テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
昔、悪魔は天使のことが嫌いだった。明るく太陽のように笑う天使たち。悪魔は明るいのが嫌い、そしてルールが嫌い。天使とは大違いな存在だった。けれど、天使は悪魔と仲良くなりたい。天使と悪魔が愛し合えばもっといい世の中になるのではと考えた。実は悪魔の中でもそのような考えの悪魔が存在し、同じ考えの天使と悪魔は通じあい、愛し合ったのでした。
そして、現在。世は近代的に変わっていった。
人間が生まれ、その中で天使の血を持った人間と悪魔の血を持った人間がいた。天使の血を持った人間と悪魔の血を持った人間が結婚したり、天使同士、悪魔同士が愛したあったりと、自由な世の中になった。けれど、もちろん悪いことをしようとする悪魔、天使たちは存在する。それを倒して解決していくのが悪天事務所の人達。
1.会議
「朝霧阿須。何故貴方たち悪魔は私たち天使の邪魔をするのですか。」
「邪魔をしてるつもりはねーぜ?お姫様。俺らは自由に生きたいから、市民にも自由を与えてやってんだ。」
とても礼儀正しく、上品な見た目でありながらもイライラとしている様子を見せている少女は涼風蒼。天使の血を持ったお金持ちの家の人で、天使の中でも偉い立場の人だとか。長く綺麗な青い髪色が特徴的で天使からも悪魔からも人気がある。そして、その向こう側に座っている、黒髪の偉そうな男は朝霧阿須。悪魔の血を持っていて、右耳に着いているピアスがキラキラしていてよく目立つ。頬杖を付いてニヤッと蒼に見せた。
「協調性が無さすぎるのではないですか?(怒)自由も大切ですが、ルールがなければ犯罪がまた多くなってしまうでしょう?」
「けど、ルールが多すぎても生活がしにくい。お前ら、外の周回したことないだろ。困ってるヤツらいっぱいいるぜ。食事の制限なんかいいだろ。自由に食わせてやれよ。」
「食事制限がなければ、栄養を取りすぎてしまうでしょう?食事を制限してなければ、今頃私たちの食事だってないはずよ。」
バチバチと蒼と阿須がずっと言い合っていると会議室に置かれている大きな机の真ん中にスピーカーがあり、そのスピーカーから男の人の声が聞こえる。
「2人とも。そこまでにしな。今、悪魔だけじゃなくて犯罪を犯す天使だって増えてきてるんだ。全て悪魔が悪い訳では無いよ。蒼。」
「すみません…。」
とても優しい声で注意をする男。スピーカー越しでも微笑みながら話しているのがよく分かる。
「出雲〜。いいから本題本題。これからのスケジュールの話だろ。」
スピーカーから聞こえるのは悪天事務所の最も上の方に経つNO.1天使。天坂出雲である。天使の血を持ち、とても優しい心を持った人間で阿須とは天使と悪魔同士でありながら、仲が良よく阿須は呼び捨てで呼んでいる。
「はいはい。これからのスケジュールはまず新人達の就任式があって、それに阿須、彗、蒼、麗乃に参加してもらう。その後は新人達の指導をしながら本部から来た依頼や、周回をして事件解決を行って欲しい。」
「新人達が来るのってワクワクしちゃうわね!彗くんっ!」
「あ、ああ、そうだね。」
笑顔で元気いっぱいな女は日和麗乃。天使の血を持っていて、蒼とコンビを組んでいる。皆と仲良くなりたい平和主義者なので悪魔にも話しかける。彗に好意があるのだとか。そして、何も表情を変えず頷いたジト目のオーバー サイズの服を着た男は橘彗。常に眠そうな顔をしていて、目の下のクマもすごい。悪魔の血を持ち、阿須とは大親友。阿須への信頼はすごい。
「ざっとそんな感じ。まぁいつもと変わらないからさ。何かあればまた連絡はするよ。では、よろしくね。皆。」
プツンっとスピーカーからの音は消えた。
そこで会議は終わり。阿須と彗は何も言わずに会議室を出ようとした。
