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桃の隊員による自爆に巻き込まれ、瀕死の重傷を負った猫咲と印南。
鳴海はすぐさま治療に入ったが、その姿は1人の桃太郎によって右京へと報告されていた。
彼からの指示はもちろん…
『もう1人向かわせる。生きたまま持ち帰れ』
鬼の国の天使に、悪魔の手が迫りつつあった。
自分たちとの戦いを邪魔され怒り心頭の桜介は、戦闘場所であるビルから飛び降りてくるなり同じ服を着た人物に向かって行く。
見慣れないその隊員は、右京と繋がったスマホを手にしていた。
「おいテメェどこ所属だ…!何、邪魔ぶっこいてんだクソ野郎…!」
「同感だね」
「返答次第じゃ容赦しねぇぞ!」
「右京さんの命令だ」
「「!?」」
『よぉ月詠、桜介ぇ。邪魔してわりぃな。単刀直入に言うぜ。お前らの手柄も俺がもらうことにしたからよろしく』
「あ?」
手柄を得るため、とどめは自分のとこの隊員にやらせる。
右京の身勝手な発言に、話が違うと練馬コンビはますます怒りを露わにする。
しかし年の功か、右京の方が一枚上手だった。
反抗してくる月詠と桜介に対し、彼らの部下を人質にとることで命令に従わせようとしていた。
『お前らの部下は拘束してる。戦いに参加して手柄はこっちがもらう。断れば部下が死ぬぜぇ~』
「おいテメェ…自分が何言ってんのかわかってんのか…?」
「右京さん、規則違反です。桃同士の殺しはご法度ですよ?キャリアを失うことになりますよ?」
『構わないねぇ。今回の戦いが俺の全てだ。
ってことで引き続き戦闘に参加よろしくなぁ~本番はここからなんだから。戦いを避けたりしても部下は死ぬからなぁ~』
「 おい右京…これは脅しじゃねぇ…決定事項だ。俺らを駒にしたこと、死ぬほど後悔させてやっからな」
『健闘を。アーメン』
そうして会話が終わった直後、彼らの視線に入ってきた光景は驚きのものだった。
視線の先には鳴海。だが普段の鳴海ではない。
血の海の中でただ1人鼻歌を歌い楽しそうにステップを踏んでいた。
「止まれ、ガングロに眼鏡」
「「!!」」
その言葉と共に2人の首筋に刃物が当てがわれた。
仮にも隊長・副隊長の2人に気付かれることなく、背後を取る。それがどれほど難しいことか言うまでもあるまい。
「命が惜しければオレたちの問に答えろ」
「鳴海…」
鳴海は2人を気にすることなくステップを踏み続けている。
「この桃太郎はお前達の部下か?それとも知らない奴か?」
「…彼は杉並区の隊員だよ。僕らは練馬。応援で呼ばれたんだ」
「右京はどこにいる?」
「さあな」
桜介がそう答えると舌打ちが聞こえてきたが聞こえないフリをした。
「…1つ、聞いてもいいかな?奇襲係くん」
「月那」
「月那、1つ聞いてもいいかな?」
「なんだ言ってみろ」
「今の鳴海は本当に鳴海かい?見た感じだけど彼、怪我してるよね?」
月詠の問に月那は “隊長は痛覚がイカれてるから痛みを痛みとして認識出来ないと” 返した
事実、鳴海は全身血塗れで両手には傷もある、のに本人が気にする様子は見られない。
なんなら月明かりのせいで舞台に立つ女優のようにも見える。
「(あー月詠が言ってたのってこれか…すげーキスしてぇ)鳴海」
「ん?…あぁ、いたんだ」
「うちの隊来ねぇか?」
「いきなり何?」
「このまんまお前のこと連れて帰りてぇ」
「何言って…」
「知ってると思うけど、俺も月詠も戦うの好きなんだわ。だからしょっちゅうケガしてる。 でもお前がいれば、そういう傷すぐ治してくれんだろ?そしたら俺らはまた全力で戦える」
「治せる人がそばにいるから怪我してOKにはならないでしょ」
「うるせぇ。今、正論は置いとけ」
「…」
「もちろんお前の身の安全は保障する。給料だってちゃんと払う。欲しいもんがあれば用意させるし、不自由な生活はさせない」
「…そもそも、俺鬼だけど」
「分かってる。分かってっけど…気持ちが抑えらんねぇんだよ。お前と同じ空間にいると、何かすげー楽しくて…体全体がふわふわする」
「!」
「危ない状況になってたり、怖がってたりしたら…護ってやりたいって思う」
「桜介くん…」
「…そうやって名前呼ばれるたびに、喜んでる自分がいんだよ」
「…」
「俺さ、鳴海のこと…」
思わぬ相手…敵であるはずの桃太郎からの熱烈アピールにどうしていいか分からず、鳴海は俯く。
添えている手を払いのけられたり、嫌悪感むき出しの表情を向けられたりするのではないか。
そんなことを想像していた桜介にとって、自分のことを意識しているような彼の態度は男心をくすぐるものだった。
いつの間にか自分の中に芽生えていた想いを伝えようとしたその時、また新たな人物が姿を現した。
突如聞こえた爆発音に振り返れば、さっきまで自分たちと話していた隊員が吹き飛んでいた。
