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みら

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kaede🍁
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岩本は宮舘を送り届けると、そのままドラマの撮影現場へ向かった。
現場へ入ると、いつもとは違う重たい空気が流れている。
スタッフたちも慌ただしく動き回り、監督とマネージャーが何かを話し合っていた。
「岩本さん。」
マネージャーが岩本に気付き、すぐに駆け寄ってくる。
「ちょうど来ていただこうと思っていました。」
「証拠がそろいました。」
岩本は思わず息をのんだ。
「……証拠?」
監督が静かに頷く。
「防犯カメラの映像を確認しました。」
「控室の廊下と衣装部屋の映像です。」
監督はタブレットを岩本へ差し出した。
そこには撮影の合間、岩本の私服が掛けられているラックへ一人の女性が近付く姿が映っていた。
大御所女優だった。
周囲を確認すると、ポケットから香水を取り出し、岩本のシャツへ吹きかける。
さらにバッグからイヤリングを一つ取り出し、何気ない動作でシャツのポケットへ滑り込ませていた。
岩本は言葉を失う。
「……。」
映像は数十秒で終わった。
監督は苦しそうな表情を浮かべる。
「これが事実です。」
「あなたがお話しされていたことは、すべて本当でした。」
岩本はしばらく画面を見つめたまま動けなかった。
「……ふっか。」
頭に浮かぶのは、涙を流していた深澤の姿だった。
知らない香水に戸惑い。
ポケットから出てきたイヤリングに傷つき。
何日も一人で苦しみ続けた恋人。
「俺が……。」
「もっと早く相談していれば。」
「ふっかはこんな思いをしなくて済んだ。」
岩本は静かに目を閉じた。
___________
別室で制作側が大御所女優への事情聴取を行っていた。
監督とマネージャー、制作スタッフが立ち会う中、女優は最初こそ黙っていたものの、防犯カメラの映像を見せられると、小さく笑った。
「そこまで調べたの。」
開き直ったような口調だった。
「ええ。」
制作スタッフが答える。
女優は肩をすくめる。
「そうよ。」
「私がやった。」
「最近の若い俳優はちやほやされすぎなのよ。」
「少しくらい困ればいいと思っただけ。」
悪びれる様子もなく、嫌がらせを認めた。
部屋の空気が一気に冷え込む。
監督は深く息を吐いた。
「……非常に残念です。」
「この件については、正式に事務所とも協議します。」
女優は何も答えなかった。
事情聴取が終わると、監督は岩本の前まで歩いてきた。
そして、深く頭を下げる。
「岩本さん。」
「本当に申し訳ありませんでした。」
「現場でこのようなことが起きていたにもかかわらず、私たちが気付くことができませんでした。」
「あなたにも、大切な人にも、つらい思いをさせてしまいました。」
岩本はゆっくりと首を横に振る。
「監督が謝ることじゃありません。」
「でも……。」
少しだけ笑おうとして、うまく笑えなかった。
「俺がもっと早く相談していれば。」
「ふっかは泣かずに済んだ。」
その言葉を聞いた監督は静かに頷く。
「だからこそ。」
「今は撮影のことよりも、恋人を迎えに行ってあげてください。」
「こちらのことは私たちが責任を持って対応します。」
岩本は目を閉じ、大きく息を吸った。
「……ありがとうございます。」
ようやく真実は明らかになった。
あとは、自分の言葉で深澤に伝えるだけだった。
___________
宮舘のスマートフォンが静かに震えた。
画面には――
照
の文字。
宮舘はすぐに電話へ出る。
「もしもし。」
『館さん。』
電話越しの岩本の声は、昨夜より少し落ち着いていた。
「どうだった?」
宮舘が尋ねる。
少しの沈黙のあと、岩本が静かに答えた。
