テラーノベル
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私は小さな時から、アイドルが好きだった。
テレビでアイドルが歌って踊っていると必ず真似して踊っていた。
踊る方法も分からないし、その人がどんなグループなのかも知らないけど、
とにかくアイドルを見ると、体が自然と動いていた。
「アイドルが好きなのかな〜」
母からも、そう言われてきた。
その後は初めて好きなアイドルができて、私を何度も救った。
そしてアイドルが大好きな私、
佐藤茉子は今…ステージに…!
、、、立つ妄想をしている。ベッドで。
だーって、アイドルなんてなれるわけないんだもん、
もう高校生だし、真面目に進路を考えないとねぇ。
起き上げた体を元に戻し、再び寝た。二度寝だ。
こんなキラキラしてないズボラが、アイドルだなんて夢のまた夢だよ。
ベッドで携帯をいじろうとパスワードを入力する。
ホーム画面は大好きなアイドルとチェキを撮った時の写真。
スタイルが異次元すぎて隣に並ぶのが凄く恥ずかしかった。
でもこれを刺激に垢抜け頑張ろうと待ち受けにした。
ただ、筋トレは3日しか続かなかった。まさに三日坊主だ。
適当にショート動画のアプリを開く。いつもの流れ。
「ふふっ、可愛い」
スマホの画像を見てニヤニヤする私。そのあと黒の画面が出てきて我に返る。
目は浮腫んでいて、ブサイクな私だ。
ダラーっと動画を見てると、ある画像が私の目に入った。
「ん?」
【☆アイドルオーディション☆】
ア、アイドルオーディション?募集中なのか?
「満15歳以上の女性…か、」
私はこの間誕生日が来てシックスティーンになった。
ちょっと興味があるなぁ。
「ご飯よ〜」
母のその声を聞いた私は、スマホを閉じた。
「今行くー」
中学生、特に中2の時は反抗期真っ只中で、家を出て行こうかなんて考えたこともあった。
でもそんな時、支えてくれたのがアイドルだった。
見る人みんなを笑顔にして、憧れる存在にしちゃうアーティスト。
自然と口角が上がって、目をまぁるく輝かせる私達ファン。
その度に私は明日も頑張ろう。と思う事ができた。
私にとってアイドルがいる生活はもはや当たり前。
最近流行っている可愛いアイドルの曲を口ずさみながら、階段を下りた。
「いただきます」
必ずご飯の前に言う挨拶だ。その直後に、こんがり焼けた食パンにイチゴのジャムを塗る。
「お母さん、アイドルオーディションが開催されているんだって」
私は母になんとなくそう言った。
「あら、興味あるの?」
「一応。今は受けようとは思ってない、」
別に受けたって第一ラウンドで不合格。メディアにも公開されないだろう。
「可愛いから、受ければいいのに」
「そんな事ないよ」
私の母はいわゆる親バカだ。小さい時から変わらず。
薄いピンクのハムを食べ終え、ごちそうさまと手を合わせる。
アイドルオーディション、受けたら世界観が変わるのだろうか。
人生の道が考えられないくらい、素敵になるのか。
でも逆に、叩かれたり、芸能界の闇に吸い込まれてしまうのかも。
でも私は一般人だからわからないな。
そんな事を考えながら、いつものバス停まで歩いた。
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