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ショッピングモール内にサイレン音が響き渡った。
「ただいま、3階で火災サイレンサーが作動致しました。お客様は1階フロア出口から外に出て下さい。繰り返しますー。」
サイレン音と共にフロアにはアナウンスが流れた。
店内で会計を済ませた三郎は、いち早く四郎達と合流しようとしたその時だった。
カチャッ。
三郎の背中にカチャッと音がなる何かが当たった。
だが、三郎は”ソレ”が何かを知っている。
三郎の顔色がスッと変わった。
人混みの中をあえて選んだ相手は誰なのか。
それは同類の人間だと言う事を瞬時に悟った。
「お兄さーん。お連れさんと合流するのはちょっと待って貰えますかねー。」
男は馴々(なれなれ)しく三郎に話し掛けた。
三郎は素早くポケットに仕込んで置いたナイフを後ろにいる男の太ももに突き刺さした。
だが、男は素早く三郎のナイフ捌きを避け後ろに下がった。
「ただの馬鹿が喧嘩売って来た訳じゃなさそうだね。」
そう言って三郎は後ろを振り返った。
そこにいたのは黒髪のマッシュヘアーをした男だった。
「やっぱ、お兄さん強そうだね。」
「へぇ、まぐれで避けた?それとも計算して避けた?」
「んー。どっちもかな。」
三郎はこの時、この男は同業者と悟った。
動きや、反射神経を見れば武術を携わっているのかが分かる。
この男は気配や足音を立てずに三郎に近付いた。
足音立てずに歩くのは殺し屋としてまず、最初に叩き込れる。
足音を立てれば、ターゲットに勘付かれてしまうからだ。
「同業者が何の用?」
三郎がそう言うと、男はナイフを構えた。
「やっぱり分かった?Jewelry Pupilを持つ女の子を連れて来いって命令なんだよねー。あ、あと、一緒にいる男も殺せって。」
男の言葉を聞いた三郎から笑顔が消えた。
「一緒にいるんでしょ?どこにいるか教えー。」
グサッ。
「へ?」
男の太ももにナイフが突き刺さっていた。
一瞬の出来事だった為、男は理解出来ていなかった。
三郎が足音や気配すら感じさせる前、男の懐に近付き男が持っていたナイフを奪い取り太ももに刺したのだった。
「消すぞお前。」
「っ!!ははは!!やっぱりアンタにして良かったよ!!」
プシュッ。
ビュン!!
男は笑いながら太ももに刺さったナイフを抜き、三郎に向かって突き刺そうとした。
一方、四郎達がいるフロアはと言うと。
ドタドタドタドタドタドタ!!
「早く逃げよ!!」
「火事だって!!早く、ここから出ないと!!!」
「ちょっ、退けよ!!!」
人の波で溢れ返っていた。
大勢の人達が一斉に1階に向かって走り出した所為で、混乱が起き始めていたのだった。
四郎は物陰に隠れ、七海に連絡を入れていた。
「もしもし、俺だ。ショッピングモールで火災が起きた。もしかしたら他の殺し屋の仕業かもしんねぇ。三郎とは合流出来ていない。」
「もしもし、モモちゃんと四郎は無事そうだね。四郎の読みの通りだよ。実際にショッピングモールの火災センサーを破壊し混乱を起こしたみたい。」
七海の言葉を聞いた四郎は、周囲を見渡した。
「何人ぐらい殺し屋がいるか分かるか。」
「ちょっと待って。」
そう言って、スマホから七海がパソコンのキーボードを叩く音が聞こえて来た。
「お待たせ。中に2人と、外に1人スナイパーがいる。」
「スナイパーか…。厄介だな。」
「任務が終わった五郎が向かってる途中。しばらくは四郎が中にいる1人を相手するしかないね。窓には絶対近付かないで。」
「了解。五郎が着いたら連絡入れてくれ。」
「了解。」
通話を切った後、四郎はスマホをポケットにしまった。
「四郎…。」
モモが不安そうな顔をして四郎を見つめた。
「シッ。」
四郎は短い言葉を放った後もう一度、周囲を見渡した。
CASE 四郎
人の群れの所為で、どこにいるのか分からねぇ…。
こんな一般人の中で銃をぶっ放せねぇ…。
この中からどうやって探せば良いんだよ。
「四郎…。」
「何だよ。」
「あの人…、モモと同じ目。」
モモはそう言って、指を刺した。
指先の方向にいたのは、包帯やガーゼだらけのセーラ服着た女子高生だった。
モモと同じ…って。
「Jewelry Pupilの事か?」
「うん。あの人、オレンジ色の目。」
Jewelry Pupil 同士の居場所が分かるのか?
