高校一年生の春、僕はクラスの中心、津永優馬に告白されてしまった。僕は咄嗟にOKを出した。
その時の彼の表情は今でも忘れることが出来ない。
恋人になって1週間が過ぎた。だが、まともに会話することはほとんどない。この一週間で話したのは、委員会決めだけだ。津永と僕は同じ委員会になった。話しかけたのは津永だ。だが、1週間前のあの言葉が幻だったんじゃないかと思えた。まるで初対面のように、
「よろしくね、東さん。」
何故だ、でも僕だって好きなわけじゃ…
そう思ったら心が痛む、まるで好きということを自覚しろと言われてるようだった。
「よろしくね。津永さん。」
そう答えるしかなかったんだ。「僕たちって付き合ってるんだよね」なんて聞けるはずがない。
委員会以外では全く話しかけてこない津永に腹が立った。告白してきたのはそっちじゃないか。
なんで僕がここまで頭を抱えなきゃならない。
付き合ってから10日が過ぎようとしていた。
だがその日はいつもと違った。僕はいつものように倉庫に行ってお昼を食べようとしていた。購買で買うパンを1人で食べる時間はとても虚しい。
向かっている途中、僕の名前を呼ぶ声がした。
「東!!」
津永だった。津永は僕のところに駆け寄ってきて
「お昼、一緒にいい?」
彼は僕を見つめてきた。あぁ、見つめないでくれ、その瞳に見つめられると、僕はおかしくなってしまう。
「どうして。」
「だって俺ら付き合ってるじゃん。」
なんてマイペースなやつなんだ。これまで全然話しかけてこなかったくせに。急に付き合ってるなんて言い出す。本当にずるい。
「まぁ、うん、いいよ。」
久しぶりだ、人と一緒にお昼を食べるなんて。
小学生の頃は、友達もいた。
だが中学に入り、親が離婚し、母親は妹を連れて出ていった。父親に引き取られた僕は、地獄そのものだった。父親はろくに飯も作ってくれない。
仕事だのなんだの行って、白いYシャツに真っ赤な口紅の後を残して帰ってくる。最低だ。
そこからだ、僕がひとりになったのは。
バカにされた。罵られた。
こんなこと津永に知られたらきっと嫌われる、そんなの嫌だ。、、、あれ?嫌??嫌われても別にいいはずなのに。あぁそうなんだ、僕、津永が好きなんだ。そうこう考えてると遠くから津永の声が聞こえてくる。
「…が!…なが!つなが!!」
「あ、あぁごめん。なんだっけ」
「だから放課後!一緒に帰ろうって!」
「えっ。 」
「やっぱ、嫌だよね。」
「違くて!!一緒に…かえろ。」
津永は凄く喜んでいた。不覚にも可愛いと思ってしまった。これも好きだからだろうか。
「じ、じゃあ放課後!また、声かける、!」
あぁ、楽しみだ。