『隊員に報告! 大聖病院にいる救助者は全員救出! 入院名簿、病院関係者にて確認完了!』
二度目の館内放送で、病院内で隊員達の|勝《かち》どきの声が上がった。
予定より早く救出出来たのは、三階には病床にある人が少なかったせいだろう。
妖達に襲われている人もいなくて、事務室などに立て籠っていた人達がいたぐらいだった。
あとは病院に僅かに残っている妖はいたが、続々と集まってきた五家の上級隊員によって倒され、祓われ、あっという間に妖たちは姿を消していた。
「ひとまずは大丈夫だな」
再度響き渡る館内放送に、大きく呼吸をして刀を|納刀《のうとう》した。
その直後に『もう間も無く屋上の土蜘蛛の結界は消滅。すぐに病院内、敷地内を離れよ』と、言う放送が入ると喜びも束の間。ドタバタと忙しく隊員達が外へと退避し出した。
俺もその後に続こうと思ったが、階段に殺到している隊員達を見て、時間が惜しいと思った。
風の術を使って三階の窓から外へと降り立ち、急いで結界を張っている真守のもとへと向かった。
「これで、やっと土蜘蛛と戦える」
病院の外へと出るとそこは中庭。
空気が院内と比べると新鮮で美味かった。
熱い体に夜気は心地よい。
そして今度は病院の外が蜂の巣を突っついたかのように、人が大勢いて声を張り上げていた。
それは病院の外へと人を救助して、今もその活動が続いている。
手助けしたいと思うが、俺にはまだやることがある。
ざくざくと芝生を踏み締めて、俺も病院の外を目指す。そしてやはり、上を見ると屋根にいる土蜘蛛が──じっと俺を見ている……気がした。
土蜘蛛の巨体の向こう側に明るい月。
まるで浮世絵のようだ。
それを一瞬だけ睨み。前を向く。
病院が空っぽになった今、黒洞を打てる。しかし、土蜘蛛本体に吸収されている人達がいると言う。
それはどのような状態なのかは、ずっと結界を張っていた真守にならば、わかるかもしれない。
もし、分からなくてもこのあと土蜘蛛を切り裂く。中の人に当たらぬように土蜘蛛を切り裂く。やれる、やらないじゃなくてやるしかない。
「そのあとは、皇宮に誘き寄せて倒す、か」
ここからが本番。
やはり長い夜になりそうだと、さらに走る速度を早めて、中庭をでて人をかき分けて真守のところに向かった。
そして真守は病院の前。
梔子家の術者数人と地面に|坐禅《ざぜん》を組み、結界を張っていた。
その周囲は蛍の光のように淡く輝き、お経のような声が絶え間なく聞こえている。
そこだけはこの喧騒の中、清廉な空気が漂っていた。今まで、ずっと生臭い下水のような空気で肺を満たしていたのでホッとする。
ただ、真守や声を発声している者達全ての眉根は深く刻まれ、汗だく。
まるで|護摩焚《ごまだ》きの修業をしているかのようだ。
中には|手印《しゅいん》を結ぶ手が震えるもの、鼻血を流す術者の姿もあった。まさに限界寸前。結界も、もう少しで解かれると思った。
ギリギリで間に合ったと、声を張り上げる。
「真守! 土蜘蛛に吸収されたという人達は無事かわかるか!?」