『全部、事実が明らかになった。』
『監視カメラにも映ってた。』
『香水も、イヤリングも、本当に嫌がらせだった。』
『制作側も認めて、事情聴取も終わった。』
宮舘は静かに目を閉じる。
「……そう。」
『監督にも謝られた。』
『でも、一番謝らなきゃいけないのは俺だ。』
岩本の声は少し震えていた。
『ふっかを、あんなに苦しませた。』
『全部終わったから。』
『今日の夕方、迎えに行く。』
『ちゃんと俺の口から全部話したい。』
宮舘は穏やかに微笑んだ。
「分かった。」
「ふっかに伝えておく。」
『ありがとう。』
電話は静かに切れた。
___________
宮舘がリビングへ戻ると、深澤と渡辺は少し遅めの朝食を食べ終えたところだった。
深澤は昨日より少し落ち着いていたが、どこか不安そうな表情をしている。
宮舘は二人の向かいへ腰を下ろした。
「ふっか。」
深澤は顔を上げる。
「今、照から電話があった。」
その一言で深澤の表情が強張る。
「……照から?」
宮舘は優しく頷いた。
「昨日話していた件。」
「全部、事実が明らかになった。」
「香水もイヤリングも、本当に嫌がらせだった。」
深澤は言葉を失う。
宮舘は続けた。
「照は今日の夕方、迎えに来る。」
「全部、自分の口で話したいって。」
深澤は俯いたまま、小さく息を吐く。
「……そっか。」
「迎えに来るんだ。」
宮舘は静かに頷いた。
「だから今日は何も考えすぎなくていい。」
「夕方になったら、照の話をちゃんと聞いてあげて。」
深澤はゆっくり頷いた。
「……うん。」
その返事は昨日より少しだけ力があった。
宮舘は時計を見る。
「そろそろ仕事へ行くね。」
「夕方までに帰って来るから。」
「翔太。」
「ふっかのこと、お願い。」
渡辺は頷いた。
「任せろ。」
宮舘は深澤の肩を軽く叩く。
「大丈夫。」
「二人なら、ちゃんと乗り越えられるよ。」
そう言い残し、仕事へ向かった。
___________
玄関のドアが閉まり、部屋には渡辺と深澤だけが残る。
しばらく静かな時間が流れる。
渡辺は冷蔵庫から冷たいお茶を取り出し、深澤の前へ置いた。
深澤は小さく「ありがとう」と言ってコップを手に取る。
渡辺はソファへ腰掛けると、静かに話し始めた。
「ふっか。」
「昨日さ。」
「俺、お前が泣いてるの見て思った。」
深澤は渡辺を見る。
「照を疑ってたんじゃないんだよな。」
深澤は苦笑した。
「……うん。」
「信じたかった。」
「でも、信じ切れなかった。」
「それが一番苦しかった。」
渡辺は静かに頷く。
「それだけ照が大事なんだ。」
「失いたくなかったんだろ。」
深澤の目にまた涙が浮かぶ。
「怖かった。」
「もし本当だったらって思ったら。」
「今まで全部なくなる気がして。」
渡辺は少しだけ笑う。
「でも。」
「照は迎えに来る。」
「逃げなかった。」
「全部終わらせてから来るって言ったんだろ。」
深澤は静かに頷く。
「……うん。」
「だったら。」
「今日は照の話を最後まで聞いてやれ。」
「それがお前にできること。」
深澤は涙を拭きながら、小さく笑った。
「翔太。」
「ありがとう。」
渡辺は照れくさそうに目を逸らす。
「礼は仲直りしてからでいい。」
「夕方。」
「ちゃんと笑って帰れ。」
深澤はゆっくり頷いた。
夕方まで、あと少し。
長く感じていた夜が終わり、二人がもう一度向き合う時間が、少しずつ近づいていた。
コメント
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みらさん、第6話読みました!防犯カメラの映像で大御所女優の仕業が確定したシーン、すっきりしたけど岩本くんが「もっと早く相談していれば」って後悔するところが胸に刺さった…。深澤くんが信じたかったけど信じ切れなかった心情もすごくリアルで、渡辺くんの「礼は仲直りしてから」って言葉が染みたわ。夕方、ちゃんと笑って帰れるといいな。