エイプリールフールに投稿していますが全く関係ない内容です。また、かっこいいナチスさんだけを見たい方はおまけを読まない方がいいかと思われます。
※ちなみに、語り部屋第4話でこの話のイラストを公開してますので良ければそちらもご覧下さい(宣伝)
⚠旧国あり
橙が藍に溶ける夕空の下
街灯が照らす道に小さな歌声が響く
ルンルンで向かう先はドイツさんのお家だ
それは真昼のこと。ドイツさんから「今日俺の家で飲まないか」と誘われたのだ
今日は仕事のない休日
どうせ家にいても一人で寂しかったし、なりより、親友であるドイツさんからのありがたいお誘い
そんなの行かないわけが無い
二つ返事で了承し、今に至るというわけだ
手元で揺れるビニール袋の中には、自宅でストックしていたお酒とおつまみ、そしてちょっとした手土産
彼が前から気になっていたと言う国産のソーセージだ
勿論一番美味しいやつを奮発して買った
ドイツさん、喜んでくれるといいな
いつの間にか着いた目的地
時計の針はまだ約束の時間を指していない
楽しみすぎて少し早い時間に来てしまったようだ
チャイムを鳴らしてみるが全く返事がない
仕方ない、ポケットから合鍵を出してドアを開けた
これは決して勝手に作ったわけじゃない。いつでも来ていいからと家の主から貰ったものだ
だから不法侵入じゃ無いはず…僕は誰に向かって弁明してるんだろう
お邪魔しますと誰もいない玄関に声をかける
そこには僕用のスリッパが置かれているだけで、余計な物も人の気配も無い
物音一つしない部屋に僕の足音が響く
たどり着いたリビングも静寂に包まれていた
たしかドイツさんはビール常温で飲むんだっけ、とビールだけキッチンに置いて他を冷蔵庫に入れておく
これも許可を貰っているから大丈夫だ。失礼なんかでは無い
………暇だ
やることがなくなってポツンと佇む僕
さて、どうしたものか
いつもなら約束の時間前には家にいるのに…どこに行ったんだろ
予定の時間までは、後10分
もうすぐ帰ってくるだろうし、ソファに座って待ってよう
部屋の奥にある真っ白なソファに目を移す
そこにはなにやら見慣れた黒い服がかかっていた
「あれ、ナチスさんの軍服だよな」
こんな所に置きっぱなしだなんて…几帳面なあの人らしくない
横目で周りをチラチラと見る
………ちょっとだけならいいかな
欲求のままに皺ひとつ無いそれを手に取る
黒で統一されたシックな軍服
マントのような漆黒のロングコートが厳かな雰囲気を醸し出し、十字架や髑髏などの装飾がいつかに封印した厨二心をくすぐる
そして、それを着こなすナチスさんの威風堂々とした姿
あれはもう全男子が憧れるだろう。いや、憧れるに決まってる
そんな方が着ている服が無防備に置かれていたら着たくなってしまうのも当然だ
再度キョロキョロと部屋の中を見渡す
本当に、誰もいないよね…
失礼します、と一言断って、Tシャツの上から羽織ってみた
「………これが体格差かぁ」
自分と頭半分ほどある身長差や体格の違い故に袖も裾も余ってしまっている
後でバレないようにシワを伸ばしておこう
近くにあった姿見で自分を見てみる
鏡に写った姿は”彼”のようで、嬉しさに笑みがこぼれた
「へへ、やっぱりかっこいいなぁ!着ただけなのになんか強くなった気がする」
「そりゃ父さんが真似するわけだ…ナチスさんがデザインしたのかな?」
「分かってるじゃないか日本くん」
「ひぇっ!?」
突如背後に現れた大きな気配
完全に油断していたせいで情けない悲鳴をあげてしまった
「ふふ、なんともカワイイ悲鳴だな」
ケタケタと笑うのは、幾分かラフな格好をしている”憧れの彼”ことナチスさん
革手袋も外して完全なオフモードなのにかっこいい。ずるい。
「ナチスさん!?いつの間に!?」
「君が家に来た時から見ていたぞ」
「いたなら一声かけてくださいよ!」
ちゃんと確認したはずなのに…心臓止まるかと思った…
彼の服を勝手に着た罪悪感と、はしゃぐ様子を見られた羞恥で、謝ることも忘れて焦る僕
「ハハ、すまない」
それでも、彼は笑って許してくれた
「ということはもしかして…」
「そう。服を用意したのも私だ」
「君がとても着たがってたようなのでな」
うわぁ、やっぱり
随分前から居たと聞いた時、薄々思っていた
流石はナチスさん、観察眼が鋭い
「…気づいてたんですか」
「あんな目で見つめられたら誰でも気づくだろう」
記憶を呼び起こして面白そうに笑う彼
…僕どんな目で見てたんだよ恥ずかしっ
顔を赤くすると、彼はにやりと目を細めた
「嗚呼…可愛いぞ日本くん。とてもよく似合っている」
頬に手がそっと添えられる
首筋を滑る、骨ばった美しい指
血管に掠めるのが擽ったくて、んっ、と声が出てしまった
「えっ、はい…ありがとうございます」
可愛い?こんな格好いい服を着ているのに?
