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――いつのまにか。
アパート前から近くのパーキングに移動していた雅人の車に乗って、移動した先はホテルのモーニング。
いつだったか。美容室で読んでいた雑誌で見かけた『泊まらなくても食べたいホテルのモーニング特集』で、見たことのあるメニューたち。
まさかこんな贅沢をする日がくるなんて、その時には思いもしなかった。
さまざまな感情が交差する優奈の目に映るのは、アンニュイな雰囲気を漂わせてホットコーヒーを口にする雅人。
当たり前のように、女性からの熱い視線を受け、それを慣れた様子で見て見ぬ振りをする、初恋の人。
別れ際『週明けに社長と話すから、長引きそうなら連絡します』と優奈が伝えると、素直に頷き『また連絡する』と笑った。
そして、少し急いだ様子で優奈の前を去っていったのだが……。
言いくるめられた形の優奈。
『じゃあ、どうやって、どこまで私のこと勝手に調べたんですか?』
そうだ、勝手な身辺調査。
対抗する術が残っていた事を今更ながらに思い出したが、もうそれこそ、本当に今更で。
やはりこの世に神様なんていないのだと想う。
せっかく鳴りを潜めていたものが、確実に色を取り戻し始めているのだから。
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