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1.課題
「ほんっっとうにあの男ムカつくっ!!!!」
「でも、好きなんじゃないの?」
「…、、」
蒼は広い机の上に広がる紙の束を前にイライラとしていた。朝霧阿須が気に食わないのだろう。悪魔と天使は気が合わないことが多いため、まぁ当たり前ではあるがあまりにも相性が悪すぎる。
「だって、あの人たちは外を歩いているだけじゃない!!私たちは部屋でずーーっと紙を前にして資料集めよ?おかしいわよ。そんなの。 」
「でも、蒼ちゃん。悪魔の方が力が強いのは確かなのよ。だから、街の周回は悪魔に任せなくちゃいけないの。天使にも戦える人達はいるけど、力はそこまで強くないから。実際、蒼ちゃんも私もそこまで能力値は高くないもの…。 」
麗乃が蒼を励ますように説明したが、蒼はまだ解せぬと言わんばかりの顔をしている。本当に気に食わないらしい。
「とにかく課題が多いの。食事制限もそうだし、本当は悪魔と天使が繋がるのを辞めたいぐらいなのよ、私。給料も何とかしないとね。今のじゃ多すぎ。市民にいいものをあげすぎよ。私たちが暮らせなくなっちゃうわ。」
蒼はブツブツと話した。
「蒼ちゃん、逆効果だと思うの、それ…、 」
蒼はブツブツと一人で喋っていて、麗乃の声は全く聞こえていない様子。
麗乃は、はぁとため息をつき自分の椅子へと戻った。
扉の向こうからコンコンとノック音が聞こえ、
蒼が「どうぞ。」と返事をした。
「よっ。嬢さん達よ。出雲いる?」
入ってきたのは出雲と同様、事務所の上司である東雲新樹。目が隠れるほどの重い前髪にグラデーションで黒からベージュへと髪色が変わっている。悪魔の血を持った阿須と彗の上司。出雲とは仲が良く、よく天使棟に来るらしい。
「天坂さんは悪魔棟に出かけましたけど、すれ違ったんじゃないんですか?」
「うわ、まじか。息があっちゃうんだからぁ。出雲ったらっ!」
きゃぴきゃぴとぶりっ子をするが、蒼はフル無視。麗乃は苦笑い。まぁいつもの事。
「ありがとな〜。追いかけるわ。じゃあな。」
「はーい。」
また東雲が部屋から出ようとした時、ドンッと飛び出してきた天使たちが現れた。
「東雲さん…ゼェ、俺らの…、弟は…ゼェ、元気ですか…っ!!!!」
大きい声で叫んだのはタレ目つり眉の短髪の男、柊二葉。天使の血を持ち柊三鶴の2人目の兄。その後ろにノロノロ歩いてきたのは柊一騎。柊三鶴の1番上の兄。ニット帽を被り両手を頭の後ろに置きながらダラダラと歩いてきた。二葉と一騎は双子であり、三鶴とは1個違いの兄弟である。
「二葉〜、三鶴なら1人でもやっていけるって〜。大丈夫だよ〜。」
「一人でなんでもやるからいけないんだって言ってるだろ。高校時代のことを覚えてないのか。」
雑で適当な一騎と真面目で過保護な二葉とはあまり相性が合わないらしい。
「まぁまぁ。三鶴なら阿須と彗がいるからとりあえず大丈夫だよ。心配しすぎても三鶴に嫌われちまうぞ〜!二葉兄ちゃんっ!」
東雲は、二葉の頭をわしゃわしゃと揉みくちゃにしながら言った。二葉は不服そう。
「あー、そうだ。麗乃ちゃーん!任務資料ちょーだいっ!」
「あ、はい!!」
急に話を振られてびっくりした麗乃が焦って、資料を持ち一騎のところまで行った。
一騎は資料を受け取り、ザーッと読んだ。
「なるほど。スラム街の見回りと解決か。珍しいね天使側がこんなのやるの。」
「問題になってるみたいなので…。スラム街なんかもうないと思ってたんですが…、一騎先輩、二葉先輩、よろしくお願いします!」
麗乃は説明の後深くお辞儀をした。
一騎は麗乃に向かってウィンクをし、
