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み お .
最初は、単なる暇つぶしのつもりだった。
クラスメイトたちが教室の片隅で囁いていた
「男のくせに女より可愛い一年生がいる」という噂話。
それを耳にしたとき
俺の胸に湧いたのは「そんな殊勝な珠が俺の手にかかればどれほど簡単に靡くのか」という
酷く安易で傲慢な好奇心だけだった。
けれど、実際に近づいてみれば、その大人しそうな外見とは裏腹に
宇佐美透という人間にはどこか奇妙に一本芯の通ったところがあった。
それが、これまでの退屈な女たちに囲まれていた俺には、どうしようもなく新鮮に映ったのだ。
「ほら見ろよあいつ。また周りキョロキョロ見渡してる」
下校中の、夕暮れの淡い光が差し込む電車内。
吊り革に掴まりながら、俺はわざと宇佐美の耳に届くような声で意地悪く囁いた。
案の定、宇佐美はびくりと肩を跳ね上げると、すぐに形の良い頭を丸めるようにして俯いてしまう。
その華奢な肩が、周囲の視線を恐れるように小刻みに震えるのを見るたび
俺の胸の奥は歪んだ満足感と加虐欲で満たされていった。
「お前、よく飽きないな。ぶっちゃけ、あいつのどこがそんなにおもろいの?」
隣でスマホを弄っていた親友が、心底不思議そうに呆れた顔で訊ねてくる。
「そりゃ、あんなに俺に懐いて従順なんだからさ。手放すにはまだ早いっしょ」
口元に薄い笑みを浮かべながら、俺は心の中でその言葉をなぞる。
宇佐美を言葉の刃で追い詰め
その困り果てた泣き出しそうな顔を引き出す瞬間に脳内に走る快感は
他の何物にも代え難い至高の娯楽だと思い込んでいた。
◆◇◆◇
ある週末
部活の居残り練習の帰りに
俺は偶然見つけた校舎の裏手にある寂れた非常階段の踊り場へと宇佐美を連れ出した。
「ここ、普段は誰も来ない穴場だから。人目が気になるなら丁度いいでしょ」
俺の言葉に、宇佐美はまだ半信半疑といった様子で大きな瞳を瞬かせていたが
それでも俺が誘ってくれたということ自体が嬉しいらしく
心許なさそうに、一生懸命に後ろをついてきた。
西日に照らされた二人きりの静謐な空間。
遮るもののない距離で、彼の無防備な素直さが、ぽつり、ぽつりと溢れ出す。
「……一ノ瀬先輩って、いつも僕のことからかって、意地悪ばかりしますけど…本当は、僕のことどう思ってるんですか?」
夕暮れの風が宇佐美の黒髪を揺らす。
見上げてくる瞳があまりにも真っ直ぐで、俺は一瞬、言葉に詰まった。
「うーん? どうって……普通に可愛いなとは思ってるけど?」
いつも通り、その場を煙に巻くための適当な返答のつもりだった。
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