テラーノベル
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「tt!」
シンとする家の中、慌てて脱いだ靴が転がるのもそのままに、短い廊下をまっすぐリビングへ向かう。
ttはそこにいた。
開け放った窓の下に座り込んで驚いたようにこちらを見ている。
目から大粒の涙を落としながら、ttは眼帯を握りしめていた。
「…tt…」
「ぁ…jp、、おかえり。早かったな。 どや?このままリリースまでいけそう?」
ttは前髪を分けるフリをしながら目元を拭うと笑って見せた。
眼帯をつける仕草とは対照的にその手つきは慣れきってなくて、感情の揺らぎを痛いほど感じる。
jpはリュックも下ろさず、ttに駆け寄り抱き締めた。
「ごめん…ごめんtt…俺がバカだった…」
「なんや、どうした」
「どこにもいかないで…」
「行かへんよ。ちょっと外眺めてただけやで」
窓の外は飛び込みたくなるくらい澄み切った午後の青空に満たされている。
でもttは高い所が苦手だから窓には近寄らなかったのに。
そもそもこの恐怖心も、幼少期の体験からだったんだ。
今更、少しずつttのことがわかっていく。
知ってるつもりだったのに、わからなくなっていく。
「…お願い、本当の事言って。 俺だけには思いを隠さないで。俺、ttの事が本当に大事なんだよ…ひとりで泣いてほしくないんだよ」
jpの掠れた声には心を搔き乱されたような憂いがこもっていて、無理やり引き上げたttの口角は少しずつ元に戻って行った。
「本当の事…言ってええん?俺のこと、嫌いにならへん?」
「…ならないよ、なるわけない…。 ttを心から愛してるんだから…」
そう答えたのに間を置いて、ttはjpの背にじわじわと爪を立てだした。
シャツ越しに感じるttの爪から弱い電気のような、チリ、とした痛みが走る。
jpが少し目を細めたと同時に、ttは喉の奥から絞り出したような、喘ぐような声を出した。
「…綺麗事言うなよ」
「…ぇ」
「お前も、お前も俺の大事なもん奪ったんやぞ。 心も体も、krptも、人生も…!」
「それでも色んなこと乗り越えてやっと幸せになれたと思ったのに母親に死ねって、無駄やったって言われたんだ!俺の気持ちわかるか?なあjp…!お前は今度は嘘つくんか!?泣かせないって言ったの誰や!!俺をまた突き放すんやろ!?」
ttの言っていることは事実で、でも根拠がないものも混ざっていて、脈絡がなかった。
どこにぶつけていいのかわからない喪失と寂寥を表すように、 ttは怒りとも悲しみともつかない声色で、ぼろぼろと涙をこぼしながら何度もjpの背を叩いた。
ttの涙で濡れてくる肩と緩い振動。
目も唇も固く閉じたまま受け入れ、更に強く抱きしめた。
「…」ギュウ、、ッ
「…でも、、、でもな、お前は絶対俺を追いかけてくるやろ…」
「…うん」
「…お前がいるのに、いろんなことが呪いみたいに染み付いてるんだ。こわくて、お前にぶつけてしまった。情けないな俺。ほんま最悪や。jpごめんな、ほんまごめん…。…何もかもわからんくなった。いっそ消えてしまいたい…」
小さく泣き出した小さな身体。
tt、そうだよね、こわいよね。
『あの頃』はこわいもん、なかったもんね。
「…ごめんjp…」
「大丈夫、ttが言いたいこと、伝わってるから。 もっと聞かせて」
ttは体を離すと、またボロボロと泣きながらjpを見上げた。
「……jぁp、たすけて…」
俺は、苦しい事があれば逃げ出して、そのくせいつだってttが迎えに来るのを待っていた。
次は俺が、迎えに来たよ。
こんなどしゃぶりの日も、小さな傘を持って。
「…tt、二人で幸せになろう。みんな未来しか変えられないって思ってる。俺もそうだった。でもttが教えてくれたんだよ。未来が過去を変えるんだ。ttがいるから俺は弱さを受け入れる事ができた。無駄なんて言われた過去も、幸せになって上書きするんだ」
「…そしていつか答え合わせしよう。生まれてきて良かったって、絶対、言えるから、、」
「jぁp…」
俺をうつさない左目に優しくキスをする。
ttの手からポトリと眼帯が落ちた。
悲しみを隠し、『あの頃』に縋るように身につけてきた眼帯はしわくちゃになっている。
…もうこれは必要ないよ。
俺が、俺自身がttの眼帯。
傷を隠し、尽きることない愛情で上書きしてあげる。
「tt…今までひとりで泣かせてごめん。見守るだけだった。…俺も泣きたい。一緒に泣いて、二人で悲しみも過去も半分こしよ…」
「jぁp…ごめん、ごめん…」
「ありがとう…」
二人で声を出して泣いた。
涙で体が溶けてしまうまで。
それでも良いと思った。
二人で溶けて混ざり合って、そのまま消えても、ttとなら。
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涙が