「ちょっとどこに行くんですか。」
「どこも何も、周回だよ。これから街を回って様子を見る。何も無ければ今日は俺ら退勤だな。」
「資料をまとめる私たちの気持ちにもなってよ(怒)」
「資料まとめも大変だろうが、外に出ないお前らより俺らの方が断然苦労してるね。お前らもさっさと仕事にかかれよ。じゃあな。天使のお嬢様達。」
そう言い阿須は手を振りながら会議室を出た。
彗は小さくぺこりと会釈をし、阿須の後ろに着いて行った。
「本当に。ムカつく…。麗乃、早くやるわよ。」
「え、あ、うん!!」
蒼はイライラしながら、自分の仕事に戻った。
2.周回
「阿須、あんなことしたら天使に怒られるよ。怖いじゃん、あいつら敵に回したら。」
「別に。俺らの方が力はあるだろ。なんだっていい。さーて、今日の街はどーかしらぁん。」
阿須と彗は事務所を出て、街を周回しながら
悪魔棟まで向かった。
「今日も平和だな。こりゃなんもねぇな。」
周りを見渡しても、いつも通りではある。
「金を払え!!!小僧!!!」
「っ、」
スーパーの入口で、店員がボロボロの服を着た男の子の腕を掴んで怒鳴っているのを彗が見かけた。
「阿須。あれ」
「行くか。」
阿須と彗は店員の前に行き、話を聞きに行こうとした。
「はいはい。どーしたの。その子、なんかした?」
「こいつ、金も払わずに店を出ていこうとしたんだ。こんなに食べ物を持ってよ。俺らだって食に困ってんだ。」
「ふーん。」
阿須は店員の男の話を聞いた後、男の子に目を向けた。
「金、持ってないの?」
彗がしゃがんで男の子の目線と合わせた。
彗が聞くとコクリと男の子は小さく頷いた。
スラムの子であろう。だから、ご飯も貰えずボロボロの服、ボロボロの体で表まで出てきたんだと阿須は思った。
「分かった。俺が払ってあげるから、それは持っていきな。」
「いいの、?」
「ああ、もちろん。」
彗は小さく微笑み、店員の男にお金を渡した。
「金を払えばいいんだよね?だから、これで。 」
「ま、まぁ、金を払えばいいんだ。次はやるなよ!」
そういい男は店の中へ消えていった。
阿須が男の子を見て、少し苦しそうな顔をしていた。
「スラムの子だろ?それ持って帰んな。飯無くて困ってるんだろ。俺らが絶対に何とかするから安心しな!」
阿須もニカッと笑い、男の子を見送った。
「阿須、まだスラムとかあったんだね。 」
「俺もまだびっくりした。俺らの時代までだと思ってたわ。まぁ、そのスラム街も俺らが絶対無くしてやろうぜ。だから、食事制限なんかしないほうがいいんだっつーのに。」
阿須と彗は、そう話しながらまた歩き出した。
その後は、特に問題もなく、無事悪魔棟に戻ってきた。
「あ、おかえり。2人とも。」
「ただいま。三鶴先輩。」
帰ってきた阿須と彗をたまたま出迎えたのは、
柊三鶴。小柄でいつもフードを被り、ボヤっとしている。少し暗い印象のある男。阿須と彗の一個上の先輩である。
「別に敬語じゃなくていいのに。阿須と彗の方が立場は上なんだから。」
「いやいや、先輩は先輩っすから!」
阿須は三鶴に笑顔を向けた。
「そっか。今日はゆっくり休んで。また明日から頑張ろう。」
「ういーす」
三鶴も2人を見て、微笑みながら去っていった。阿須と彗を手を振り返した。
「三鶴先輩って、何考えてるかわかんないよね。」
「多分それ1番彗に言われたくないと思うぞ。」
「え。」
「まぁ、天使より悪魔の方が訳ありは多いからな〜。三鶴先輩も三兄弟の三男だし色々思うところはあるんだろうな。そういう所も俺らが支えてあげねぇとなって。悪魔棟のやつらは全員家族みたいなもんだからな!」
「うん。そうだね。俺らが守って、支えてあげよう。 」
阿須と彗はお互いに顔を見合せてニコっと笑い合い、自分の部屋まで戻って行った。
続