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ー数分後。
後片付けを終えたライムと母親が、テーブルを挟みお互いに向き合う形で椅子に座った。
「それじゃ、街であった事を話すわ。」
「うん。」
『・・・・・。』
そして母親は街であった事を話し始めた。
いつものように夕飯の買い物を済ませて家へと帰る途中、街の住人達が何やらざわざわと騒いでおり、気になった母親はそちらへと向かいそこには
、体の大きい魔法警察の男と茶色の紙袋とシュークリームを持った特徴的なキノコ頭の少年がいた。
魔法警察の男が何やら一方的にまくしたて、キノコ頭の少年はそれに冷静に応えていた。
それをハラハラしながら見ていた母親はある事に気づいた。
(えっあの子、顔にアザが無い。ライムと同じ。)
そう、キノコ頭の少年の顔には魔力量を示すアザがどこにも無かったのである。
母親が動揺している間も男と少年の攻防(?)は続き、そこにさらに男の上司と思われる長身の男が現れた。
2対1、どう見ても少年の方が不利だ。
が、肝心の少年はというと全く動じず手にしているシュークリームをもっ、もっ、もっ、もっ、と真顔で食べていた。
(・・・・何かあの子すごいわね。ってそんな事より助けに行かないと。)
頭を軽く振って、少年の下へと足を一歩踏み出そうとしたその時、
「うちの息子がすみませんでしたぁ!!」
「⁉︎」
そう叫びながら、父親と思われる年配の男性が少年を抱えて猛ダッシュで街中を駆け抜けて行き、そのあとを魔法警察の男達が追って行った。
「という訳なの。その親子があの後どうなったのか心配で。」
「・・・・・。」
『・・・・・。』
ライムとジンは他にも魔法不全者がいたのかとか、その少年と父親すごいなとか、下手したら母さんも危なかったのではないかとか、色んな思いがぐちゃぐちゃに混ざり合い、どこから突っ込んでいいのか分からなかった。
だがこれだけは言わなければと口を開いた。
「母さん。」
「何、ライム?」
「あまり無茶な事しようとしないで。」
「!」
「母さんが僕と同じ魔法不全者のその子を放って置けなくて助けようとしたのは分かるけど。でも、でももしそれで母さんまでいなくなったら、僕は、僕達は。」
『ライム。』
「ライム。」
「・・・・!」
ライムの言葉は母親が抱きしめて来た事によって遮られた。
「ごめんね。もう無茶な真似はしないわ。」
「うん。」
母親のその言葉聞きライムはホッとした。
「ライム。」
「何?」
「今の話を聞いて貴方は家から出たくなくなった?試験を受けたくなくなった?」
その問いにライムは首を横に振った後こう返した。
「ううん。むしろ・・・・その逆。」
「逆?」
「うん。何も悪い事をしていないのに追われるのも、隠れて暮らさなきゃいけないのもおかしいと思うから。だからそれを変えるために、母さんが安心して暮らせるように、僕は試験を受けて合格してイーストン魔法学校に入って神覚者を目指すよ。」
「そう。貴方がそこまで決めたのなら、母さん応援するわ。」
「うん。ありがとう、母さん。」
ライムの決意を聞いた母親はギュッと抱き締める腕に力を込め、ライムもまた母親の背中に腕を回してギュッと抱き締め返し、 そしてその様子をジンが無言でブレスレットから見守っていた。
ーそして試験当日。
「忘れ物はない?」
「うん大丈夫。・・・・行こうジン。」
『ああ。』
ライムがジンに声をかけて目を閉じる。
すると、ブレスレットが光りライムの母親譲りの白い髪がどんどん黒く染まっていく。
そして光りが収まり目を開けたライムの目の色は、髪と同じ黒に染まっていた。
「ジン。」
「何?母さん。」
ライムではなく『ジン』と呼ばれた少年が返事をする。
髪・目に加えて声も纏う雰囲気も変わっていた。
「ライムをお願いね。」
「ああ。」
「いってらっしゃい。」
「・・・いってきます。」
母親の言葉に頷き、ジンは背中を向けてイーストン魔法学校試験会場へと向かうのだった。