すぐに振り返って、店内の様子を見ても、青い色の魂で赤い魂が埋もれてしまっていた。当然、アリスの魂ではない。アリスの魂は黄色だった。
「アリス。少しぼくの傍にいてくれ」
モートは警戒をしながら、アリスの肩を抱ける位置まで近づいた。赤い魂は危険を意味している。何かが起ころうとしていた。それは、命の危険がその人に牙を剥いているということだ。
「どう……したのです? あ……」
アリスも普段大人しいモートの警戒した鋭い目に気が付いた。モートは注意深く店内の人々を観察した。周りは皆、平和に買い物をしている。なら、その赤い魂の人は、誰かに恨みを買われているか、偶然危険な人物に突発的に出会ったといったところだろう。後者でも前者でも黒い魂を持つものがいる。そのものは、複数かも知れない。
「あ! あの人?!」
アリスが驚きの声を上げた。
Angel 2
アリスは前方にいる背の高い金髪の男から神々しいオーラのようなものを感じた。何とも言えない落ち着いた気持ちにさせる。そのオーラを全身に浴び。アリスはその男がモートとは何もかも対照的だと思った。
モートは安心できる男だが、常時油断ができない空気を発しているのだ。何に対して油断ができないのかは、アリス自身はさっぱりわからなかったが。ただ、静かに這いよるかのような不思議な恐怖を感じる類の空気だった。
隣でアリスの肩を庇うように抱いていたモートが、その男に気が付いた。モートは静かにアリスから離れて、その男の方へと歩いて行った。
店内の人々は、急に大きな異変が起きたかのように、モートとその男の方を見つめた。神々しいオーラの男の方が早かった。口を大きく開き、大袈裟に両手を上げたのだ。
「やっと、出会えた! あなたを探していたのです!」
アリスはその男の正体に薄々気が付いていた。モートとは正反対の……天使か神かだ。
アリスはその男の前で自然に胸の上で十字を切っていた。
何故かその男の前では、まるで、子供の頃に戻って来てしまったかのような気持ちになっていた。
しかし、隣のモートは警戒を怠らなかった。
何故かしら? こんなにもいい人に対して?
そう、警戒することなんて何もないのに?
アリスは、ここグレード・キャリオンの店内の照明にてらされたモートの表情を見つめた。
モートの顔は相変わらず険しく目の前の男からモートは少し間合いをとっていた。
「ねえ、モート。彼は私たちの味方よ」
アリスはモートに告げた。
「そう……きっと、天使か神よ……」
アリスは一人。確信をもって呟いていた。
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