日本の建国記念のお話
本当は当日に投稿したかったんですけど最近まで大事な発表の準備があったので余裕がありませんでした…ごめんね日本。
建国記念というのは国にとって誕生日と同じわけで、皆に祝われる日ですよね?ということで今回は日本愛されです
一部領土問題に関わる内容がございますがこれに政治的意図などはございません。その点をご理解ください
気持ちよく晴れた空を映す窓、化身たちが行き交うオフィス
そして、比較的静かな空間に響くキーボードの打鍵音と少しの話声
そんな、本当にいつも通りの光景を眺めつつ、日本な束の間のコーヒー休憩を楽しんでいた
はぁ…今日も平和だなぁ…僕の仕事量は平和じゃないけど
冗談のような現実を横目に、乾いた笑いを漏らす
そして、この職場ではもう一つの日常がある。”それ”はいつも突然やってくる
刹那、乱暴に開く扉の音
オフィス中に響く波が穏やかな空気をぶち壊した
「Japan〜!!!」
こんなことする人は一人しかいない
そう、アメリカだ
他の社員は、一瞬音の方向に振り向き、なんだいつものやつかと即座に仕事に戻っている
慣れというのはなんとも恐ろしい
「昨日ぶりだな!会いたかったぜ!」
出会い頭にかまされる、タックルまがいのハグ
公私関係なく繰り出されるこれを受け止めているせいで、貧弱な日本も体幹だけは無駄に強くなった
「はいはい。今日も元気ですね」
さて、今日は何しに来たんだろ、どうせろくなことじゃないだろうけど
そんな同盟相手に向けるには失礼な思考で、背後に来ていたアメリカの方を向いた
「なあJapan!手出してくれ!」
何やら企んでいる様子だ。サングラス越しでも輝く目が隠しきれていない
目的が分からないまま、適当に右手を後ろ手に差し出そうとする
しかし、アメリカはその手を日本の目の前でガッと強く掴んだ
「ちょっとだけじっとしといてな」
胸ポケットから取り出したマーカー
ご機嫌な鼻歌とともに、白い手の甲に黒のインクが乗る
すると、そこには『America』の文字が記されていた
「えっと…これは一体…」
「この間親父に言われたんだ、自分のものには名前書いとけって」
無邪気に笑う彼。対し、日本は苦笑いを浮かべた
どういう経緯で言われたのかだいたい予想はつくが、その言葉の意味は多分そういうことじゃないと思う
いやまあ確かにアメリカの犬なんて揶揄される僕は、実質彼の所有物なのかもしれないけども…
「だからって人の体に名前書かないでくださいよ」
水性か油性か分からないが、今ならまだ綺麗に落ちる
バッグに入ったアルコールティッシュを取りに行こうとする
しかし、依然掴まれたままの右手を引っ張られ、前のめりの体はアメリカの腕の中に逆戻りした
「おい、消すなよ意味が無くなるだろ!」
「嫌ですよ。作業中気になっちゃいますし、恥ずかしいです」
「じゃあ今日だけ!今日一日だけでいいから消すな!」
幻覚の垂れた犬耳が現れる懇願の顔
わかっててやってるのかと文句を言いたくなってしまう
日本はこの顔にとても弱いのだ
「はぁ…わかりました。今日だけですからね」
その言葉に顔を輝かせる
なんだかんだ僕も彼に甘いのかもしれない
日本の顔は幼子を見るように綻んでいた
「Thanks!約束、ちゃんと守れよ!」
念押しを添えて、それじゃ!とバタバタ帰っていく
嵐のような人だ。少しは大人しくできないもんなのかな…
疲れたらなんだかお腹が減ってきた
ちらりと腕時計を見やると、昼休憩まであと一時間というところまで来ていた
そういえば、ドイツさんとお昼を一緒に食べる約束をしてたんだった
たしか社長にも呼び出されてたんだよな…僕何かした?
