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私の『犬』

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私の『犬』

2 - 第2話

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2023年10月30日

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着いたものの、入ろうか強く迷った。

占いなんて信じたりしねェし、行くだけ無駄だろ。そう思ったからだ。

「ねぇねぇ、中也。まさか君、入らない心算?」

「違ェし、手前こそ、入らねェのかよ。」

ニタニタと笑いながら挑発をする太宰に、つい、カッとなってムキになってしまった。

すると、ムキになっている俺を見て、余計に笑われてしまった。恐らく、想定道理すぎて、面白かったんだろう。

「はぁ、私は勿論入るよ。」

「はァ?手前もしかして、占いを信じる奴だったのか。」

呆れた。神のことは信じねェ癖に、占いは信じるのかよ。つくづく変な奴。

「まぁね。信じはしないけど、占いなんて面白そうじゃないか。なんてったって、私の心中相手がわかるらしいじゃないか。」

『心中相手』すなわち、こいつにとって『運命の人』のことだろう。はぁ。とため息を1回つき、

「其れについては、まぁ、俺も気にはなるが。」

そう言った。

「じゃあ、決まりだね。さぁ行くよ!中也!」

珍しく、威勢がいいじゃねェか。何処か可笑しい気がしたが、気にせず太宰の後を着いて行った。



占い屋の中は、至って普通だった。

薄暗く、狭く、小さなテーブルに大きな水晶玉が置いてある。紫色の照明は水晶玉だけを照らしているようだった。

「嗚呼、いらっしゃい。」

テーブルの向かいに座った、真っ黒なフードを被った小柄な女が喋った。

「嗚呼、こんにちは。」

太宰が、手をヒラヒラさせながら声を掛けた。

「おふたり様ですね。畏まりました。」

椅子におかけください。と、言う女の顔は、口元しか見えていないものの、にったりと笑っているように見えた。

背中に寒気を感じながら、椅子に腰かけると占いが始まった。

「そちらの素敵な帽子をお被りになられた貴方様は、仕事柄で悩まれていますね。」

「な、何で分かった。」

「この水晶玉が導いてくれるおかげです。嗚呼。貴方様は恋愛についても長く悩まされているようですね。」

ギクリとした。それと、右側からの視線が痛く刺さる。

「中也って、好きな人でもいたの?」

居たよ。まぁ、身長のせいで振られたがな。

思い出したくもない話を思い出してしまい、眉間にシワが寄った。

「居たんだぁ〜。まぁ、結局は身長ないから振られちゃったんじゃない?ねぇ、そうでしょ?」

「…黙れ。其れはもう過去の話だ。」

内心、ギスギスしたまま、占いは続いた。

「恋愛運…貴方様、すぐにみたされます」

「本当か!?」

こんな俺だが、恋人がやっとできると思えば、占いってのも悪くねェもンだな。

ところで、クソ鯖野郎は何故黙っている。

いつもなら『ちぇっ。中也に彼女とか面白くないの〜。』などと俺を茶化すのに。

「…中也は、私の犬なのに。」

ふと右側からポソッと聞こえた。

「は?どうしたンだよ。」

「いや?別に。」

くるりと首を背け、ムスッとしているのが後ろ姿だけでもわかった。

すると、占い屋がこんなことを言い始めた。

「貴方様の運命の人は、『近く、不思議な趣味を持つ方』だそうです。しかも、結ばれるのは今週中。」

今週中。今日は土曜日。

つまり今日を含め、あと2日で俺に恋人ができてしまう。

少し、そんなに都合よくなるものかと疑ったが、取り敢えず、喜んでおくことにした。

「ハハッ。手前よりも、俺の方が早く相手が見つかりそうだぜ。」

…ん?一寸待てよ。

『近く、不思議な趣味を持つ方』だと?どんな趣味だよ。

まぁ、そんな奴すぐに会えばわかるか。

そんなことを考えていると、占い師がこう言った。

「あの、そちらの包帯の方も近日中、いや今週中に、運命の人が現れるそうです。」

「え!?本当!?」

途端にぱあっと太宰の表情が明るくなり、此方を見た瞬間、また表情が暗くなった。

「ふぅん。まぁ、私ほどの美青年となれば、心中相手なんてすぐに現れるよね〜。」

「手前、念願の心中相手が見つかるってのに何が不満なンだ?」

太宰はそのままの表情で此方を見た。

「いっその事、中也だったら良いのに。」

「は?」

今までお互いに、嫌いあって、殺し合いばかりしていたってのに?

「馬鹿言え。ンなこと微塵も思ってねェ癖によ。」

どうせまた、太宰の悪戯に決まってる。

「まぁ、中也の好きにすればいいさ。」

ふふ、と微笑みながらそっぽを向いた太宰の笑顔には、暗い何かがいるような表情だった。

その時の占い師の顔は、そんな太宰と真逆で慌てふためき、頬を赤らめていたのだった。



それからの占いは、殆ど覚えていない。

あの時の太宰の言葉と、表情が何を言いたかったのかが全く分からなかったからだ。

そればかり考えていて、何も頭に入らなかったのだ。

「本日は、ありがとうございました。」

占い師が嬉しそうに、楽しそうに言った。

嗚呼。占いが終わったんだ。

少し胸にざわめきを残しながら、取り敢えずお礼を言い、占い屋を出た。

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