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「もとき君!?」
「元貴!」
お兄ちゃんたちが僕を呼んでる。でも、ここにいたらお父様にバレちゃうよ。だから、ここにいちゃいけないんだよ。それに、名前を呼んだら、お父様に聞こえちゃうかも知れないから、呼んじゃダメだよ。
「おい!どこ行くんだ!」
「……兄弟だね」
ごめんね、お兄ちゃん。僕、上手にできなくて。僕が繊細じゃなければ、迷惑をかけなければ。……産まれなければ。
「…おかえ……ませ!……な様……」
お父様が来ちゃった。逃げなきゃ、隠れなきゃ、でも、どこに?そんなの考えてる暇なんてないから、とにかく走れ、走れ、僕。どこかに行けば、隠れられたら、正解だから。
「もとき様?……こちらにどうぞ」
ここはどこだろう。僕に触れてるのは誰。でも、ここなら隠れられる気がする。この人は、僕の見方をしてくれる気がする。
「もとき様、ここは少し狭く暗いですが、こちらなら安全です。決して音は立てないこと。これだけはお守りください」
ここは、棚のなか?“音は立てないこと”、それなら慣れてるし得意だ。何時間でも何日でも、僕がここで静かにしていれば、お兄ちゃんたちが怒られないのなら。
「大丈夫です。きっとお兄様が守ってくださりますよ」
棚の外から小声で聞こえてきた言葉。お兄ちゃんが守ってくれる。ここにお兄ちゃんはいないのに、どうして?でもね、なんだか、ここにお兄ちゃんの温もりを感じるんだ。
「……あなた方は本当に兄弟ですね」
しんみりとした、なにかを懐かしむような声が微かに聞こえた。お兄ちゃん、僕のことはどうでも良いから、お兄ちゃんが、お兄ちゃんたちが怒られないように、頑張って……。
お兄ちゃんたちの声も、お父様の声も、なにも聞こえない。だいぶ遠くまで来たのかな。今の僕にできることは、ただじっと、音をひとつも立てずに存在を消すこと。良かった、得意なことで。
“……待ってろ元貴、必ず迎えに行くからな”
え?今の声は、お兄ちゃん?でも、お兄ちゃんは、ここにいないはず。なら違うのかな、じゃあ誰の声だったんだろう。
でもきっと、お兄ちゃんは、迎えに来てくれるよ。ここに。だって、僕がまたいなくなったら、何回でも探すって言ってたもん。そうだよね?お兄ちゃん。
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コメント
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今後、この使用人さんが、キーパーソンになりそう… 続き楽しみにしてます!!