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神楽 …あれは、“負け”だったのか?
神楽周助は、自分にそう問いかけていた。
紅と蒼、あの双剣は確かに呀狼の腕を斬った。
だがあの男はすぐに時を巻き戻し、何事もなかったかのように立っていた。
神楽 …俺は殺されなかった…“見逃された”のか…
あのときの呀狼の眼差しを、彼は忘れられなかった。
何かを計算し何かを試し何かを期待している目
それは戦いの場で見るにはあまりに冷静すぎた。
少女 …でも、確かにあなたは“時間を斬った”それだけは確かだよ!
神楽 けどあいつは、それすら“巻き戻した”やっぱあいつ…神じゃねぇか?
少女は違うよと言わんばかりに首を振る。
少女 違う。呀狼は“神兵に選ばれし者”だった…でも“神”ではない。
この世界には呀狼ですら恐れる存在がいるの
“それら”が動けば、本当に世界は崩壊する。
神楽 …お前、何か知ってるな?
少女は何も答えなかった。ただ、目を伏せたまま、静かに沈黙の時間が過ぎて行くだけだった
神楽 まぁ、言いたくないなら言わなくてもいい。今日は力を使いすぎたようだ。剣もそう言ってる。と言うわけで寝ますおやすみー
少女 えっ、ちょ、ちょっと待ってって!
神楽 ⊂( ⊂_ω_)<ぐー
少女 そこ…私のベッド…
次の日
神楽 この剣が“折れる”かもしれない…
神楽周助は、初めてそう思った。
大地が疼いていた。
空間そのものが重力に引き裂かれている。
足元の岩は粉砕され、木々は真横に潰れ、空気が圧し掛かる。
その中心に立っていたのは、一人の男。
巨大な黒の鎧を纏い、目元まで鉄製のマスクで覆われている。
右手に持つのは、漆黒の大剣。
左腕には、質量を帯びた盾のような巨大鉄塊。
鋼牙 …俺は“秩序”を斬る。 戦場において最も重い存在、それが第8柱黒鉄獄刃の契約者“鋼牙”だ
神楽周助は紅蒼神剣を交差させた。
彼の隣には いつものように少女が控えていた。
少女 …この人は本物よ。真正面からあなたを“折りに来る”
神楽 構わねぇこっちも“折れない”ために斬るだけだ
両者、構えた瞬間、空気が一変した。
地面がひび割れる。
しかしそれは、衝撃波ではなかった。
重力が“引きちぎった”地形だった。
鋼牙 …貴様の剣“紅蒼”とやら強いのは知っている。 だが強さに“重さ”がなければ、全ては無駄だ。
次の瞬間、鋼牙は一歩を踏み出した。
その一歩で周囲10メートルの大地が崩れた。
神楽 っ、重力…!?
少女 ダメ、動けない…! 空間そのものが歪められてる…!
鋼牙の神兵《黒鉄獄刃(こくてつごくじん)》は、“空間重圧干渉型”の神兵。
目に見えぬ“重力刃”が存在を押し潰し、移動すら許さない。
鋼牙 剣を抜かせる価値もない。“踏み潰す”
鋼牙の右腕が振るわれる。
漆黒の剣が、空気ごと“削り取る”
神楽 くそっ…!!
その斬撃が届く寸前――
紅の剣が、灼熱の業火を噴き出した。
蒼の剣が、重力を凍結させるような冷気を帯びる。
神楽 “赫蒼式・緋氷断”!!
両剣が交差し、赤と青の波が鋼牙の剣を受け止める。
衝突の瞬間、地面ごと爆発した。
だが、
鋼牙 ふむ、耐えたか。だが、折れているぞ
紅蒼神剣の紅の刃先に小さなヒビが…!
神楽 …マジかよ
少女 周助、引いて! このままじゃ剣が…!
鋼牙は止まらない。
彼は言葉もなく、再び踏み込んできた。
“この男は、問答をしない”
彼の戦いは、“正義でも信念でもなく”ただ“任務”だ。
鋼牙 …神兵の数が揃いすぎた。“均衡”を保つために、貴様をここで潰す
神楽 均衡だぁ? そんなもん知るかよ!
周助は叫び裂けかけた紅蒼を再び交差させた。
神楽 俺は、こいつらと生きてるんだよ!!
その瞬間、紅と蒼が共鳴する音が響いた。
かつてない“明確な意思”が剣から伝わる。
少女 …紅蒼が“怒ってる”…
赫と蒼が融合する。
その中に生まれたのは、新たな剣閃。
神楽 赫蒼絶式・紅蒼鳴牙《こうそうめいが》ーー!
剣閃が地を裂き、空を震わせ、
鋼牙の重力空間ごと引き裂いた。
衝突のあと、静寂が訪れた。
煙の向こう、鋼牙は左腕の盾を失い、右の剣が砕けていた。
鋼牙 …認めよう。今の一撃、“折れていなかった”
神楽 …折れるわけねぇだろ
鋼牙は倒れそうになるが、
鋼牙 だが、俺の任務は“終わっていない”。
次に会う時、貴様の剣が“重さ”を得ているか、見極めよう
彼はそのまま、音もなく闇に溶けた。
神楽 …なぁ。あいつ、何者だ?
少女 分かんない…ただ…“こっち側の人間”じゃない気がする…
紅と蒼が、再び静かに寄り添うように鞘へ戻った。
だが、その中に宿る力は、今までとまったく違っていた。
紅蒼神剣は“次の段階”へと歩み始めた。
神楽 そう言えばお前の名前を聞いてなかったな教えてくれないか?
少女 遅すぎるよ…私の名前は夜乃メイって言うの。