「見つけた。」
女子高生はこちらを見て何かを呟いた。
その瞬間、素早い速さで人の波を掻き分け始めた。
「マジかよ!?」
ここでおっ始める気か!?
俺はモモを抱き抱え、近くにあったフードコートに逃げ込んだ。
フードコートには人はおらず、俺は素早くリュックの中からトカレフTT-33を取り出した。
モモをテーブルの下に隠し、トカレフTT-33にサイレンサーを装着させた。
「四郎。」
「黙ってろ。」
俺はモモの口を押さえた。
「そこにいるのは分かってるんですよ。」
フードコート内に女子高生の声が響いた。
足音がしない…。
もしかして七海が言ってた殺し屋は、この女子高生の事か。
ナイフを何本か仕込んだ後、俺は物陰からトカレフTT-33を構え銃弾を放った。
パシュッ。
銃弾が真っ直ぐ女子高生の元に飛んで行った。
キィィィンッ!!
銃弾が弾かれた?
女子高生の手には日本刀が握られていた。
まさか、日本刀で銃弾を弾いたのか…?
コイツやっぱり同業者か。
何発か銃弾を撃ち込んだが、女子高生には1個も当たらなかった。
銃弾が女子高生の前で止まり、床に落ちた。
「銃弾が止まった…?」
どう言う事だ?
「退け。」
女子高生がそう言うと、俺の姿を隠していたテーブルや家具が弾き飛んだ。
バコンッ!!
ガチャーンッ!!!
は、はぁ!?
ど、ど、どうなってんだ?!
俺の思考が追い付いていなかった。
何故なら、目の前で起きている光景は初めて見るからだ。
誰も触れていないテーブルや家具が弾き飛ぶ姿を見た事がない。
女子高生が俺に向かって日本刀を振り下ろして来た。
俺は近くに転がっていた椅子を持ち、振り下ろされた日本刀を受け止めた。
キィィィンッ!!!
「邪魔。」
女子高生がそう言うと、持っていた椅子が粉々に砕けた。
グシャッ!!
「ッチ。」
俺は舌打ちをした後、素早くトカレフTT-33を構え銃弾を放った。
だが、その銃弾も女子高生の前で動きを止めた。
「何なんだよ、お前。」
ポケットに仕込んでいたナイフを数本取り出し、女子高生に向かって投げ飛ばした。
ビュンッ!!
これも当たらねーとかないよな…。
キンキンキンッ!!
日本刀を使って器用にナイフを弾き、俺の右腕を斬った。
ブシャッ!!
斬られた右腕から血が噴き出した。
「四郎!!!」
俺の血を見たモモが、テーブルの下から出て来てしまった。
女子高生はモモの姿を見つけると、モモがいる方向に体を向けた。
やっぱり、狙いはモモか。
俺はトカレフTT-33を構え銃弾を放った。
プシュッ、プシュッ!!
俺の放った銃弾が女子高生の肩に当たった。
当たった?
さっきは当たりもしなかったのに、どう言う事だ?
「油断してしまったようですね。」
女子高生はそう言って、俺の方に振り返った。
ポタッ…。
ポタポタ…。
俺の右腕から血がポタポタと垂れ落ちた。
傷を負ったのは何年振りだ?
女子高生の鼻から血が出ていた。
鼻血…?
もしかして、Jewelry Words の能力か?
「お前、Jewelry Wordsを使って弾やテーブルを弾き飛ばしたのか。」
「まぁ、バレちゃいますよね。鼻血出ちゃったし。」
女子高生は鼻血を拭きながら言葉を放った。
やっぱり、Jewelry Words の能力か。
普通の殺し屋じゃない相手をするのは初めてだ。
どうやって、殺すか…。
普通の弾や攻撃は当たらない。
ましてや、物も当たらない。
三郎とも合流出来ないとなると、モモを三郎に預ける事も出来ない。
モモを星影の元に行けと指示するか?
