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鈴木(すすき)
新学期の朝。元貴と若井は、同じ制服に袖を通して並んで歩いていた。
「まさか高校も一緒とはな」
「中学からずっとだな、俺たち」
教室に入ると、まだざわつきの残る空気の中、二人は自然と並んで席に着いた。
他愛もない話をしていたはずなのに、元貴の視線はふと、窓際へ吸い寄せられる。
そこにいたのは、一人で静かに座る男子だった。
光の差し込む窓辺で、少し長めの髪が揺れている。
伏し目がちの横顔は妙に整っていて、教室の喧騒から切り離されたみたいだった。
(……どこかで見たような)
元貴は眉を寄せ、記憶を探る。
――テアトルアカデミー。
――藤澤涼架。
「……あ」
思わず声が漏れる。
「何見てるの?」
若井が気づいて、元貴の視線を追った。
「あの人?」
「たぶん……藤澤、、涼架、だった気がする」
若井は少し驚いたように目を細める。
「あの人、確か大学一年になる予定じゃなかった?」
「だよな。だから、なんでここに……」
「まさか留年?」
若井は冗談めかして言ったが、元貴は曖昧に首を振った。
「さあ……」
その瞬間、担任が入ってきて、会話は途切れた。
自己紹介が始まり、名前が順に呼ばれていく。
そして、窓際の席。
「藤澤涼架」
静かな声で返事をして、彼は立ち上がった。
「よろしくお願いします〜!好きな動物はセキセイインコです。同じ人いたら話しかけてください〜」
礼儀正しく俺らより年上なのがわかる。
教室の空気が、一瞬だけ揺れた。
(やっぱり……雰囲気、違うな)
元貴はそう思いながら、藤澤から目を離せなかった。
休み時間。
藤澤は誰とも話さず、机に伏せるわけでもなく、ただ窓の外を見ていた。
「なあ元貴」
若井が小声で言う。
「関わらない方がいいタイプかもな」
「……でもさ」
元貴は、無意識に立ち上がっていた。
「ちょっと、話しかけてくる」
若井が驚いた顔で振り向く。
「おい、珍し……」
その言葉を背に、元貴は藤澤の席へ向かった。
「藤澤先輩、ですよね?」
藤澤はゆっくり顔を上げる。
近くで見ると、思っていた以上に目が澄んでいた。
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