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それからどんどん運ばれてくる料理は、どれも絶品で。

大切な人と美味しい料理。

そして何気ない会話をし合える今のこの時間は、気持ちもお腹も満たされる至福の時間。


「次。ちょっと特別に食べて欲しい料理あるんだ」


そしてメインに差し掛かった頃、樹がそんなことを言い出した。


そして運ばれてきた料理を見ると・・・。


「シチュー・・・」

「そう。これ、今日の為に、シェフにお願いしてハルに作ってもらったんだ」

「・・えっ?ハルくんに?」

「そう。ハルがこの店で働いてるのってなんか不思議な縁も感じるし。それならせっかくだから、ハルにも一品お願いしたくて」

「樹・・・」

「そしてハルが作ってくれたのがこのシチュー。もう透子はわかってると思うけど」


それは見ればすぐにわかった。

これはきっと両親のお店でずっと出し続けていたシチューだ。

ハルくんもずっと大好きだったシチュー。

このシチューを自分もこの先ずっと守り続けていきたくて、ハルくんは料理人になることを早くから決めた。


「うん。すぐにわかった・・。そっか・・。ハルくん作ってくれたんだ。ハルくん自信ないからって今まで一度も食べさせてくれなくて・・」

「だから、今日特別な日だからってお願いしたんだ。オレにとってはハルも家族の一員だから」

「ありがとう・・樹・・・」


樹がまさかそんなことをお願いしてくれてるなんて思いもしなかった。

ハルくんは、シチューのレシピは母から受け継いだモノの、まだお店をやり続けている母を気遣ってか、一度もまだプライベートでさえも作ってはくれなかった。

だけど、私とハルくんにとっては、どんな料理よりも想い出の料理で、大好きな料理で。

父がいた頃の幸せな時間にすぐ戻れるくらい。

だから、ハルくんは料理人になると決めた時、ちゃんと自信がついて、いつか特別な時が来たら、その時に作ってくれると約束してくれていた。

ようやくハルくんの作ってくれたシチューを食べれる嬉しさと、今日という特別な日にその約束のシチューを作ってくれた感動と、そして何よりそれを樹が考えてくれたという優しさと幸せが、胸いっぱいに溢れて言葉が詰まる。



「この店でシチューだなんて、何年振りかしら」

「そうだな。最近はこの店ではもう食べられていなかったな」


するとそのシチューを食べて呟いた二人。


「親父と母さん、ここでシチュー食べたことあるの?」

「えぇ。昔はね、このお店でもシチューがあったのよ。私たちそのシチューがとても気に入っていて、ここに来るたび当時はいつも頼んでいたの」

「そうなんだ?確かにオレここで食べたことないかも」

「そうね。でもあなたも小さい頃はここで食べたことあるのよ?」

「そうなんだ?」

「そのハルさん・・?その方は、透子さんのご家族?」

「あっ、すいません。ご説明もなしに。ハイ。悠翔っていって私の弟なんですが、縁あってこちらのお店でシェフとして働かせて頂いてるんです」

「まぁ。そうだったのね」

「それでオレが無理言って頼んだんだ。オレにとっても彼女にとっても特別な日だからって」

「料理人としてはまだまだみたいで、最近ようやく少し料理任せてもらえるようになったって聞いてはいたんですが・・」


REIKA社長にそう説明するも、私もいきなりのことでまだ整理がついてない。


「それで今日このシチューを作って下さったのね」

「ハイ。そうみたいです。実はうちの両親、小さいお店ですがフレンチの店をやっていて。そこで出しているシチューが私にとっても弟にとっても特別で絶品で大好きな料理で。弟が料理人として、いつか自信がついた時、特別な日に作ってくれるって約束してくれてたんです。まさかそれが今日だなんて思ってもなくて・・・」


説明をしながら、今約束を叶えてくれたことを改めて実感する。


「素敵なお話ね。そんな特別なシチュー私たちも頂けるなんて光栄だわ」

「冷めないうちに頂こうか」

「ええ」


社長とREIKA社長がそう言いながら、ハルくんのシチューを食べてくれる。

それがまた嬉しくて。


「いただきます」


そして私もじっくりそのシチューを眺めて、一口シチューを口にする。


あぁ・・この味だ。

すごい。ハルくん、ちゃんとあのシチュー再現出来てる。

どこにでもありそうだけど、いろんな隠し味だったり、愛情が入っていたり。

一口食べるだけで温かい気持ちになって、幸せな気持ちになって、笑顔が零れるシチュー。

食べ進めていく度、いろんな幸せを思い出して、また温かい気持ちになる。

両親が作ってくれたシチュー、そしてハルくんの作ってくれたシチューは、そんな特別なシチュー。


「うん・・。この味。大好きな味」

「ホントだ。ウマい。あの時食べさせてもらったシチューと同じ」


樹も同じようにあの日食べた母のシチューの味を思い出して、美味しそうに食べながら隣で微笑んでくれる。



本気になってはいけない恋

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