いや、モモがここから素直に離れる筈がないな。
「四郎から離れろ!!」
モモが叫ぶと、女子高生の体が物凄い勢いで後ろに吹っ飛んだ。
ガチャーンッ!!!
「四郎!!」
モモが俺の元に駆け寄り抱き付いた。
ガバッ!!
モモが叫んだ瞬間、アイツの体が飛んで行った。
やっぱりJewelry Words の力…なのか?
モモのJewelry Words が効いたって事は、Jewelry Pupil 同士でも効くのか…?
「四郎、四郎!!血が、血が…っ。いっぱいっ…!!」
モモは俺の右腕を見て顔を青くした。
「大した怪我じゃない。」
「だ、だって!!こんなっ!!」
「慌てる事じゃねーよ。」
俺はモモを背中に隠しトカレフTT-33を構え直した。
「こんな小さい子がJewelry Words を使えるなんて大したものですね。」
女子高生はムクッと起き上がり、セーラー服に付いた埃を払っていた。
「どう言う意味だ。Jewelry Words を使いこなせてるって…?」
「Jewelry Words を使うと体にダメージを受けるんですよ。そんな小さい子が使ったら体には相当なダメージを受ける。」
「ダメージ?」
「Jewelry Words はけして、魔法みたいなモノじゃないって事。」
タッ!!
女子高生は日本刀を構え直し俺の元に走って来た。
俺はモモを後ろに突き飛ばし、近くにあった椅子を女子高生に向かって蹴り飛ばした。
キィィィンッ!!
飛んで来た椅子を一旦両断した後、俺に向かって再び刀を振り下ろした。
ビュンッ!!
俺は間一髪な所で刀の刃を避け、女子高生の脇腹に蹴りを入れた。
ゴンッ!!
「グッ!!」
脇腹を蹴らた女子高生は体勢を崩し床に倒れ込んだ。
ドサッ!!
殺れる。
そう思った俺は引き金を引こうとした瞬間。
パリーンッ!!
フードコート内の大きな窓が割れ、それと同時に左肩に衝撃が走った。
視界に入るのは赤い血飛沫。
誰のだ?
「四郎!!」
モモの声が遠く感じた。
ショッピングモール周辺の高層ビル屋上ー
四郎を撃った後、女はM16A2のライフルスコープから目を離した。
その女は、以前に三郎達を見ていたスナイパーの女だった。
「タイミングバッチリだったわね。佐助(さすけ)。」
佐助と言う名はあの女子高生の殺し屋Nameだ。
「伊助(いすけ)は、あの会場にいた男と殺り合ってるのよねー。」
伊助と言うのは、三郎と戦っている男の殺し屋Nameだ。
そして、この女の殺し屋Nameは喜助(きすけ)と言う名だ。
佐助が倒れ込んだ瞬間に、喜助が四郎を撃つと言う作戦だった。
運良く佐助が倒れた所為で四郎が喜助に撃たれてしまったのだった。
「さてと、あの男は死んだかー。」
パシュッ!!
喜助の頬に銃弾が掠った。
喜助はすぐさま、物陰に隠れ周囲を警戒した。
「嘘でしょ!?撃たれた?あたしが?どこから撃って来た?!」
喜助はどこにスナイパーがいるのか分からなかった為、状況を理解するのに時間が掛かった。
ショッピングモール周辺の高層ビル反対側
ARES MS700スナイパーライフルBKフルセットのライフルスコープから視線を外した。
喜助を撃ったスナイパーは五郎だった。
七海の連絡を受けた五郎は、急いでショッピングモール周辺の高層ビルの屋上に到着していた。
ARES MS700スナイパーライフルBKフルセットのライフルスコープで敵のスナイパーを見つけ引き金を引いたのだった。
「おい、七海。敵のスナイパーは撃ったが、殺せてねぇ。四郎は撃たれたのか?」
「5秒遅かったね。左肩を撃たれたみたい。」
「致命死なのか?」
「分からない。撃たれる前に右腕を斬られてた。」
「四郎が斬られた?!」
五郎にとって、四郎が傷を負う事自体が信じられなかった。
「んー、今回の敵がモモちゃんと同じJewelry Pupil なんだよね。」
「Jewelry Pupil!?」
「うん。それと、Jewelry Words の力なのか分からないけど、四郎の攻撃が全く効かない。」
「四郎の野郎、ヤバいんじゃないか?」
五郎の言葉を聞いた七海は言葉を詰まらせた。
七海が何も言わないと言う事は、かなりヤバイ状況と五郎は察した。
「七海。四郎の援護に回る。指示をしてくれ。」
「了解。今、いるビルからだと…。」
五郎はARES MS700スナイパーライフルBKフルセットを構え直した。
CASE 三郎
窓ガラスが割れる音と、モモちゃんの叫び声が聞こえた。
それと同時にインカムから七海の声が聞こえた。
「三郎!!四郎が撃たれた!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体が勝手に四郎の元に動いていた。
タタタタタタタッ!!!
