紅釈や東尾、俊の心の鍵を開け、残りは
2人の鍵開けとなるはずだった。
しかしあれから進捗はないまま1ヶ月が経つ。
そして鍵開け所か昴の高圧的な態度に
折西はいつの間にかベッドから
起き上がれなくなっていた。
かと言って寝れている訳ではなく、
ただボーッと天井を眺めることしか
出来なかった。
その事を組長に電話越しで伝えると
昴に休むことを伝えてくれるとの事だった。
それ自体はいいのだ。
ただ病院の代わりとして昴が処置をする
流れが影國会には存在するのが問題だ。
折西は昴に治療される前に
治そうと重たい体を引きづる。
そしてネットで見つけた影街の医者の元へと
向かったのだった…
・・・
折西は中華店の隣にある古い診療所の中に入る。
この診療所は当日予約可能らしい。
折西は名前と問診票を記入して待合室で
待っていた。
1時間経った頃、名前を呼ばれた折西は
診察室に入ると背が高く長髪の綺麗な
先生がいた。
寝付けない、ベッドから動くのがキツい、
ミスが余計多くなった等を伝える。
「うつ病ですね。今まで辛かったでしょう?
ここまで来るの大変だったでしょうに…」
その言葉に折西はポロポロと涙が溢れ出た。
言葉に安心したのかもしれない。
「もう大丈夫ですからね、自分をもっと
褒めてあげてください!本日は抗うつ薬と
睡眠薬の方をお渡ししますので、ゆっくり
休まれてくださいね。」
医者との診察を終えた折西は
待合室で待機後、受付で処方箋を受け取り、
薬局へと行き、薬を受け取った。
「…それにしても、保険証無くても
こんなに良心的な金額なんですね…!」
影街だからもう少し値段が張ると思い
多めにお金を下ろしてきたが保険証を
使ってた頃よりも少ない金額で済んだのは
折西にとって救いだった。
折西は影國会へと戻り、処方された薬を
水と一緒に飲むとベッドに横になった。
・・・
翌日、折西は身体を起こす。
すると途端に動悸がし、自分の枕を
見てみると冷や汗で全面が濡れていた。
「…これは」
折西は途端に呼吸の仕方がわからなくなる。
吸うって何だ、吐くってなんだ?
嘔吐なのか?嘔吐ってなんだ?
…折西ってなんだ???
体を構成しているのは水とタンパク質で
合っている?
…生きているってなんだ?
思考を巡らせていると四角の空間に
人がやってくる。誰だ?赤い目をしている。
赤は何やら水とタンパク質に話しかける。
その声は、部屋を反響しているはずなのに、
どんどん小さくなっていく…
・・・
「…にし…」
暫くすると声が聞こえてくるようになった。
…この声は、紅釈さん…
折西がゆっくりと目を開けると
強く揺さぶる紅釈の姿があった。
目を開けたことに気がつくと紅釈は
泣きながら抱きついてきた。
「折西〜!!!!!!!!マジで死ぬかと
思ったじゃねぇか!!!!!!!」
「す、すみません…!」
「急に折西が青ざめてパニックになった
もんだから…俺のやり方合ってて良かった…」
「やり方?」
「ああ、本当はこういう時昴を呼ぶべき
なんだろうけどさ。そこに散らばってる
薬を見てちょっと察してな。」
紅釈は洗面台を指さす。
折西が中を覗くと血の気が引いた。
「…僕、こんなに飲んでたんですか…!?」
薬は全て使い切っており、
薬の空シートだけが洗い場に乱雑に
置かれていた。
「途中で暴走したんだろ。
昔働いてた所でこういう事多くてさ。
よくそこの従業員の喉に手ぇ突っ込んで
薬吐かせてたよ。」
「…すみません。」
俯く折西の肩をバシバシと叩く。
「バーカ、言っただろ?昔よくあったって。
対応には慣れてんだよ!」
紅釈は折西の背中を暫く見つめた後、
折西の背中をさすった。
「とりあえずそこに寝とけ!!!
俺が飯作ってやるから!」
そう言って台所のまな板を取りだした瞬間、
紅釈の動きはピタリと止まった。
「…紅釈さん?」
「お、折西…悪ぃ…
そういえば俺…料理出来ねぇ…!!
い、インスタントとかあるか!?」
半泣きの紅釈は折西に縋り付く。
「はわッ!!!!!!え、えっと!!
向こうの引き出しに!!!」
折西が洗面台の引き出しを指さすと
紅釈は急いで引き出しを開け、中にある
インスタントのうどんを取り出すのだった…
・・・
あれから紅釈は折西の身の回りの世話を
してくれた。
溜まっていたお皿洗いや散らかった
部屋の掃除もしてくれた。
…掃除してる時に壁に数箇所穴が
空けていたが。
それでも折西は紅釈の不器用な優しさに
安心感を覚え、その日はよく眠れた。
翌日、折西は起き上がって枕を見る。
汗はそこまでかいていないようだ。
起き上がり、洗面台を見ると
なんかケンコーに良さそうだし
味噌汁やるよ!
…という置き手紙の隣にインスタントの
味噌汁が置いてあった。
ポットにお湯も沸かしてあるようだ。
折西は茶碗に味噌汁の素を入れ、
お湯を注ぎ込む。
ゆっくりと味噌汁を口に含むと
味噌と茄子の味がじんわりと染み渡った。
茶碗を机に置く。
すると突然、怒号と共に
茶碗がカタカタと揺れ始めた。
「…何があったんでしょう?」
折西は部屋を出て声のする方へと向かった。
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