テラーノベル
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元貴は、気づいていなかったわけじゃない。
涼ちゃんが
少しずつ閉じていっていることも、
前と同じ場所に
立っていないことも。
分かっていた。
でも――
理由だけが、分からなかった。
誰かに何か言われた形跡はない。
トラブルもない。
喧嘩をしたわけでもない。
なのに、
涼ちゃんは
勝手に距離を取っていく。
元貴は
それが、
たまらなく苛立った。
(俺、
何かしたか?)
(してないよな)
声を荒げたこともない。
突き放した覚えもない。
むしろ、
気にかけていたつもりだった。
食事も、
体調も、
無理してないかも。
それでも――
涼ちゃんは
何も言わずに
内側へ沈んでいく。
その様子を
横で見ているしかないのが、
一番きつかった。
スタジオで、
鍵盤に向かう涼ちゃんの背中。
話しかけても、
返ってくるのは
短い言葉だけ。
「大丈夫」
「平気」
「普通」
その全部が、
元貴には
拒絶に見えた。
(助けろって
言ってくれよ)
(閉じる前に、
手伸ばせよ)
心配と、
無力感と、
苛立ちが
ぐちゃぐちゃに混ざる。
若井が
黙って見守っているのも、
少しだけ
腹立たしかった。
でも、
一番腹が立つのは
自分自身だった。
強く聞けば
壊しそうで。
優しくすれば
届かなくて。
何を選んでも、
正解が見えない。
元貴は
拳を握りしめる。
「……くそ」
小さく吐き捨てる。
涼ちゃんは
何もしていない。
ただ、
勝手に閉じていく。
それを
止められない自分が、
元貴には
どうしようもなく
許せなかった。
コメント
2件
続き待ってます!
涼ちゃん…😭もとぱも無理しないで欲しいな…