「何でも切れるのなら……。私と、私の異能を切って」
話があると首領に呼び出され、部屋に入ったら、この言葉を言われた。つらい。十四歳にこれを言わせる世界よ………。
「芥川君、この子は君に任せるよ」
うぐ…。予想はしてた。そりゃそうでしょうね。
「………承知しました」
………正直やりたくないけど!!!!!でも上に逆らえないのが社会だから!!!!!頑張る!!!!!
と、いうわけで。まず自己紹介から。
「名は何と云う」
「………何故、切ってくれなかったの?私なんて生きている意味がないのに……」
………初っ端から重い。
うあーーーー!!!!つらいいいいい!!!あーー!!甘やかしたいよお!!!!!うわああああ!!!!!!
と、まあ内心はめちゃくちゃ荒ぶっているが、顔は平静そのものである。ポーカーフェイス大事。
「……只の、気紛れだ」
「………」
「……もう、放っておいて。私を、殺して」
心がキュッと締め付けられる。自然と手に力がこもった。
落ち着くために深く息を吐くと、鏡花ちゃんの肩がびくっと震えた。マジでごめん。怖がらせるつもりはなかったのに。
怒ってるわけじゃないのごめんね!?!?ホントに怒ってないんだよ!?
……さて、これからどうしようか。下手に訓練甘くしても死んじゃうし。せめて自分の身は守れるようになって欲しい。…けど、訓練以外は甘やかしても良いか。うん、そうしよう。
「名前は、何と云うのだ」
「泉鏡花」
「…好きなものは?」
それを問われる意図が分からず、こてん、と首をかしげる。はい可愛い。優勝。(何が)
「好きなもの………?」
うーーん、と考え込んでしまった。
ちなみに、私の味覚は芥川君の体に引っ張られているのかどうなのか分からないが、無花果を美味しく感じるようになった。
美味しく感じるようになったと言うか、そもそも今までろくに食べたことがなかったのだが、折角芥川君の体に入ったのだから、と記念に食べてみたのである。その時から私の好きなものに無花果が加わった。
閑話休題
うんうんと唸って考えて、ようやく思い付いたのか、
「…兎」
ぽつり、と呟いた。可愛いね。こんなにも強くて、頼りになって、でも好きなものがうさぎって………。ギャップ萌の塊じゃん???可愛さで敵殺せるって自信持ちな??
こんなの森さんが知ってしまったらどうなってしまうのか。年齢は森さんの守備範囲を超えているが、果たして。どうだろう、油断はできない。
「貴方は如何なの?」
「如何…とは」
「名前。あと、好きなもの」
不意にそう聞かれ、少し戸惑ったがそれよりも、何か質問してくれたことが嬉しかった。私がさっき聞いたからだろうか。
上手く関わり方が掴めず、たどたどしい会話になってしまう。加えて、どっちも口下手であるから尚更だ。
「芥川龍之介。好きなものは…。無花果、茶、骨董、後は、そうだな……」
「…銀。僕の妹だ」
「…………ずっと其の顔で居れば善いのに」
その顔、とはどんな顔だろうか。そんなにも変な顔をしていただろうか。どうしよう、芥川君の顔で変な顔をしてしまったと言うのなら私は罪悪感で死んでしまう。
訳が分からず首をかしげると、ああ…戻っちゃった……、と残念そうな表情をする。けれど、鏡花ちゃんはさっきよりも大分リラックスした表情になっていた。よかった。
何だか、新しく妹ができた気分である。また今度、近くの湯豆腐の店に連れていこうかな。
その後、ポートマフィアの遊撃隊隊長とその妹、そしてその部下の三人が共に食事に行く姿が度々目撃されたのであった。
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