テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
カツカツと歩く音を会場に響かせる。
堂々たる姿を見て誰も私を疑わない。
そんな馬鹿さ加減に辟易する。
丸い机の付近に並べられた4つの椅子に一人の女が腰かける。
ワインを1回、2回と回し
口に付けるが味はしない。
あちらこちらで仮面を付けて踊り狂う市民の平和さに冷笑した。
このくだらない舞踏会から今直ぐにでも逃げ出したいが
そんな事をした暁には
私の首は飛ぶだろう。
そうならないが為に私は人を殺めた。
今日だってそうだ。
そんな平穏な日常を
一人の男が崩しにやって来た。
何時の間にか私の正面へ座り
グラス片手に此方を見つめていた。
警戒を怠ったつもりもないが、
その男の気配の無さに関心を持った。
「 お一人ですか 」
突然口を開いたと思えば
在り来りなお誘いだった。
公共の場なので安易にも動けず
仕方なくそれに応じる様に返事をする。
「 では少し私の話を聞いて頂けますか 」
いきなり始まる世間話に拍子抜けした。
私が驚いていることを気にもとめず
彼は一人手話を進めた。
「 実は私、今の生活に飽きてしまいまして。
何の変哲もないこの日常に。
だから新しい刺激が欲しくなり、
この舞踏会を利用した。 」
分からなかった。
私にとって変わらない生活程幸せなものは無かったから。
「 只来てみたは良いものの
楽しみ方も分からない。 」
彼は一体何しにここへ来たのだろう。
この時間に意味はあるのか。
「 そんな時、貴方を見つけた 」
そう言って立ち上がり、
此方まで歩いてきて私の前で跪く。
なるほど
と一瞬で理解した。
「 貴方なら私の人生を変えてくれるような気がした。 」
「 面白い口説き文句ね 」
一体何処でそんな事を学んでくるのか
不思議で笑いが漏れそうになる。
本来此処はそういう場であるべきだ。
単に私がズレている。
「 Shall we dance ? 」
どこから出てきたか分からない
まるで手品の様に一輪の花を此方へ向けてきた。
「 …リナリア 」
花言葉は
“ この恋に気付いて ”
「 意外と女々しいのね 」
「 こういうのもお好きかと思って。 」
何だかずっと相手の方が1枚上手の様な気がして嫌になる。
当たり、と言うように
花を奪い取る
「 off course . 」
差し出す手を取り舞台の真ん中へ立ち
音に合わせて足を動かす。
慣れない動きに千鳥足みたくなり、恥を覚える。
踊りの決まりを覚えるのに少し苦労したが
暫くしてコツを掴んだ。
「 人殺しより
こちらの方が楽しいでしょう。 」
男の突然過ぎる発言に 一瞬足が止まった。
何故知っている
どうしてバレた
仮面有無以前に
世間に私の顔などバレていない。
知っているのは同職くらい。
この男も、又 __ 。
そんな事を確認する為に
相手の仮面に触れる。
恐らくこれが間違いだった。
この時点で逃げていれば
私の平穏は壊されずに済んだのかも知れない。
仮面の中にいたのは、今夜のターゲット
この国のプリンスだった。
「 …私のディナーになってもらう予定だったのに 」
「 食べられてしまうのですか 」
はは、と笑い乍そんな巫山戯たことを言う。
「 もっと良い使い道がありそうね 」
これはその場しのぎの言葉だったのか
それとも本音か。
踊り続け乍話を続ける。
「 どうして分かったの? 」
そこらの素人じゃ私が裏の人間なんてことも見抜けない。
なのにこの王子には
私の裏表どころか、殺し屋だということもバレてしまった。
それがどうしても腑に落ちない。
「 私はこの国の平和を保つ為の人間なんでね 」
それもそうか
と簡単に頷いた。
今迄に無い感覚が一気に襲ってきたせいか
簡単なことも考えられなくなっていた。
「 だが、それにも飽きてしまいましてね 」
そう言って王子は、心底つまらなさそうな顔をした。
国を守る立場である人間が
そんなことを言っていいのだろうか。
「 なので一緒に逃げませんか 」
先程とは真逆で、次は自信か何かに満ち溢れた顔をした。
呆れてため息が出る。
こんな馬鹿なことを言っている暇があるのなら昼寝だってできてしまう。
今直ぐに手を振り払おうと思い
胸ぐらを掴み突き飛ばそうとすると
此奴はそれをYesととったのか
私の手首を握りしめ出口へと引っ張った。
これは危険だ。今すぐに殺さなきゃ。
分かっているのに体は従わず
只彼に引っ張られるのみ。
脳は赤信号を出している。
だがどうだ、私の本能は。
此奴について行きたいと思っている。
日常が壊されることを楽しみだと思ってしまっている。
ぐんぐんと速くなっていく世界と王子が
とても輝いて見えてしまった。
「 崩れた仮面、踊り狂って。 」
fin .
コメント
1件
ルビ多めです🖐🏻 終わり方適当なのは大目に見て‼️