テラーノベル
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放課後の教室。
窓の外はもう少し暗くなり始めていて、教室の中はやけに静かだった。
「元貴、まだ帰らないの?」
「…うん、もうちょっとだけ」
ノートに視線を落としたまま答える。
本当は、全然集中なんてできてない。
ただ、若井が近くにいるだけで、妙に落ち着かない 。
「無理すんなよ」
そう言って、隣の席に腰を下ろす気配。
距離が近い。
それだけで、少しだけ呼吸が浅くなる。
「…してない」
短く返すと、ふっと小さく笑う声がした。
「嘘つけ」
軽い調子。
いつものやり取り。
の、はずだった。
「ほら」
次の言葉は、あまりにも自然で。
何の悪意もなくて。
「こっち見ろよ」
その一言で、世界が止まった。
「…っ」
心臓が、嫌な音を立てる。
今の、言い方。
似てる。
すごく、似てる。
「元貴?」
名前を呼ばれる。
でも、もううまく反応できない。
頭の中に、別の声が重なる。
―「来い、元貴」
違う。
違うのに。
「おい、聞いてるか?」
少しだけ強めの声。
それだけで、体がびくっと反応する。
「…やだ」
気づいたら、声が出ていた。
「え?」
「やめて…」
ノートを持つ手が震える。
視界が滲む。
「元貴?どうした」
椅子がきしむ音。
若井が立ち上がる気配。
それだけで、呼吸が一気に乱れる。
「来ないで!」
思ったより大きな声が出た。
教室に響いて、自分でもびっくりする。
「…っ」
静まり返る空気。
若井の動きが止まる。
「…ごめん」
一瞬の沈黙のあと、戸惑った声。
でも、元貴にはもう聞こえてなかった。
「やだ…やだっ、」
頭を抱えて、机に伏せる。
13
耳を塞いでも、あの声が消えない。
「来い」
「動け」
「従え」
違う。
違う違う違う。
「元貴」
優しく呼ばれる。
でもそれすらも、全部同じに聞こえる。
「触らないで……っ」
かすれた声で言う。
「お願いだから…」
涙が止まらない。
怖い。
何が現実で、何が記憶なのか分からなくなる。
「……わかった」
少し離れた場所から、低い声。
さっきよりも、ずっとゆっくり。
「もう近づかない」
その一言に、ほんの少しだけ呼吸が戻る。
「…元貴」
名前を呼ばれる。
今度は、さっきよりずっと慎重に。
「俺、なんかした?」
その声は、本当にわからないって感じで。
それが逆に、胸に刺さる。
「っ、」
答えられない。
言ったら、全部壊れそうで。
でも、言わなかったら、。
「…さっきの」
やっと、声を絞り出す。
「言い方っ、」
「え?」
「……似てた」
そこまで言って、言葉が詰まる。
「…昔のやつと」
教室の空気が、ぴたりと止まる。
「……っ」
若井が息を呑む気配。
「ごめん、」
すぐに出てきた言葉。
反射みたいに。
「そんなつもりじゃ、」
「わかってる」
被せるように言う。
わかってる。
わかってるけど。
「でもっ…むり、」
声が震える。
「体が、勝手に…」
思い出す。
さっきの一瞬。
反応しかけた自分。
「…さいあく」
ぽつりとこぼれる。
「また…」
同じことになりかけた。
それが何より嫌だった。
「……元貴」
少し間を置いて、若井が口を開く。
今度は、言葉を選ぶみたいにゆっくり。
「俺さ」
静かな声。
「命令みたいな言い方、もうしない」
「……っ」
顔を上げる。
涙で滲んだ視界の向こう。
若井は少しだけ困った顔で、それでもまっすぐ見ていた。
「絶対しない」
その言い方は、さっきまでと全然違っていた。
強制じゃなくて、ただの意思。
「……ほんとに?」
思わず、聞いてしまう。
「うん」
迷いのない声。
「元貴が嫌なら、やらない」
胸が、ぎゅっと痛む。
優しい。
優しいのに。
「……ずるい」
また涙がこぼれる。
「そういうの…」
拒絶できなくなるから。
「ほんと、やめてよ……」
ぐしゃぐしゃな声で言う。
でも今度は――
さっきみたいな怖さじゃなかった。
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コメント
3件
わ ~ 最高すぎるよ 😭😭😭😭😭 大森元貴さん の 恐怖 で 怖いって 感じ 文字 に 表す の 上手すぎて , 見てて 楽しいよ ~ 😽🩷 続き も たのしみ ♡♡♡