「銀ちゃ~ん」
「……銀に何をするお心算で?」
何にもしないよお、と上機嫌で近付いてくるのは、現私の上司の太宰さんだ。初めて会った日から三年が経ったので、身長が伸び、顔立ちも少し大人っぽくなっている。
そしてこの男、折角の久しぶりの兄妹水入らずの時間に、かなりの高確率で声を掛けてくる男である。流石に確信犯だろこの人。
何でも、銀ちゃんの事が気に入ったようで、隙あらば口説いてくるので兄としては複雑な心境である。彼氏はまだ早いんじゃないかなー!!!!!!ねえ銀ちゃん????
しかも太宰さんだし。いやね、かっこいいとは思うんだよ????思うんだけどさ………。すぐ口説くし…仕事もサボるし…自他共に認める人間失格っぷりだからさ………??ちょーっと心配だなあって思うわけですよ……。やるときはやる人だけどね?
「銀ちゃん、私とお茶しない?」
「いえ、あの………」
「銀には先客がいるので。失礼します」
ペコリと頭を下げる。毎度このようなやりとりをしているので、もはや恒例となってしまった。私も毎回断っているので、これだけ断っても尚デートに誘い続ける太宰さんの精神のタフさには逆に感心してくるほどだ。
「え~………。じゃあ、君でも善いからさあ~!!」
ね、どう?と、さりげなく手を取り、整った顔を近付けてくる太宰さん。自分の顔の良さを分かってやっているだろうこれは。あざとい。
こんな風に、最近は銀ちゃんのついでに、と私にも絡んでくるようになってしまった。何だ「君でも良い」って。失礼な奴だな。
今度は銀ちゃんが私の反対の手をくいっと引っ張り、太宰さんから引き離す。これも恒例の光景になってしまった。
「いくら太宰さんでも兄さんは渡しませんよ」
「ふふ。いやあ、手厳しいね」
可愛い。ちょっと嫉妬してる銀ちゃん可愛い。しかし、太宰さんが狙ってるのは銀ちゃんだから心配しなくても大丈夫である。むしろ私は銀ちゃんの方が心配だ。やっぱり私が銀ちゃんを守らなければ………!!!
太宰さんに威嚇している銀ちゃんに、買い物へ行こうと声を掛ける。うん、と嬉しそうに笑っている銀はさっきまで太宰さんを睨んでいたとは思えないほど機嫌が良い。
その後は二人でのんびりと休暇を満喫したのだった。
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