いつでもいいよと言われているので、長話になってもいいように他の用事を済ませてから行こう
まずは昼ご飯から。スマホと財布だけ持ってオフィスを後にした
*****
これ、どうしたもんかなぁ…
意外と目立つ所有印の刻まれた右手を眺めながら廊下を歩く
前方不注意な日本は前から迫る大きな体にも気づかない
全意識を向けている手首を目の前まで来た誰かに掴まれた
「うわっ!?」
あまりに突然な事で体を止められず、慣性のままに体がぶつかる
「あっ、すみませ…」
優しく受け止めてくれたその人にお礼を言おうと顔を上げて、先程の不注意を悔いた
「ろ、ロシアさん…」
「よお日本。これ…なんだ」
凍てつく目線が手の甲に注がれる
ロシアさんにアメリカさん絡みの話はしたくないんだけど…言わないと離してくれなさそうだ。日本は観念した
「アメリカさんに書かれたんです。自分のものだからって」
その言葉に、より濃くなった負のオーラ
目付きも鋭くなっていて背筋が凍る
ほらやっぱり機嫌悪くなるじゃん…だから言いたくなかったのに
胸の内で一つ、溜息を吐く
影の落ちた目元から紫の光が鈍く輝いたかと思うと、彼は苛立ちを感じる無表情のまま呟いた
「そうか……なら、俺も書いていいよな」
掴んだ手首をぐっと上に引き上げて、体を壁に押し付ける
背中をぶつけた痛みに苦しむ間に、もう片方の手首も掴まれる
彼の大きな左手に納まった両手首
これにより、日本は完全に拘束されてしまった
「アイツと同じく日本の一部持ってるから、お前は俺のものだろ」
「ちょ、離して…」
体をよじってみてもビクともしない
押さえつけてなお抵抗意志をみせる日本
その様子を眺めていた彼の顔が、耳元まで近づいた
「字がブレる。じっとしてろ」
威圧的な態度と真反対の、優しく言い聞かせるような、心地よい低音
暖かな吐息に押されたそれは脳へするりと侵入し力を奪う
抵抗力を無くしたのをいいことに、首をさらけ出すような格好にさせられた
空いた右手には太文字用のペン
首筋を掠める筆先が擽ったくて声を我慢しているうちに、書き終わったのかキャップの閉まる音が聞こえた
「よし、できた」
ペンをしまって、文字の書かれた首へ太い指を這わせる
日本には見えていないが、首左側面に『Россия』と書かれている
さっきの不機嫌はどこへやら、彼はとても満足気だ
「なんでこんな変な所に…」
「ここならよく見えるだろ?」
先代によく似た不敵な笑みを浮かべるロシア
何かとアメリカと張り合っている国だ、所有や独占の意がある首に自身の名を刻んだことに勝ち誇っているのだろうが、日本はその意図に気づくことはなかった
「あの、終わったなら離して…」
「ロシア、何してるアル?」
彼の背後から向かってくる、廊下で出すには大きい、今1番聞きたくない声
この流れで、よりによってこの人が…最悪だ
「げっ、中国さん…」
「げっとは失礼アルヨ」
到底自分の助けになってくれなさそうな彼を見て、嫌悪を露わにする日本
だが、慣れた中国は怒ることも、気に止めることもしない
ただ、無様な格好してるネ〜と小馬鹿にしつつ、白く柔らかい頬を楽しそうにツンツン突いていた
くっそ、抵抗できない僕で遊びやがって
そんな彼らのやり取りを無言で眺めているロシア
何かを思いついたのか、両手首の拘束を解き、片腕で日本を腕ごと抱きしめた
「なあ中国、自分のものには名前を書くらしいぞ」
クイッと顎を持ち上げ、自分の名前が書かれた首元を見せつける
それを見た中国はへぇと妖しく微笑んだ
「それなら、我も書いておかないとだな」
ロシアからペンを受け取った中国が潰れた右頬に手を添える
嫌だと身を捩ったが強い力に抑え込まれてピクリとも動かない
その間に左頬に大きく『中国』の文字が刻まれた
「貴方は私の領土持ってないでしょう」
「何度言ったら分かる?アレだけじゃない。お前のものは全て我のものアル」
「いくら言われようと認めないですからね!!」
嫌な予感というのは当たってしまうもの
「面白そうなことしてんじゃん?」
どこからか沸いた、生意気な声
中国の背後から現れた、同じ背丈の彼にガシッと肩を掴まれた
「うわ、韓国さんまで…」
「そういうことなら僕も書かせてもらうよ」
流れるような動作で中国からペンを強奪する韓国
日本はせめてもの抵抗に、唯一動く目で彼を睨みつけた
「貴方のも私は認めてませんよ」
「勝手に言っとけ、アレは僕のだから」
中国の手をどかし、今度は反対側に顔を向けさせる
