
俺は、
距離を測る。
近づきすぎない。
離れすぎない。
澪が、
気づかない位置。
それでも、
視界には入る位置。
廊下。
すれ違いざま。
一瞬、
目が合った。
澪は、
何も言わない。
俺も、
何も言わない。
でも――
それで分かる。
(……来るな)
何が、
とは言えない。
ただ、
配置を確認する。
視線。
人の流れ。
問題は、
起きていない。
でも、
起きる前だ。
澪は、
何も言わない。
だから俺は、
動く。
静かに。
誰にも、
分からないように。
言わない異変に
気づいた時点で、
もう偶然じゃない。
それだけは、
はっきりしていた。
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