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海雄冒険譚

2 - 相田と心光

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2024年08月14日

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次の日の部活は今度のコンクールに向けた調整の日で楽器のを吹くのは禁止でずっと譜面とにらめっこするだけだった。

正直めんどくさい、わざわざ家で出来ることをただでさえ短い部活の時間を使ってやる意味が分からない。

一度このことをさらっと顧問の先生に言ったことがあるが、昔先生の教え子に調整をしなくて口を壊した生徒がいたらしい、その話を聞いた時椿季の顔が一瞬浮かんだせいで先生の話に納得してしまった。

あの時「そんなやつうちの部活にはいません」とキッパリ言えていたなら今は楽器を吹けていたかもしれないのに。

そう思うと自然とため息が出た。

「大丈夫心光ここみつ?」

ため息に反応したのか、隣で黙々と譜読みをしていた相田さんが話しかけてきた。

「うん大丈夫、ただめんどくさいだけ」

「まぁ吹きたいよね…ワタシリードの厳選でもしようかな、楽譜見飽きたし。」

「あーぼくもリード作ろうかな」

「作る?心光リード作れるの?」

「うん」

「すごいね、作るとこ見ててもいい?」

「別にいいけどあと削るだけだよ?」

「それでもいいから」

「分かったよ…」

そんなこんなでぼくのリード作り兼雑談会がはじまった。


教室に葦を削る音と、相田さんの鼻歌が響く、ぼくたちは特に喋ることも無く黙々とリードを作っていた。

別に話しかけてもいいのに。

そう思うがおしゃべりな相田さんなりに気を使っているのだろう、でも少し空気が寂しいいつものように陽気に話したい。

思い切りがいい所がぼくの唯一と言っていい程の長所だけれど、どうも今は思い切りが出なかった。

行動を思い計っていた時、ピタリと相田さんの鼻歌が止まり厳選したであろうリードを咥えた、話しかけるなら今しかないと思った、今話しかけないときっと部活時間の残り二時間気まずい空間になるだろう。

それは嫌だ!

「相田さん!」

相田さんのリードからピュッと音がする、驚かせてしまったのは後で謝ろう。

「どうした心光?」

「あっ、えーと」

どうしよう、ぼくには輝斗や椿季みたいな会話術はない。こういう時何を話せば…

ぼくが慌てていると相田さんは鈴を転がすよう…否いたずらっ子のように笑った。

「ねぇ心光、ゲームしようよ」

「へ?」

意味が分からなかった、正直これが本当に相田さんのいたずらなのではないかと疑った。

「ゲーム?」

「そう、今からワタシが心光に八つ質問するから全部当たってたらワタシの勝ち、一つでも外したら心光の勝ちね?」

「いいけどそのルールだとぼくが大分有利じゃない?」

なぜ相田さんはこんな不利な勝負をもちかけてきたのだろうか、もしかして負けた方が好都合なことでもあるのだろうか。

「そんなことないよ、ワタシ昔から観察力と勘だけはいいの、ちなみに負けた方は勝った方の言う事一つなんでも聞くね?

どうする、やる?」

挑発的な表情と口調、正直ぼくに断る理由はない、このゲームをする限り気まずい空間は流れないし、あんなこと言っても結局はぼくの方が有利だとは思う。

だったら断る理由なんてないよな。

「やる」

「りょーかい、じゃあ一つ目ね」

ゴクッと喉がなる、さすがに一つ目は当たる可能性は高いけど八つも当てられるわけないよな?

「心光は気まずくなって話しかけたはいいけど話す会話がなく焦りに焦りまくった。」

図星を突かれてリードを削る手が止まった。

「うぅ、正解だよ」

「やった」

まだ一問目なのになんだか相田さんの観察力と勘は本物な気がしてきた。

「二つ目、今心光には悩みがある」

「…正解だけど、悩みなんて誰にでもあるんじゃない?お腹減ったとか、楽器吹きたいとか 」

「うーん、そういうのじゃないんだけどな」

危ない、これ以上ヒントを与えて堪るまるか。

今動揺でもしてみろ、一瞬で輝斗のことで悩んでるってバレるぞ。

「じゃあ三つ目、それは友人関係のこと 」

「はい…」

これもしかしなくてもバレてないか?

「友人とは月山くんのことだ」

「はい」

やっぱりバレてたか、でも相田さんはいつの間に気がついたんだ?

そんな疑問を浮かべても相田さんはバンバン質問を続けてきた。

「それは月山くんの家族のこと」

「はい」

「それは杉ノ木くんと紀村くんも関係している」

「はい」

もはや昨日と今日の朝の会話に相田さんもいたのではないかと思えるほど当たっている。

「七つ目、心光はそれを解決したい」

さっき図星を突かた時より大きな衝撃がぼくの体内を駆け、返事にラグができた。

「…はい」

「やった、あと一個でワタシの勝ちだね。勝ったらそのリードでももらおうかな?」

「えっこれ?ぼくに合わせて削ってるから結構厚いと思うけど。」

「それは心光に調整してもらうから大丈夫。」

何が大丈夫なのか分からない、そもそも調整するのにぼくも何度か咥えているんだけど…

「ふふん、じゃあこのまま最後の質問をするのも味気ないから少し話でもしようか。」

これ以上半殺しにされるのかと少し憂鬱だった、でも圧倒的不利なこの状況下でぼくに拒否権などない。

「そんな長い話じゃないよ、ただワタシの身の上話に付き合って欲しいだけ。」

そういう彼女は小さく息を吐き目を伏せた。


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