「まかせとけっ!!すぐ解決してやっからよ!」
と自信満々に発言した。
「日和さん、資料ありがとうございます。責任もって行ってきます。」
二葉も丁寧にお礼とお辞儀をし、2人はその場から去っていった。
「スラム街?それ、悪魔棟の方の任務資料にも混ざってたな。合同なのか。」
「まぁ、スラム街は広いですから。天使棟の2人だけでは回りきれないと思いますよ。どうせ、悪魔棟で行くのは阿須と彗でしょ。」
東雲の疑問に蒼はあっさりと答えた。東雲は「ふーん」と言いながら、蒼と麗乃がいる部屋から出ていった。
蒼と麗乃それを確認したあと、自分の仕事に戻った。
2.スラム街での任務前
「僕と阿須、二人での任務は珍しいね。彗はいないの?」
「彗はなんか具合悪いらしいっす。能力のせいでまた眠れてないんだろ。」
「彗、大変だな。」
三鶴と阿須はスラムに向かいながら、静かに話していた。阿須は彗相手じゃないためすごく大人しい。しかも、三鶴相手だからいつも以上に大人しくなる。
「お、ここか。懐かしいな。 」
「懐かしい?阿須はスラムと馴染みがあるの?」
「まぁ、俺、家族いなかったからここで騒ぎ立てるしかなかったんす。明るいところに出たら、化け物だって言われちまうんでね。俺、朝霧家の次男だし。」
「朝霧家はすごいお家なんだもんね。 」
阿須の家庭、朝霧家はお偉いさんが集まるお家で父親は昔、悪天の討伐隊のリーダーで母親はその副リーダーだったらしく、上の立場の人だった。
「まー、俺は認められなかったけどな。親2人とも天使だから。それをちゃんと引き継いだのは俺の兄貴。」
「阿須は、なんで…。」
三鶴がそう言いかけた時、遠くから大きい声で三鶴の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「みーーつーーるーーー!!!!!!」
「うげっ、」
その正体は一騎だった。走って、三鶴に向かってダイブし、三鶴のことを抱きしめた。
「久しぶりだなぁ!元気してたァ?!お兄ちゃん会いたかったよぉぉぉ!!!」
一騎は三鶴の事をぎゅうぎゅうに抱きしめていたが三鶴はとても嫌そう。
「一騎兄さん、やめろよっ」
三鶴はそう言い、一騎のことを強く手で押した。
「おお、ごめんごめん。久々に会えたから嬉しくなっちゃって。」
えへっとウィンクをした明るい一騎の後ろには、コツコツとヒールの音を立ててゆっくりと歩いてくる二葉がいた。
「三鶴。久しぶりだな。元気してたか。」
「二葉兄さん、元気だよ。」
ニコッと微笑み三鶴の頭の上にポンっと手を乗せた。そんな兄弟愛を目の前にした阿須は少し羨ましそうな顔をしていたが、すぐに切り替え本題に移る。
「はいはい。兄弟愛はいいから、計画立てますよ〜。いいですかー。」
阿須は手を叩いて注目させた。柊兄弟は、阿須より立場は下だが、阿須の先輩であるため阿須は不慣れな敬語を使う。
「スラム街は右から行くか、左から行くかのどっちかなんで、二手に分かれます。俺と三鶴で左。一騎先輩と二葉先輩で右に向かって調査お願いします。デビルかエンジェルがいたらそいつらの討伐と星回収をお願いします。」
阿須は手でジェスチャーをしながら仕切る。
一騎は「了解!」とOKサイン。
二葉は、頷き了承を得た。三鶴は「わかった。」と静かに発し、それぞれ了解を得る。
「んじゃ、二葉、行くぜ〜!困ったら兄ちゃんの後ろ立ってな!」
「兄さんより、俺の方が能力値強いんですけど…。」
2人は、普段通りの小競り合いをしながら右方向に進んで行った。
「んじゃ、三鶴先輩。行きますよ。」
「うん。行こう。よろしくね。」
阿須と三鶴もお互いに挨拶をし、左の方向に進んで行った。
続