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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第121話 〚一歩、早い〛
― 担任視点 ―
気づいたのは、
配置だった。
偶然にしては、
整いすぎている。
廊下。
教室。
移動の流れ。
澪の周囲に、
“隙”がない。
指示は、
出していない。
なのに――
人が、動いている。
(……海翔)
彼は、
前に出ない。
注意もしない。
声も、荒げない。
ただ、
先に立っている。
何かが起きる前に。
澪が、
何も言っていないのも
分かっている。
それでも、
彼は動く。
理由を聞かず。
確認を待たず。
(先読み、か)
危うい。
同時に、
的確だ。
私は、
声をかけない。
止めもしない。
教師としては、
一歩引く判断だ。
だが――
今は、それでいい。
澪は、
表情を崩していない。
教室の空気も、
乱れていない。
それが、
答えだ。
(……もう始まっている)
教師の管理より、
早い防衛。
生徒同士の、
無言の連携。
私は、
視線だけで確認する。
海翔は、
こちらを見ない。
それでいい。
彼は、
もう“動いている”。
私は、
それを止めないと
決めた。
――今は。
まだ、
境界線の内側だから。