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最後の晩餐
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「ここは、」
目の前には結婚式場のような白い大きな扉
これがなんの扉なのかもここがどこかも分からない
ただ不思議とこの扉の中に入りたい気がした
鈍い音を立てながら扉はゆっくりと開いた
中にはホテルマンのような服を着た長身の男
「いらっしゃいませ」
中は本当に式場のようだった
白が特徴的な洒落たレストランのような
「ここは、結婚式場ではありませんよ」
男は笑顔のまま答える
この男は人の心が読めるのか
「心なんか読めませんよ」
貼り付けた笑顔のまま答える
やはり読めるのでは
「ただ、皆さん同じことを仰るので」
ニコッと笑うと男は何かを差し出す
お茶のようなものが入った茶碗だ
今の雰囲気に合わずこれだけ浮いているように感じた
「あの、これは、 」
「無料ですよ、お口直しだと思って」
ぐい、っと強めに差し出されると何となく断れずに口にする
口を離した時真っ赤な口紅が着いてしまった
手で拭いてから返そうとするとすぐにひょいっ、と取られてしまった
「では、ご案内します」
口を伝ったお茶をぐっと拭って中へ歩き出す
何となく振り返ることはしたくなかった