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「照を嫉妬させたいんだ…」
そう言って…真面目な顔で俺に話しかけて来たのは、いつだっただろうか…
「だってアイツ、テレビや雑誌では【自分は凄く嫉妬深い】って言ってるくせに、俺が何言ったってニコニコ笑ってるんだぞ…何か悔しい」
本当に悔しそうに言うものだから、ウッカリ笑ってしまって睨まれる
「まぁまぁ…でもさ翔太君の事、信じてくれてるって事じゃ無いの?」
「でも、それじゃ嫌なんだよ…そうだ!照の前で目黒の事褒めまくるとかどうだろう?」
「え〜それって、俺も巻き込まれるの〜?」
他愛もないいつもの風景、あんな風に顔を合わせて話をしたのが遠い昔の様にも思えて来た
【SnowManのメンバーである渡辺翔太さんが、現在消息不明で…】
突然飛び込んで来たニュースに、周囲が騒然となる…
何処を探しても、協力を呼びかけても全く足取りの掴めないまま
何の手がかりもなく、3カ月…
「翔太君、何処にいるんだよ…」
悔しさを滲ませ、そう呟いて
パソコンを開いて、最近の日課である掲示板を開いてみる
「………」
それは、藁をも掴む気持ちで作った情報提供を呼びかける掲示板…
渡辺の…彼に関する、どんな些細な情報でも良いから
何か分かったら教えて欲しい…
そんな気持ちでメンバー8人で作り上げた、場所だった…
「あれ?コメント、減ってる…?」
昨晩見た時より、減った様に見えるコメントの数に首を傾げて考えるが…
「俺の見間違い…かな…」
掲示板の鍵を持っているのは、俺達SnowManのメンバー8人だけ
「最近、よく眠れてないから…」
目黒は、仕事以外の時間のほとんどを渡辺捜索に費やしていた
行きそうな場所、少しでも可能性のある所をしらみ潰しに探しているが…思う様な収穫はない…
「翔太君、絶対…絶対に無事でいてくれよ…」
そう呟いた言葉が、宙に舞って静かに消えた
◇◆◇◆
「………」
人通りの無い裏路地を、背の高い男が1人歩いている…
下に降りる階段を使って、とある部屋の前まで行くと
鍵を使って、頑丈そうな扉を開けた
「翔太、良い子にしてた?」
男が部屋の中に入り、声を掛けると…
中に居た人物が姿を現した
「………」
その首には、首輪…
その首輪には鈴が付いていて、動く度にチリンチリンと音がする
「やっぱり、青い首輪にして正解だったね。翔太には、青い色が良く似合う///こうして見ると、本当に可愛い猫ちゃんみたい…///きっと佐久間辺りが今の翔太を見たら、可愛い〜って興奮して大変な事になりそうだ…」
そう言って、男が彼を引き寄せ抱き締めると
首輪から伸びた、太くて頑丈な鎖がジャラリと鳴った
「ねぇ、照…もうこんな事止めようよ…」
渡辺が腕の中で小さな声で懇願するが…
当の本人は聞く耳を持たない
この部屋には、陽の光は届かない…
太陽を最後に見たのはいつだっただろうか?
あの日、照に手作りの晩御飯をご馳走になって…
食後のコーヒーを飲んだ所から、この部屋で目覚めるまでの間の記憶が全く無い…
「もうずいぶん経ってるって言うのに、世間は翔太の事を中々諦めてくれないんだ…捜索のニュースは毎日やってるし、ファンの子達はビラ配りまでしてるって聞く…もう良い加減、放っておいてもらえると確かるんだけど…それに…」
突然、岩本の纏っていた雰囲気が変わっていく…
「それに、あの掲示板だって…アレを作ろうって言い出したのは、目黒なんだ…愛し合ってる俺達の邪魔をどうしてもしたいらしい…」
次第に、怒りが身体を支配し始め…
目付きが怪しくなって来る
「照!落ち着いて!」
渡辺が、抱き締め返して声を掛けると
岩本は、その身体を抱き上げて乱暴にベットへ降ろし…
その上に覆い被さった
この部屋は殺風景で、家具も最低限の物しか置いていない
このベッドも、その一つ…
ここで、渡辺は岩本に抱かれているのだ…
「翔太はやっぱり、アイツの事が大切なんだね…」
何度違うと否定しても、岩本は事ある毎にそれを言う…
その顔が凄く寂しそうに見えて、渡辺は岩本に声を掛けた
「照…俺には、照だけだから…他のモノはもういらない…」
耳元で囁くと…岩本は、ようやく顔を上げてくれた
「本当?本当に?」
問いかけて来る彼に…目を合わせ笑顔で頷くと、嬉しそうな顔をする
「愛してる…」
交わす口付け…
「翔太…身体、見せて…」
一枚だけ身に付けていた、シャツのボタンを外していくと
渡辺の身体には無数の赤い花が散っている…
それは、目の前の臆病な彼との愛の印…
ゆっくりと渡辺の細い指が、それを辿ってなぞっていく…
それを黙って見つめる岩本
この印が増えていくのを見る度に、嬉しくなってしまっている自分も…既に、どうかしてしまっている様だ…
それならいっそ、2人このまま…堕ちていってしまおうか
「照、来て…」
欲しがる様に手を伸ばすと
大きな身体が、ゆっくり俺に近づいて来た…
完