抱き寄せることで、爆風によって巻き上げられた砂や小石から鳴海を護っていた桜介は、ビルの上の人影を見上げる。
「状況がいまいちわかんないんだけどど~ゆう感じ?」
「(この声…!)」
「そこに倒れてるの俺の友達なんだけど?」
三日月を背負いビルの屋上に立っていたのは、杉並区鬼機関隊長の朽森であった。
軽い身のこなしで地上に降り立つと、いつもの飄々とした雰囲気のままゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「派手にやられちゃってんなぁ。2人はこっちがもらうよ。邪魔するつもりなら…ぶち殺すぞ」
「(紫苑のあんな怖い顔初めて見た…)」
「お前が引き取れよ。瀕死の奴にとどめさしたってつまんねぇ」
「そ?じゃ遠慮なく。……で?」
「あ?」
「お前はいつまでその人抱き締めてるわけ?さっさと手離せよ」
「チッ…続きはまた今度話す。それまで男つくんなよ?」
「は?」
「ふっ。ほら行け」
桜介に送り出された鳴海は少し後ろを気にしながら、腕を広げて待っている後輩の元へ向かう。
普通ならそのまま抱きついてくるところを直前でピタッと止まる鳴海に笑みを零しながら、朽森はギュッと彼を抱き締めた。
そして顔を覗き込みながら優しく声をかける。
「大丈夫か?何もされてない?」
「何も。ちょっと話しただけ」
「何、あいつの肩持つの?」
「まさか。あっちから話しかけてきたんだよ」
「本当に1ミリも手出されてない?」
「ないって。(相手を吹き飛ばしたけど)」
「ほっぺにチューとかも?」
「だからないって…いい加減離して…!」
「ふ~ん…」
「…なんだよ、まだ何かあんのか?」
「この人俺が今狙ってる人でさ。手出されると困るってゆーか?」
「紫苑」
「別にお前のためじゃねぇ。俺がしたいからそうしただけだ。それに…先に助けられたのは俺の方だからな」
「へ?」
「話聞いて」
「そいつらが目覚ましたら言っとけよ。決着は次回に持ち越しだってな」
「鳴海!生け捕り命令はなくなったけど、君を狙う奴は大勢いる。気をつけるんだよ」
「わかってる!!!(離れない…!!)」
最後に揃って鳴海へ笑みを向け、練馬コンビは一瞬にしてその場から姿を消した。
“男との約束2分で忘れちゃうんだよなぁ”とぼやきながら、倒れている同期の方へ歩いて行く朽森。
歩きながら朽森は変なことを言う。
「で?本物の先輩はどこよ?」
「ん?急に何言ってるの?」
「嘘つくな。お前偽物だろ。本物はどこいった」
「…………君はやっぱり目敏いね。紫苑くん」
「まぁ」
「完璧な僕の変装に気が付けるのはほんのひと握りなのに」
そう言うと鳴海の姿がどろり、と形を変え小柄な青年が姿を現した。
「久遠寺、先輩は?」
「隊長なら少し野暮用で離れてる。直ぐに戻るさ」
「あの桃はお前の変装に気がつかなかったのか?」
「気付いていなかったよ。好きな人の異変に気が付けないなんて愛が足りてないねぇ」
久遠寺の能力、それは『変異』
猫咲の能力と似ているが決定的な違いはその発動方法。
猫咲は “変身したい物に接触する事” で変身可能だが彼の場合は “対象の心を寄せている相手” に変異することが可能である
「僕は一途なんだ。相手の声、仕草、喋りの間首の角度、視線、無意識下で行うクセ、それを見て相手の想い人になるんだから。」
「それでよく戦闘部隊に入れてもらえたな」
「想い人の姿で迫られたら誰だって躊躇うでしょ普通」
「頼むから先輩の姿で変なこと言わないでね。」
「髪を撫でて唇に触ってキスしたいくせに出来ない粗チンには世界がひっくり返ってもそんな事しないよ」
「唐突のディスやめてくんない?」
他愛もない話をしていると暗闇から鳴海が現れ怪我をした後輩2人の治療に当たった。
鳴海の応急処置を受けた猫咲と印南は、少し容態が落ち着いて来ていた。(久遠寺は別の場所の応援に行った)
だが当然ながら自力で歩くことはできないため、何とか2人で運ばなければならない。
当然、ガタイのいい鳴海が印南を小脇に猫咲を担いで運ぶことに。
猫咲肩に乗せて歩き出せば、不意に意識が戻った彼が言葉を発する。
「……鳴海…?」
「あ、起きた」
「悪ぃな…重いだろ。少しなら歩けっから、降ろしていいぞ」
「ダメに決まってんでしょ。ジューショー人のくせに」
「バーカ。お前がいなかったら、俺はもうとっくに死んでる。…ありがとな」
「本当は背負ってあげたいんだけどね〜」
「…こっちのがいい。鳴海の顔…よく見える」
「お、言うようになったねー。真澄くんが喜ぶよ」
「うっ… 早く運んでくれますか?」
「ハイハイ」
後輩をからかいながら進む鳴海なのだった。
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