「は、はぁ!?どこ行くんだよ?!逃げる気!?」
男の言葉なんが耳に入らなかった。
四郎が撃たれた?!
「四郎っ。」
フードコート内に入ると、血塗れの四郎の姿が目に入った。
窓ガラスが割れたのはスナイパーが撃って来たからか。
「四郎、四郎っ!!!」
血塗れの四郎に抱き付いてモモちゃんが泣きながら叫んでいた。
「退いてろ。」
四郎はモモちゃんを引き剥がし、トカレフTT-33を構え直した。
四郎、ボスの命令を守る気だ。
自分が死ぬかもしれないのに、ボスの命令通りモモちゃんには傷は一つもなかった。
モモちゃんが四郎の足を引っ張っているのは見て分かった。
守りながら戦うのはかなり難しい。
ボス。
俺は、モモちゃんよりも四郎が大切なんですよ。
だからモモちゃんよりも四郎を優先する。
四郎の方が大事に決まってるだろ?
ずっと、一緒にいたんだから。
俺は仕込んでいたナイフを女子高生に向かって投げ飛ばした。
ビュンッ!!
「止まれ。」
女子高生がそう言うと、ナイフが動きを止めた。
成る程、四郎が傷を負ったのかこれが原因か。
四郎が傷を負うなんてよっぽどの事だと思ったけど、これは…。
「三郎かっ、」
「ごめん、遅くなった。」
「来たならコイツと一緒に星影の所に。」
そう言って、四郎はモモちゃんを俺の方に押した。
「四郎っ?!」
モモちゃんは四郎の名前を呼びながら俺の腕の中に収まった。
「先に行け。」
「…。分かった。」
俺はモモちゃんを抱き上げ、四郎に背を向け走り出した。
「四郎っ、四郎!!退いてっ!!四郎の所に戻る!!」
モモちゃんは俺の胸を殴りながら叫んだ。
「うわっ!?Jewelry Pupil っ!?」
さっきの男がモモちゃんを見て叫んだ。
「伊助、Jewelry Pupil を捕まえて。」
女子高生が男の事を伊助と呼び、モモちゃんを捕まえるように指示をした。
「四郎がっ、四郎が死んじゃう!!」
うるさい。
「四郎っ!!何で、四郎を置いてくの!?」
うるさい、うるさい。
「君を守る為に四郎が残ったんだよ。」
「私を?」
「ボスがそう”命令”したからね。」
「命令って…。」
「死んでも守れって。俺は正直、理解出来ないよ。」
俺の言葉を聞いたモモちゃんは口を閉じた。
ボスの命令は絶対。
そう、体に染み込んでしまった。
気持ちとは裏腹に。
CASE 四郎
三郎が去るのを見送るとインカムが振動した。
「四郎、生きてる?」
「あぁ、何とか。三郎とモモが星影の所に向かった。」
「分かった。五郎が四郎の援護するから、何とかここから離脱して。」
「…了解。」
離脱するにしても、この女子高生をどうにかしないと…。
「ゴホッ!!」
そう思っていると、女子高生の口から血が吐かれた。
吐血?
この女、もしかして体が弱いのか?
だったら今のうちにこの女から距離を取る。
俺は女が咳き込んでるうちに、フードコート内を脱出した。
その瞬間、黒い煙と共に爆発音が聞こえてた。
「おいおいおい!!嘘だろ?!」
ドゴォォォーン!!
俺の体が黒い煙に包まれた。