めっちゃくちゃ女慣れしてて女侍らせて遊びまくってるいつ刺されてもおかしくない様な男が歳上の男にガチ恋して今まで経験した事ない感情に振り回されまくって結果めちゃくちゃ奥手になっちゃうの良いですよね。
というかもうこれどう考えてもutemだよね。
って事でutemです。
では、どうぞ……
utem【らしくない】
書類から逃げ出して駆け込んだ喫煙室の中、大分オイルの減ったライターで咥えた煙草に火をつけて、僕にしては珍しく窓の外の月を見上げ物思いにふける。
しばらくそうしていれば、ふと数日前に言われた事を思い出した。
『お前らしくないなぁ、大先生』
ムダに顔がいい水色の相棒にかけられた言葉
自分でも本当にその通りだと思う。
僕と言えば女好きで女たらし、正真正銘のクズ、48股男
非常に不名誉な称号だがどれも間違っては無いし今更訂正する気もない。
大切なのは顔と乳のデカさと従順さ、それ以外は正直どうでもいい。
ヤロウなんか以ての外、眼中にも無かった。
そう
”無かった”のに……
大して広くもない喫煙室の中で有毒な気体を肺に送り込んでは生を感じる。
目をつぶったままほっぽり出した書類の後処理の事を考えていると、キィ…と喫煙室の扉が開く音がする。
目を開ければ、満ちた2つの月と亜麻色の艶やかな生糸が視界に入り、思わずハッと息を飲んだ。
「こんばんは、大先生。またサボりですか?」
「失礼やな〜エーミールゥ……休憩や休憩!」
「おや、そうでしたか。ちなみにトントンさんそろそろ四徹目に入りますよ。」
「ひぇっ……」
恐ろしい忠告を受けたが残念ながらまだこの真っ黒な肺と脳はニコチンを求めている。
それに何より、もう少しだけこの月明かりに溶け消えてしまいそうな男を眺めていたいのだ。
ふと己の思考を復唱すると、あまりにも自分のアイデンティティが消え失せたキザな台詞に思わず嘲笑を零す。
これじゃまるで恋に焦がれる思春期男児の様じゃないか。
ふぅ…と、紫煙と共に思考を吐き出す。
チラリと隣を見れば月光に照らされたエーミールがゆったりとした動きで煙草をふかしていた。
嗚呼…クソ……この歳になってこんな恋をするだなんて思ってもいなかった。
そもそもちゃんと誰かを好きになって恋をするのなんて、それこそ10代の頃が最後だったんじゃなかろうか。
そのせいですっかり忘れていた。
恋は酷く苦しくて、痛くて…それでも簡単には手放せない程に輝いて見えるのだ。
(まるで酒や煙草みたいやなぁ……)
「……大先生?」
「………ぁ…」
俺の頬を、白くて細いペンだこの出来た指が優しく撫でた。
「大丈夫?ぼーっとしてましたけど」
「っあ、あー…うん!大丈夫大丈夫」
「そう?ならええですけど…」
離れて行くその手を掴もうとして、やっぱりやめた。
エーミールは優しい。特に信頼した仲間に対しては。
だからもしこの気持ちを伝えて、例えこの想いが受け入れられなかったとしても、彼はきっと申し訳なさそうな顔をして謝るのだろう。
だから、だからこそ拒否されるのが…否定されてしまうのが怖いのだ。
ぐしゃり…とフィルタースレスレになった煙草を灰皿に押し付け、席を立った。
「…そろそろ戻るわぁ、エミさんもあんま仕事ばっかし過ぎてるとモテんくなるで〜。」
「何その理論!?……大先生はちゃんと仕事片付けてくださいね。トントンさん止めるの大抵私なんですよ?」
「トンちエミさんの紅茶好きやもんな〜」
自分で言った言葉に少しモヤつく。僕はどうやら本命に対しては非常にめんどくさい性格らしい。
「あぁ、そうだ。」
「?」
「じゃあ、後で大先生のお部屋お邪魔しますね。最近大先生が好きそうな茶葉見つけたんですよ。せっかくなので試飲してみてくれませんか?」
「……ま…じで?」
「ええ、勿論!…どうです?少しはやる気出そうですか?」
「…おん、めっちゃやる気出て来そう」
「それは良かった!」
喫煙室を出て普段なら長ったらしく感じる廊下を軽い足取りで進んで行く。
はて、自分はこんなに単純な人間だったろうか?
好きな人が自分の部屋に来てくれる。好きな人が自分の為にお茶を入れてくれる。
それだけで自然と口角が上がって、目がきゅうと細まる。鼻歌でも歌いたい気分だ。
嗚呼、本当に
「らしくないなぁ、僕」
そう呟いた声がやけに弾んでいたのは、きっと気の所為じゃ無いんだろう。
やっぱこの2人絡ませると喫煙室と煙草は絶対書いちゃいますねぇ……
イメージが強過ぎるよね。
それでは、また次の作品で……
コメント
4件
初コメ失礼します! 白猫ヤマトさんの書くutem大好きなんですよねぇ〜! ut先生のいつもと違う奥手な感じが…! 今回もとっっても良い作品をありがとうございました!