そして、真っさらな右頬に『한국』と走り書きでサインをした
「うん…いいね、まさに僕のものって感じ。他のやつの名前があるのが癪だけど」
まあアイツのが無いだけマシか
大きな独り言を呟いて、日本とのツーショットを撮る
しかし、やけに静かな中国がそのスマホを握る手を掴んで怒声をあげた
「ロシア!今は拘束してなくてよかっただろ!韓国にも書かれちゃったじゃないか!」
「…ああ、すまん。抱き心地が良くて離すのが惜しくなっちまった」
「ロシアさん…私の事抱き枕だと思ってます?」
「肯定したら俺の抱き枕になってくれるのか?」
「いやなりませんけど。朝起きたら潰されてそうで怖いですし」
「確かに、別の意味で抱き潰しちまう可能性は否定できないな」
依然離すつもりのなさそうに会話をするロシア
それに対し中国は湧き出る感情が抑えきれない様子で、日本を抱くロシアの腕を引っ張った
「いつまでくっついてるんだ!早く離れろ!」
「あはは、必死な中国ウケるw」
「お前も笑ってないで手伝え!」
珍しいものを見たと写真を撮る韓国と何故か日本を離せと躍起になる中国
場がカオスになり、ようやくロシアが腕を広げて日本を解放した
「じゃあな日本。アメカス共に存分に見せつけて来いよ」
「消したら許さないアルヨ!」
「証拠写真撮ったからね、消したら写真オフィス中にバラ撒くから」
去っていくロシアに続いてその場を後にする中国と韓国
残された日本はようやく訪れた平穏に胸を撫で下ろした
*****
はぁ…ようやく解放された
手洗い場の鏡の前でため息を吐く
あの後、すぐに北朝鮮によって空き部屋に連れ込まれ、「動いたらミサイルを本土に落とす」と脅されながら右頬に名を書かれた
あの人、僕のことを実験場だとでも思っているのだろうか
それだけ済ますとすぐに帰された
強引な行動の割に触れる手つきが優しかったのは気のせいだろうか
目の前に映る自分の姿を見る
顔の約半分を占める黒インクに、虚像がゲンナリとした様子を見せた
あの人たちデカデカと書きやがって嫌でも目に付くじゃないか
アメリカさんのだけならまだメモと言い訳できたけど…これじゃ言い逃れできないよ
右手へ視線を向けると同時に視界に入った文字盤
ゼロ付近にあった長針がいつの間にか10の辺りを指していた
やばい、もう昼休憩の時間だ
時間もないし…もういいや
まあドイツさんならこの格好でも許してくれるよね、いや…許してくれないと困る
そんなことよりも急がないと
焦りの早歩きで手洗い場を後にした
*****
正午の鐘がなり壁掛け時計の針が重なった瞬間、空いたドアから現れた日本
約束の時間から数秒遅れて、ようやくドイツの元へ到着した
「すいません遅くなりました」
「ああ日本…………どうしたんだそれ」
「まあ、色々あったんですよ」
やっぱり気になるよなコレ、気にするなって言う方が難しいけど
「こんな悪目立ちする奴の隣を歩くなんて嫌ですよね」
「俺は気にしないから大丈夫だ」
ほう…と考え込むドイツ
現在名のある国はどれも日本の領土の所有を主張している。北朝鮮だけは違うが…
つまりこれは自分のものだと名を書いて顕示しているのだろう
しかも日本からほのかにアルコールの香りがする
なんとも気に食わない、黒く渦巻く不快感で眉間にシワがよった
「なあ、俺も書いていいか?」
「ドイツさんまで…どうしちゃったんですか」
「俺は日本の領土こそ持っていないが、昔からの付き合いがあるし、お前を一心同体の相棒だと思っている。ならば日本は俺のものだと言っていいだろう?」
絶対的な自信を含んだ親譲りの瞳
なんだかついさっきも見たような気がする
「嬉しいですけど、無茶苦茶な理論ですね」
貴方らしくない、そういうと彼はニヤリと笑った
「俺だって感情的になることはあるさ」
動くなよ、と腕と手で首を固定される
まるで今から首に齧り付くかのような拘束。そんな事しなくても動かないのに
デスクから取り出したマーカーを口を使って開けさらさらと筆を動かす
ロシアとは反対側の首に『Deutschland』の名が入る
首を囲う文字の輪はまるで首輪のようだ
「よし、できた。もう動いていいぞ」
軽く触れた指が優しく首筋を撫でる
つい先程の出来事を呼び起こすその感覚に、思っていたことがポロッと零れてしまった
「やっぱり、なんか似てるよなぁ…」
雰囲気といい書く場所といい…ロシアさんと共通点が多い。でも、何となく怒られそうな気がしたので言わないでおこう
「ん、何か言ったか?」
