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Angel 3
この男は誰だろうか? 何者かはわからない。けれども、自分とは違う。それも根本的に、あるいは決定的に……。
モートはその男の魂が何色にも見えないのに驚いていた。
周囲の人々もこちらを見ているが、別に警戒をしているというわけではなく。壁に掛けてある洋服を選ぶ人もいた。
よくわからない? 何が起きているのか? あの二人は普通の人じゃない感じがする。などの不可解さから目が離せないといった状態だろう。
「あなたには真実をどうしても話したいんです! ですが、ちょっとここでは言いにくいので……できれば場所を変えてからお話しましょう。私はあなたと絶対にお話をしたいのです。あ、あなたの名前を教えてもらうのが先ですね」
店内の照明に照らされているのか、眩しい光を纏ったその男は、両手をあたふたと広げたり、モートと同じ黒のロングコートを脱いだりと、武器らしいものは何もないんだと言いたいようだった。つまり、こちらに危害は加えないとでも言いたいのだろうか。
「わかった。アリスはここで……いや……」
モートは人ごみの中。赤い魂の人が確かにこの店にいたはずだ。と思いだした。
「少しここで待っててくれ。あなたもだ」
モートはアリスとその男を、この場所へ留め。二階へと上がった。赤い魂が青い魂に隠れていたのではなく。ただ、一階にいなかったので、見えなかったのだ。
そう、モートは考えた。
大理石の階段を上がり、モートは踊り場で少し佇んだ。行き交う人々は、皆青い魂だったが、突然赤い魂がちらほらと見えてくるようになった。
モートは急いで二階のフロアへと上がる。
そこは、ベビー用品のフロアだった。
もう、見えていた。
赤い魂の人々のいる理由と。
赤ん坊を探し続ける母親の赤い魂を。
母親は心配のしすぎで青ざめて危険を周りに発していたのだ。
モートは赤ん坊を探すのを手伝うため。一度、階下へと向かった。
モートは一階に着くと大きな声で、アリスを呼んだ。あの男も付いてきたが、モートは気にしなかった。それなら一緒に探せばいいと考えた。
「アリス。お願いがあるんだ。君とあと……」
モートはその男の名前を知らないことにすぐに気が付いて、自分はモート・A・クリストファーでこちらの女性はアリス・ムーアだと早口で言った。
「モート君とアリスさんか、そういうことなら私も手伝うよ。私の名前はオーゼム・バーマインタム。天界から来たんだ」
…………
モートとアリスは驚いたが、オーゼムはどこもかしこも普通な立ち振る舞いで、二階へと駆け上がる。
モートもアリスを連れて二階のフロアへ辿り着いたが。行き交う通行人たちの魂の色は、青い色から赤い色に全て変わっていることに気が付いた。赤ん坊の生命の危機と考えていいとモートは思った。
この広大なベビー用品売り場で、赤ん坊一人探すのはいくらモートでも難しいことだった。そこで、モートは順に青い魂が赤い魂に変わっていく場所を調べていった。
お客もそれぞれ探してくれている。
ふと、モートはこのフロアの左側の奥。小さなベットのある辺りに赤い魂を見た。魂に大きさというものはないが、一番床に近い魂だったのだ。
だが、モートより先にオーゼムは素早く走りだしていた。
ものの数秒で、オーゼムは赤ん坊を抱きかかえていた。
「オギャア」と泣いた赤ん坊は信じられないほど真っ赤な顔になっていた。あと一歩遅ければ手遅れになるとモートは考えた。