ぶかぶかの服を着てはしゃぐのが子供みたいで可愛い、ということだろうか
いや……なんか違う気がする
流れ落ちた手が背中を伝って腰を抱く
急激に縮まった2人の距離
蠱惑的な赤が視界を奪った
「このまま襲ってしまいたいくらいだ」
捕食の瞬間のように歪んだ口元からギラリと光る、鋭い鋸歯
食べられる
本能が警鐘を鳴らし、恐怖で小さな悲鳴が漏れる
近づいてくる牙に怯えた瞬間、目の前の体に黄色の拳がめり込んだ
「何やってんだクソ親父!!!」
「ゔっ!?」
鳩尾へクリーンヒットしたみごとなボディーブロー
弧を描いて派手に吹っ飛ぶ大きな体
いきなり現れた拳の主、ドイツさんは焦った様子で息を荒らげていた
全然気づかなかった…走ってきたなら足音がするはずなのに
…目の前のことでいっぱいいっぱいだったからかな
呼吸が落ち着いた彼は何も言わず、ただ真っ直ぐに歩みを進める
そして、殴られた衝撃に苦しむナチスさんに跨り、胸ぐらを掴んだ
「日本に手出てんじゃねえ。また地獄に行きたいのか」
光のない目、抑揚のない言葉
見てわかるほどの怒気と殺気が黒いオーラとなって滲み出ている
怖い
初めて間近でみる親友の怒りに自分まで身震いした
「……あ、えっと…僕何もされてないしそこまで言わなくても…」
服を掴む手を優しく解いて、そっと立たせてやる
こちらを向いた瞬間、ふわりと優しく微笑む端正な顔
しかし、暗く淀む黄昏の瞳だけは笑っていなかった
「こんな奴を庇うなんて日本は優しいな」
もう大丈夫だぞと抱きしめられる
温かくて心地いいのに、得体の知れない怖さが拭いきれない
なんだか正気じゃないみたいだ
「あの、ドイツさ…」
「ああ、すまない。その服を脱がせるのが先だったな」
「いや…違…」
器用にボタンを外しポイポイと脱がされていく服
元のTシャツ姿になったところで首筋に顔を埋められた
「匂いがついてしまっている。風呂に入ってこい。しっかり洗い流せよ」
痛いほどの力で僕の手を握って、早足で風呂場へ向かう彼
「服は洗濯しておくからな、乾くまでは俺の服を着ていろ」
「あ…ありがとう、ございます…?」
有無を言わさぬ圧に、僕はただ大人しく連れられることしか出来なかった
一方、静かになったリビングに一人佇むナチス
実の息子から暴力を食らうと思っていなかったようで、しばらく唖然としていたが、ようやく正気に戻ったようだ
彼の脳裏に浮かぶは余裕のない息子の怒り顔
ぶり返す冷気とともに笑みが溢れ出した
「ッはは!あいつ、あんな顔も出来たんだな」
ポーカーフェイスだと思っていたが見当違いだったようだ
あの射殺すような視線、本当にあの世行きにされるかと思った
それにしても……位置情報からして帰りはもっと遅くなる見込みだったのだが
あのタイミングで現れたのは偶然か、はたまた…
なんとも強力なライバルができてしまったものだ。さて、どう出し抜いてやろうか
息子だからといって容赦はしない
まずは作戦会議だ
脱ぎ捨てられた自身の軍服をサッと回収して、自室へと向かった
おまけ
薄暗い部屋で数多のモニターを眺めるナチス。そこには先程の日本の姿
軍服を着ている姿が真正面から写っているのは、これが姿見につけられたカメラで撮ったものだからだ
目の前の画面に劣情を孕んだ赤が映る
「はぁ…本当に愛おしい♡これが彼シャツ……いや、彼軍服ってやつか。俺の服をこんなにも嬉しそうに着て……♡」
手元にある、日本が着ていた彼の服
襟から香る初夏の若葉を思わせる清涼な香り
まさしく、日本の香りだ
「よし、まだ香りは残っているな。これでようやく日本くんの香水が作れそうだ」
日本くんの使っている洗濯洗剤とボディーソープは調査済み
再現するには”彼本来の香り”だけが足りなかった
「いつでも日本くんの香りが嗅げる…ハハ!最高だな♡」
本当は直接本物を嗅ぎたいが…手に入れるまでの我慢だ
緻密で完璧な作戦こそ成功を産む
服と必要な薬剤をケースに入れて、部屋を出る
モニターには、何事も無かったかのように黒が映し出されていた
なんかドイツ親子がやべえ奴になってしまった。最初はちょっとヤバいくらいにするつもりだったのに…
匂いのついた布から香水を作る技術が現実にあるらしいですね。企業秘密で論文などもないので本当なのかは分かりませんが…興味ある方は調べてみてください。
コメント
10件
めっちゃ最高でしたー!!😭 当たり前のようにヤバいことをしてる卍と、サラッと独占してる🇩🇪… いつもは🇩🇪、常識人に見えるのに、、やっぱり遺伝だなー🤭 てか、文字で卍と🇩🇪のかっこよさを表現できるのすごいですっ!!💕
🇩🇪卍🇯🇵 .. 😭😭✨ これ以上素晴らしいものは無い 。🇩🇪の独占欲と言い 、卍の 変態っぷり .. 全て美味しくいただきました 、😢💖 🇯🇵の香水 、発売されたら 即買いに行くよ 誰かお願いします 、作ってくれ .. 🤦🏻♀️
なんて神小説ッッッッ!!! ドイツ親子好き、、どっちもかっこいいィィィィィ_:(´ཀ`」 ∠): そんなかっこいいの中に性格を隠れさせるのがお上手すぎる、、絶対思いつかない、、、尊敬でしかありません、、