テラーノベル
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璃都が、不安げに珠莉を見上げた。「お姉ちゃん……これから、どーするの……?」
珠莉は少し考えて、空を見上げる。
「どうしようか……私たち、帰りたくても、たぶんまだ“何か”がいっぱいいるよね……」
璃都は小さくつぶやく。「……ゾンビだよ。」
「え? 何?」と珠莉が聞き返す。
璃都はしっかりと答えた。「ゾンビだって。あれは。」
珠莉は首を振り、苦笑する。
「映画の話でしょ? いるわけないじゃん、そんなの。」
でも璃都は俯きながらも譲らない。
「でも、頭刺したら動かなくなったじゃん……」
「りと、やめてよ。現実にいると思う?」
「いるよ。」
珠莉は小さくため息をついて、静かに言った。
「……とりあえず、どうするか考えなきゃね。」
璃都は黙り込んだまま、足元のアスファルトを見つめている。
珠莉も少し黙ってから、ふと思い出したように言った。
「……りと、お腹空いてない?」
璃都は小さな声で答える。「……空いた……」
珠莉はバッグから、さっき拾ったパンを取り出して差し出した。
「これ、食べな。」
璃都は珠莉の顔を見て、「……お姉ちゃんは?」と心配そうに聞く。
珠莉は微笑んで、「私は大丈夫だよ。りと、食べな?」と言うが――
「お姉ちゃんが食べないなら食べない。取っといて」と璃都はパンを受け取ろうとしない。
「何言ってんの。意地張ってないで食べなさいよ。」
「意地なんか張ってないよ……お姉ちゃんが食べて……頑張ったじゃん……」
珠莉はしばらく考えて、少し涙ぐみながらうなずく。
「……分かった。一緒に食べよう。」
「……うん!」
二人はパンを分け合い、乾いた高速道路の片隅で少しだけ心を落ち着かせる。
「これからのこと、考えよう……」
――新しい一日、二人の小さな決意がまた始まった。
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