「いやなんでもないです」
ならいいが…と指先を肩へと移動させる
この時のドイツは日本しか眼中に無かったため、近づいてきた気配に気づかなかった
日本の背後にかかるシルクハットの人影
伸びた両手は日本の腰へ回り、左手を掴んで引いて、影の主と対面させる
それはまるでダンスのエスコートだ
「楽しそうですね。そういう事でしたら、私も参加させていただきますよ」
日本を奪った紳士、イギリスは物柔らかな笑みを浮かべていた
「イギリスさんまで…」
「なんだ盗み聞きしてたのか」
「人聞きの悪いこと言わないでください。会話が聞こえてきただけです」
にしてはタイミングがよすぎる気がするが
しかし、証拠なしで検挙はできない
懐疑を心に抑え、イギリスの発言を許した
「ドイツの理屈に倣えば、開国からの付き合いがあり、事実上の日英同盟と言える協定を結んでいる、まさに一心同体の私のものですよね」
「共同開発もありますし、これからも長い付き合いをしていく私達は結婚したも同然。これ以上の所有の根拠はないでしょう」
たっぷりの余裕とその他大勢への嘲りを含んだ、朗らかな笑い声
勝った。そう確信した表情だ
「けっ、結婚!!?」
「待て、その共同開発はイタリアも参加しているだろう。複婚でもするつもりか?日本は不誠実な人間が嫌いなんだぞ」
「あら、”お友達”の二人を取られた妬みですか?私は日本さんとしか結婚するつもりは無いのでご安心ください」
モノクル越しの挑発の視線が険しいドイツの視線とぶつかりバチバチと眩しい火花を散らす
乗せられてしまったのか鋭い牙を剥き出しにして声を荒らげた
「どこに安心しろって言うんだ!日本は渡さないからな!」
「保護者は黙ってなさい。誰がなんと言おうと、日本さんはパートナーである私のものです」
失礼しますよ、と左手を持ち上げられる
手の甲に『United Kingdom』の名がさらさらと綴られた
逆さに綺麗な文字がかけるなんて器用なものだな、と変なところに感心する日本
満足気に微笑んだイギリスが、そこにキスをした
「では私はこれで。明日は私と一緒にランチに行きましょうね」
黒い眼差しを背に受けつつ颯爽と去っていくイギリス
痺れた空気が残る場には、やたら不機嫌なドイツと、何も分かっていない鈍感な日本が残された
「イギリスさんもあんな冗談言うんですね」
「本当、”悪い冗談”だな」
態度を一変させ落ち着いた彼
話を遮るように立ち上がって、日本の手を引いた
「もうあまり時間が無い。早く昼飯食べに行くぞ」
「そっ、そうですね…」
「…日本、あいつには気をつけろよ。イタリアにも後で言っておく」
「あ…はい…」
今日のドイツさん、やっぱりなんか違う。普段は冷静沈着なのに今日はやけに感情的だ
ストレスでも溜まってるのかな。後でお菓子でもあげよう
そんなことを思いながら、未だ手を離さないドイツとともに食堂へと向かうのだった
*****
お昼を食べ、ドイツと別れた日本
この後も、行く先々で他の国にも名前を書かれていく
どうやら話が広がるうちに”所有”の意であった名入れは”親交の証”となり、日本に好意的な国であればOKという条件になったようだ
顔や手は勿論、服で見えないところにも書かれている
書く場所がないからと人前で服をひん剥かれた時は羞恥で死ぬかと思った
おかげで、体が名前だらけで耳なし芳一のような、寄せ書きのような、奇妙な感じになっている
途中、アメリカに用事があったことを思い出し、朝来てもらった時に済ませれば良かったと後悔しつつ彼の部署に行ったものの本人は不在
こちらも急ぎの用事では無いので、先に社長室へ向かうことにした
*****
正面からは余白が消えた頃、ようやく社長室へ辿り着く
三回ノックをして返ってきた声
失礼します、と挨拶をしながら重々しく扉を開けた
視線の先には、高価そうな机で執務する白スーツの人物
神聖な雰囲気を醸す彼こそ、社長の国際連合である
空色の穏やかな目がこちらを向いて、僅かに見開いた
「日本、その顔は…」
「すみませんこんな姿で来てしまって」
まあ、そうなるよな
真面目だと思っていた部下が身体中に各国の名前を引っ提げて現れたらそんな反応をするのも当然だ
「失礼なのは承知ですが、気にしないでいただけると嬉しいです」
苦し紛れに微笑んでみる
消すなと言われてしまったためこのまま来たが…常識的に考えて、社長と会うのにこの姿はよろしくない
やっぱり怒られるかな。しかし彼は予想に反して、美しい顔をふわりと綻ばせた
