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薄暗い地下牢。湿った空気と鉄錆の匂いが鼻をつく。少年は重い足取りで牢の中へと進んだ。奥には、鎖に繋がれたサリエルの姿があった。以前会った時とは違い、その顔には疲労の色が見える。
「サリエル…」
少年が静かに呼びかけると、サリエルはゆっくりと顔を上げた。
「やあ、アゼリア。無事に生還か?」
サリエルは鎖の音を響かせながら、軽薄な笑みを浮かべた。
「…私の親友が死んだ… セリスを…セリスを殺したのはお前たち悪魔だ!」
アゼリアは声を荒げ、牢の柵を強く握りしめた。その目は憎悪に燃えている。
「…気の毒だったな。だけど、これは戦争、 死ぬのは天使だけじゃない。」
サリエルの言葉に、アゼリアはさらに激昂した。
「ふざけるな! お前たちは理由もなく人を殺す! 悪魔は滅ぼされるべき存在だ!」
「理由もなく、ね。アゼリア、たなたたちは本当に何も知らないんだな。」
サリエルは嘲笑するように言った。鎖がジャラリと音を立てる。
「知らない? 私たちは正義のために戦っている! 悪を滅ぼすことが我々の使命なんだ! 」
「正義? 使命? 笑わせるなよ! お前たちの正義は、誰が決めたものだ? 生まれながらに天使だから、悪魔を倒すのが正しいと教え込まれただけじゃないか!」
サリエルの言葉は、少年の心を深く突き刺した。少年は言葉を失い、柵を握る手が震える。
「セリスは…セリスは、悪魔を完全に悪と思えない私に、迷っても良いと言ってくれたんだ。でも、私は…私はセリスを殺した悪魔を許せない!」
少年は苦悶の表情を浮かべた。
「許せないか…。僕の家族も、天使に殺されたんだ。生まれたばかりの妹も、何の罪もない母さんも…」
サリエルの声は静かだが、その奥には深い悲しみが宿っていた。
「…!」
少年は息をのんだ。サリエルの言葉は、少年がこれまで信じてきた世界の脆さを露わにした。
「僕はね、アゼリア。天使も悪魔も、同じだと思ってる。争いを終わらせたい。それが僕の…いや、僕たちの悲願だ。」
サリエルは鎖に繋がれた身でありながら、真剣な眼差しでアゼリアを見つめた。
「争いを…終わらせる?」
少年は戸惑いを隠せない。
「そう…お互いを憎み合うのはもうたくさん。あなただって、悪魔を憎めない自分もいるんじゃないのか?」
少年は何も答えられなかった。少年の心は、憎しみと疑問の間で激しく揺れ動いていた。
その時、牢の入り口に人影が現れた。
大天使ミカリスが、冷たい視線を少年に向けていた。その表情は冷酷で、静かに二人の会話を聞いていた。