テラーノベル
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その日、リハーサルが少し早く終わって、
スタッフの誰かが言った。
「久しぶりに、みんなでご飯行きません?」
断る理由も、
流れを止める空気もなくて、
話はそのまま決まった。
レストラン。
明るくて、
人の声が多い場所。
涼ちゃんは
一番端の席に座った。
メニューを開くけど、
文字はあまり頭に入らない。
元貴と若井は
普段通りに話している。
最近の曲のこと。
次の予定。
どうでもいい冗談。
涼ちゃんは
相槌だけを落とす。
「うん」
「そうだね」
料理が来る。
湯気。
いい匂い。
箸を持って、
一口。
味は、
やっぱりよく分からない。
若井がちらっと見る。
「……ちゃんと食べてる?」
涼ちゃんは
目を上げずに言う。
「食べてるよ」
事実だった。
量は少ないけど、
食べてはいる。
元貴は
それ以上言わない。
言えば、
空気が変わるのを
分かっているから。
笑い声が上がる。
他のテーブルから。
その音が、
少し遠く感じる。
(ここにいるのに)
(ちゃんと座ってるのに)
涼ちゃんは
不意に思う。
自分だけ、
ガラスの向こう側みたいだ、と。
料理を食べ終わっても、
話は続く。
誰も、
涼ちゃんを無視していない。
でも、
踏み込んでもいない。
それが一番、
楽だった。
店を出る時、
若井が言う。
「今日はありがと」
涼ちゃんは
少し間を置いて、
「うん」
そう返す。
夜風が、
少し冷たい。
涼ちゃんは
マスクの奥で
静かに息を吐いた。
闇は、
まだ表に出ない。
ただ、
人の中で一人になる感覚だけが
また、ひとつ増えただけだった。
コメント
4件
え、すきおぬし天才??
一気見させて頂きました! 闇系好きなのですごくすぐ見ちゃいます😻😻 続きも待ってます!! もっとみんなこのお話し見て欲しい🥹🥹