「…ふふ、随分愛されているんだね。化身たちだけでも平和なことはいいことだ」
平和を愛する彼がみせる、深い慈愛の目
僅かに悲しみを感じたのは、果たして気のせいなのだろうか
「そういえば、先程アメリカが自慢していたな」
徐ろに椅子から立ち上がった彼
カツカツと革靴の小気味い音が静かな部屋に響く
「日本は俺のだから名前を書いてやった、と」
成程、だからこんな姿をすんなり受け入れたのか
軽い足音が、一人で納得する日本の背後でピタリと止まった
「なら、私にも書く権利があるよね」
バサッ、羽根の擦れる音とともに背中に出現させた大きな白い翼
外界から覆い隠すように日本を閉じこめたそれが二人だけの世界を創り出す
「君は国際連合の加盟国。私の元にいる国。ならば、君は私のものとも捉えられる」
「私は優しいからちゃんと承認を得てからにするよ」
心地良さを感じる、優しく深みのある声
どこか仄暗さを含んだそれがクスッと笑う
逃げられない、この檻からも、声からも
「日本。君に私の名を刻み、所有を主張することを認めてくれるかい?」
更に狭くなった純白の空間
はいと言うまでここから出さない、そんな意思が伝わってくる
……彼は、なぜこんなにも必死になっているのだろう
僕が貴方を拒む理由なんてないのに
「はい、いいですよ」
腹に回された腕に自身の手を添えて、にこりと振り返る
その笑顔に、日本を見つめる淀んだ青が晴れやかに澄み渡っていった
「……ありがとう」
ちょん、と指先で触れられた後頭部
唯一真っ白だった場所の中央部に『United Nations』の文字が現れた
「ふふ、よく似合ってるよ」
翼の拘束がゆっくりと緩んで上機嫌にパタパタと揺れる
それにより無事、日本は解放された
*****
特に重要でもなかった用事を終わらせ、部屋から出る
パタンと閉じる扉。瞬間、日本はとあることに気づいてしまった
あの人、ペン使ってなかったけど洗って落とせるよね?
後頭部を摩ってみるが、インクで書かれた部分のような突っかかりがなく、少し心配になる
そんな時、ふと鏡に映った自分の顔を見た
多様な言語で書かれた国の名前
思いのままに名を記す化身たちの楽しそうな表情が思い浮かぶ
“親交の証”か…一部は”侵攻の証”になっている気がするが…
先代たちが築き上げてきた他国からの信頼はいつしか好意となって自身へと還ってきている
自分がどれだけ信頼されているか、日本という国がどれだけ愛されているかが可視化されているようで、満更でも無いような、襟を正さなければと思うような気持ちになる
これからも日本の化身として頑張らなくては
鏡の中の自分と目を合わせて、よしっ!!と意気込んだ
*****
その後、自分のオフィスに戻る途中の道で、目的の星条旗を見つけた日本
「あっ、いた!アメリカさーん!」
手を振りながら元気に駆け寄る
すると、サングラスの隙間から碧い瞳がこちらを向いて、過剰に見開かれた
「おうJa……What happen!?」
「日本!どうしたんだその格好!?全身真っ黒じゃねえか!」
「ああ、これですか?貴方が始めたことでしょう。それを他の方にもやられただけですよ」
自分のやったことくらい覚えといてくださいよ
ボヤく日本を見つめるアメリカの瞳から光が消える
そして、騒がしい彼からは滅多に出てこない、静かで低い声がポツリと漏れた
「……なんでだよ」
「え?」
「日本は俺だけのもんだ!俺以外に書かせるんじゃねえ!」
駄々をこねる子供のように怒号をあげるアメリカ
なら最初から言っとけよと思ったのは胸にしまっておく
強い力で腕を掴まれ手洗い場に連れていかれた日本
俺の以外今すぐ全部消せとの命令で、頑張って洗ったものの、使われていたのはまさかの油性ペン
皮膚の皺に入り込み定着したインクは落とすことが出来ず、消えるまでの数日間アメリカのご機嫌取りをする羽目になったのであった
『日本右小説裏話』第2話に続きのようなものがあります
よければそちらも読んでいってくださいね
コメント
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うぉぉ……゛、ご馳走でした……、、国際機関×日本推しになりそう……
めためた好き、、、何食ったらこんな神の小説と発想が生まれるのだ、、、??? とても美味でした。ありがとうございます。
日本愛されダァァァァァ!スーパージジイおめでとう🎊最後の国連の件が最高に萌え萌えしました!