私、まだ死にたくないわ。
君が死んだら俺だって悲しいさ。
そんなこと言わないでよ。
約束してよ。ずっとそばにいるって。
ああ、誓うとも。
俺は君のことが好きだからね。
だから死んじゃダメだよ。
わかっているさ。
私のために死んでくれるんでしょう? もちろんだとも。愛しているんだから。
私を愛してくれる人なんてあなたしかいないもの。
ねえ。あなたはいつまで生きていられると思う? いつかわたしのことを忘れちゃうんでしょうね……。
そんなものさ。忘れた方がいいこともあるんだぜ? だってもう会えないじゃない。それに、もしまた会えたとしても……きっと覚えていないわよね。
そんなことはないさ。おれはおまえのことをけっこう好きだし、これから先もずっと好きでいる自信があるぞ。
それじゃあ、もしもわたしがあなたを殺したらどうなるのかしら?それはね、きっととても美しいものになると思うわ。
そう言って彼女は僕に微笑みかけたんだ。……でも僕はそんなものは見たくないし欲しくもない。
だってさ、そのあとに残るのは何だと思う?
――死だよ。
だから君に殺されるわけにはいかない。
「ふぅん?」
僕の言葉を聞いた少女は不敵に笑った。
「それがあなたの答えなのね」
そうだとも。
「つまりあなたは自分の命の方が大事なのよね」
ああ、そうだ。
「自分が生き残るために、他人を犠牲にしても構わないと思っているのよね」
それでいいじゃないか。何を言っているんだ君は?
「あなたって本当に最低の男ね」
彼女は吐き捨てるように言うと、手にしていた槍を振りかぶった。
「だけど私はそういう人間が大好き!」
そしてそのまま躊躇なく振り下ろす。
その一撃を避けることもできたけど、あえて避けなかった。
避ける必要なんて無いからだ。
彼女の攻撃はそのまま僕の身体を貫いた。
しかし不思議なことに痛みは無い。
むしろ心地よいくらいだった。
「ごめんなさい。本当はこんなことしてあげたくはないのだけれど」
彼女は少しだけ辛そうな顔をして言った。
「私がこれからすることを許して欲しいとは言わない。恨んでくれても構わない。ただ君だけは忘れないで欲しいんだ……」
――『世界の終焉』より引用
「お前は誰だ?」
「僕は僕だよ。君の知っている僕さ」
「嘘をつくな!」
「嘘じゃないさ。証拠を見せようじゃないか」
そう言って男は懐に手を入れ、何かを取り出した。それは、古びてはいるが見慣れたもので……
「これは、俺の学生証!?」
「ああ、そうだ。これでも信じてもらえないか?」
「だが、そんなはずはない! 俺は確かにあのとき死んだはずだ!!」
「いいや、君は死んでなんかいないさ。こうして今生きている。ほら、ここにね」
男は学生証をヒラヒラさせながら、こちらに見せつけてきた。その仕草はふざけているようにしか見えないのだが、何故だろうか? 目の前の男からは、言い知れぬ威圧感を感じるのだ。まるで本物の死神のように。
「じゃあお前は一体……」
「僕は、君と同じ転生者さ」
「同じだと!?」